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わたしの愛しいご主人さまたち #03 ターチェ<あちらに移住組>

2017年9月27日、ターチェはあちらに移住した。

思えば、わたしの細かい「ねこ記録」はターチェの闘病のときに始まった。ターチェが行っちゃって今年で丸5年になる。残されたターチェの記録を見返して、5年前に起こったこととそれに伴うわたしの感情たちが、ブワッと押し寄せてくる。思い出したいことも、思い出したくないことも、全てぐちゃっとなって押し寄せる。

ターチェは、カントの父親違いの弟だ。そして、まだお外にいるときからカントのことが大好きで大好きで、いつもカントの後についてまわっていた。

トーノが旅立った後すぐにわたしは、空き地にいるカントの弟妹をうちに入れることを決断し、早々にN村さんとH部さんにそのことを打ち明けていた。どういう順番でうちに入れるかをN村さんと打ち合わせて、次に入れるのは、その後「ノータ」と名付けられる子に決定していた。今回もN村さんとH部さんのコンビでその子を捕まえてくれるとのこと。

だったのだけど。

N村さんから電話が入る。
「ターチェちゃんが誰かとケンカをして怪我をしたみたい。ひとまず獣医に連れていったはいいけど、怪我が完治していないから、できたらターチェちゃんを先におうちに入れてもらいたい」
という内容だった。もちろん、反対する理由は何もなかった。

ターチェを迎えに行き、おうちに入れてカントと対面させたら…
ターチェは大声で何か言いながら、叫びながらカントの元に走り寄って行ったのだ。カントが空き地からいなくなり余程さびしかったのだろう。大好きだったカントがある日突然姿を見せなくなり、不安だったかもしれない。狂喜しながらカントに駆け寄るターチェの姿を見て、うちに入れてよかったなぁとつくづく感じた。

ターチェは、とても表情が豊かで茶目っ気たっぷりな、まるでワンコのような子だった。食欲が旺盛で、食欲に見合ったどっしりとした体型をしていた。最大6kgになったことがあり、獣医で「ダイエットした方がいいかもよー」と言われたこともあった。そして、臆病なくせに正義感が強い…というなんとも矛盾した面を持ち合わせており、そのせいかいつも困ったような顔をしていてとてもかわいかったのだ。

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ターチェはFIPと呼ばれる病が元で、あちらに旅立った。発覚してから1ヶ月で、あっという間に駆け抜けて行った。途中、少し辛いだろうと思われる治療なんかも受け、ターチェを通しての体験をきっかけにわたしは、【病気】と呼称がつくものに対して、おぼろげながらも違和感を抱くようになっていったのだ。そして、獣医によってこんなにも「診立て」(診断)が違うのかということを目の当たりにすることになり、獣医の言うことを丸ごと盲信するのはやめたほうがいいなーという気持ちも、漠然とだけど湧いてきていた。

ターチェの最期の瞬間を書き留めたメモがあったので掲載。

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『朝起きていつもの場所どこにもターチェがいなくて焦った。キッチンにいた。出かける前に「ターチェ、待っててね」とごあいさつ。押入れの奥にいて、身体に触ると冷んやりしていてドキッとした。今日のターチェは著しく動かない。それでもなでるとゴロゴロと喉を鳴らしてくれる。声をかけると目を見てリアクションしてくれる。Mくんが出かけるとき、ターチェを一目見て出かけた。そのときお漏らししていることに気づく。拭いてあげようとしたら、一目散に逃げてキャリーの中に入った。その後、そこでコンコンと寝続ける。何度が覚醒したときに、レメディでマッサージをした。気持ちよさそう。かなり緩んだ状態で眠っている様子を見て、直感的に、今日かもしれない…と思った。たまに起きて、とてもしっかりした眼差しで辺りの様子を眺めていた。すごく印象的だった。
夕方、出かけたMくんが帰ってきた車の音が聞こえるか聞こえないぐらいのタイミングで、ターチェが突然ガバッと起き上がる。吐く。吐く前の動作をし、苦しそうに水分を吐く。一旦治まって二度目。その時Mくんが部屋に入ってきた。その後ぐったりしたので急いでキャリーから出す。ブランケットを敷きその上に横たわらせる。目がうつろになってきている。「カッカッ」と咳のような動作を何度か繰り返した後、後ろ脚をグーンと伸ばし、ふっとターチェの全身から力が抜けた。もう開いている眼は何も見ていない。呼吸と同時に、動く腹部も停止した。心音も聞こえない。とうとう旅路についちゃった。そう思った瞬間におしっこが流れ出てきた。静かに、そしてMくんを待って、ターチェは旅立ったよ。ありがとう。愛してる。大好き。わたしのところに来てくれて本当にありがとう。』


わたしにとって【死】をイヤでも意識しなければならない看病は、うちの子たちの中でターチェが初めてだった。あの時のわたしは、「死のその瞬間を逃げないで直視できるのか?」という不安でいっぱいだった。過ぎてみると、その瞬間はあまりにも必死過ぎて、そんな不安を感じる心の隙間は一切なかった。(…そっか。不安って、心に隙間があると侵食してくるんだな、今気づいた)

ターチェが旅立った後に、少し冷静になってあれこれ考えてとても腑に落ちたことがあった。

2月にカントがあちらに移住。
そしてターチェはカントが大好きだった。
そしてそしてカントも、顔を舐めてもらったり枕になってもらったり、とターチェにお世話をさせていた。

思い過ごしならいいのだけど。

いやーーーー。
これ、カントが呼びつけたでしょ、ターチェのこと。
完全に笑。

「誰がボクのお世話するの???」って、呼んだでしょ!カント!ターチェのことを!!!!!

わたしがそっちに行った暁には、コトの真相を全て教えてもらうから、ターチェもカントも待ってろよ。




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