見出し画像

わたしの愛しいご主人さまたち #01 カント<あちらに移住組>①

わたしのねこ下僕または奴隷としての歩みは、この子ナシでは始まらない。

Canto。カント。
2007年の秋に出会った。
わたしに酷いねこアレルギーがあったことも関係して、その頃そこまで「ねこ」という生き物に興味がなかった…というのが本音。

当時わたしは首都圏にあるC県に在住していた。中学生だった娘(ニンゲンより動物が好き)が「とあるおばさんが、近所の空き地で毎朝晩ねこたちにごはんをあげてるんだよー」とわたしに教えてくれた。娘はたまにそこに遊びに行っているらしい。カントは、そのおばさんが毎日ごはんをあげているねこたちの中の一頭だった。
娘から話を聞きなぜか無性に気になり、仕事帰りにわたしも空き地に立ち寄ってみることにした。
ごはんをあげていたおばさんの名前は、N村さん。ごはんを食べにきているねこたちは、そのときで7,8頭ぐらいだったか。その中でひときわ人懐こく美しい子がカントだった。
わたしもその空き地に、仕事帰りに度々立ち寄るようになった。N村さんといろいろな話をしていくうちに、ここにいる1頭だけでもわたしが引き取れば、N村さんは少し楽になるのでは?と思い始めた。
そう。最初は「ねこたちをなんとかしたい」みたいな気持ちはまるで無く、N村さんをなんとかしたい!の気持ちの方が大きかったのだ。
娘にその考えを伝えると、とても喜んだ。彼女はわたしが酷いねこアレルギーなのを知っているので、端から「うちでねこと生活する」ということを諦めていたのだ。
続いてN村さんに打診する。N村さんももちろん快くOKしてくれた。おまけに、N村さんとN村さんが懇意にしているスーパーボランティアのH部さんとで、わたしのうちに入れる子を捕まえてくれると提案してくれた。
うちに迎えたい子は、そのとき既に心の中で決まっていた。カント(そのときはまだ名前はなかったのだけど)。この子と生活をしてみたい、と思った。
ある日夜遅くコンビニに行く途中、歩いている10mほど先にカントを見つけたことがあった。ごはんを食べている空き地にわたしが度々通うようになっていた後で、空き地のメンバーたちはなんとなく識別できるようになっていた。
顔見知りのねこと不意に道端で会うのって、こんなにうれしいものなんだ…と思った。それまでの人生で初めて抱いた種類の「うれしい」だった。
行く先に見えるカントと目が合った。わたしは思わずそこにしゃがんで、カントに向かって「おいで」と言った。すると、カントはわたしに向かって一直線、トットットットッと走ってきたのだ。

「こんなことある?笑」

わたしは、駆け寄ってきてくれたカントに対して湧いてきた「わーー!うれしい!!」という感情をなぜか咀嚼しきれず、照れ隠しにそんなことを口走った。まだまだ全然、奴隷化されていなかったわたし。

10月のある日。N村さんとH部さんとでカントを捕まえてくれた。連絡をもらいカントを迎えに行く。
いろいろな思いが錯綜する。
カントには父親違いの弟、妹が4頭いた。弟妹からとても慕われていたカント。彼が突然空き地からいなくなったら、残された子たちはなにを想うのかな…。

うちに連れて帰り、初めて明るい場所で至近距離で見るカントは、この世界の生き物とは思えないほどに美しく映った。ねこってなんて美しいフォルムをしているんだろう。そんなことを思った。

ただ、うちに入れたことによって、カントの身体にはさまざまな不具合があることが判明したのだった。

この記事が参加している募集

#ペットとの暮らし

18,612件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?