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オススメ映画を紹介するよ! 儚くとも強い芋生悠編

Wikipediaで見ると凄まじい数の映画に出ている芋生悠さん。柔らかな表情かつ確かな演技力で、どの作品でも印象的な役をこなしています。なにしろ出演作がめっちゃ多いので、ほとんど追えてはいませんが、最近まとめて見たものを紹介します。

※予告なく【ネタバレ】していますが、読んでから映画を見ても楽しめるように書いているつもりです。


はじめに〜ひらいて

芋生悠(以下敬称略)を初めて認識したのは、「ひらいて」です。山田杏奈が強烈な主人公を演じ、衝撃的な内容で個人的にも刺さりまくった作品です。別記事も書いています。

主人公愛の無軌道な衝動を受け止める美雪役として、芋生悠の存在がなければ、「ひらいて」も山田杏奈の代表作となり得なかったかもしれません。感じるままに行動する愛とは対照的に、美雪は思慮深く落ち着いた存在として愛を受け止めます。一方2人が一線を越える場面では、大人びた美しさも見せてくれます。

この作品を見て、山田杏奈とともに芋生悠が頭に刻み込まれました。新しい才能を知るのはうれしいですよね。「ひらいて」未見の方は、今すぐ鑑賞していただき、山田杏奈と芋生悠を追いかけましょう。

37セカンズ

脳性麻痺の貴田夢馬(ユマ)は、異常なほどに過保護な母親のもとで車椅子生活を送りながら、漫画家のゴーストライターとして空想の世界を描き続けていた。自立するためアダルト漫画の執筆を望むユマだったが、リアルな性体験がないと良い漫画は描けないと言われてしまう。ユマの新しい友人で障がい者専門の娼婦である舞は、ユマに外の世界を見せる。しかし、それを知ったユマの母親が激怒してしまい……。

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「37セカンズ」に関しては、「見るべき映画」です。あらすじや障がい者が主役ってことを聞くと、お涙頂戴ものなんだろうなあと思うかもしれませんが、最初の5分でその安易な考えは吹き飛びます。ユマを演じる佳山明の並々ならぬ覚悟と監督の腹の括り方がわかる冒頭5分です。

監督のHIKARIは、アメリカをベースに活動しているらしく、映画でも随所に邦画っぽくないカットが出てきます。特に舞台となる東京は、なぜか見たことのない風景として感じられました。漫画が動き出すファンタジックな場面も素敵です。

物語の後半は、ユマがタイへ向かうロードムービーになります。芋生悠は、ユマがそこで出会うある女性として登場します(ネタバレ回避)。「ひらいて」「ソワレ」「左様なら」など、どちらかといえばおとなしめな女性として描写されることが多いのですが、ここではかなり健康的で日焼けしてる?くらいです。登場時間は短いものの、キーポイントとなるセリフもあり、重要な役どころでした。

もうひとつ、この映画で印象に残った場面。タイを旅行中、スロープとかありそうにもない駅で、ユマが乗る車椅子を通りがかりの現地の人が数人がかりで持ち上げて運んでいる様子がチラッと映ります。バリアフリーが進んでないからかもしれないけど、海外でこほ結構そういう優しさ感じること多いんだよね。

ソワレ

俳優を目指して上京した翔太は、俳優では芽が出ずに今ではオレオレ詐欺に加担してなんとか食い扶持をつないでいる。ある夏、翔太は故郷の和歌山にある高齢者施設で演劇を教えることになり、その施設で働くタカラと出会う。数日後、祭りに誘うためにタカラの家を訪れた翔太が目撃したのは、刑務所帰りの父親から激しい暴行を受けるタカラの姿だった。とっさに止めに入る翔太、そして逃げ場のない現実に絶望してたたずむタカラ。翔太はタカラの手を取り、夏の街の中へと駆け出していく。

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現時点では芋生悠の代表作と紹介されることの多い「ソワレ」。世の中の不幸を全部背負い込んだようなタカラとして、現実の如何ともし難さを感じさせます。幸薄いタカラですが、翔太(村上虹郎)との逃避行の中で、小さな幸せを見つけた時に浮かべる微笑みが印象的です。

冒頭から明示されるように翔太が根は善人でありながら、肝心なところでクズなので、2人の逃避行も悲劇的です。しかしラストでは仄かな希望も見出せます。辛い映画ですが後味は悪くないかもしれません。

ある用務員

元暴力団員だった父を持つ深見は、父の兄弟分の娘・真島唯の見張りをするため、唯が通う高校で用務員として働いている。ある日、暴力団の抗争によって真島が殺害され、唯も命を狙われてしまう。戦場と化した学校から唯を救出するべく、深見は命がけの戦いに身を投じていく。

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あらすじは上記の通りで、何を言ってるのかわからないかもしれませんが、学校が戦場になります。唯を演じる芋生悠は、空手経験者です。しかし、アクションシーンは皆無です。「ある用務員」に守られ逃げ惑うのみです。

まあこの映画の見どころは学校に潜入した暗殺者たちと、正体を隠していた凄腕の用務員とのアクションバトルにあるわけで。中盤以降は入れ替わり立ち替わり用務員が襲われ、死体の山が築かれ、ボロボロになりながらも唯を守り抜きます。

特筆すべきは伊澤彩織&高石あかりの「ベイビーわるきゅーれ」コンビが既にキャラもそのままで登場していること。本作では物語の都合上退場してしまいますが、スターシステムにより人気シリーズの主役になったのは納得の存在感。「ベイビーわるきゅーれ」ファンは必見ですね。

左様なら

平穏な日常を過ごしていた高校生の由紀。ある日、中学からの同級生・綾が、由紀に引越すと告げた翌日に突然亡くなってしまう。彼女の死はクラス内の人間関係に思わぬ波紋を広げ、由紀は周囲から距離を置かれるようになるが……。

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友人が亡くなっても日常は続く。綾が死んでも泣けなかった由紀(芋生悠)。綾の不在によりクラスにも微妙なさざなみが立ち、由紀はハブられていきます。それでも音楽やちょっと年上の「大人」や、幼馴染との関わりの中で、淡々と日常をこなしていきます。ラスト近く、空想の中に現れた綾に緩く話しかける由紀は、改めて綾の不在を認識します。

友人の死によってポカンと開いてしまった空虚さを、表現することすらできないのは、誰もが経験したあの頃のリアルさなのではないでしょうか。もうひとつリアルなのが、クラスメイトの存在感です。普通の映画やドラマだったら、脇役として流されてしまう生徒役ですが、監督はそれぞれのバックボーンまで細かく設定したそうです。だからチラッとしか出てこない人にもリアルな個性があります。いい意味で空気を読まない子、ボス的な女の子のことを陰で薄ら笑っている子、仕方なくグループに入っている子。一人一人に注目してみるのも面白い作品です。

恋するふたり

人気インディーズバンドのメンバーであるマヒロと付き合っていることが唯一のアイデンティティという23歳のサチコは、これといった夢もなく、ただ漠然と毎日を生きてきた。そんな幸子の前に謎めいたイケメンのカタギリが現れ、まったくの初対面であるにもかかわらず、カタギリの婚約者の女性フミカが、サチコの彼氏であるマヒロと浮気をしているという驚きの事実を告げる。フミカを取り戻すためサチコのもとにやってきたカタギリは、「いまの自分から変わりたいんだろ? 俺が連れてってやるよ」とサチコを連れ、マヒロのバンドが合宿をしている湖畔のスタジオまでレンタカーを走らせる。そんなカタギリの勢いに流される幸子だったが……。

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とにかくカタギリは存在がイタイです。空気を読まず思ったことを言い、自分の名言(?)語録をホームページにしている始末。共感はこれっぽっちもできません。フミカ(芋生悠)は、何故か居酒屋バイト始業前にカタギリに連れ去られ、居酒屋定番かすりの着物風ユニでのロードムービーとなっていきます。

漫然と生きていたフミカが、カタギリの破天荒な言動に感化され、少しずつ変わっていくのが見どころ、なのでしょうか。実際カタギリとのコンビでは、ツッコミにまわらざるを得なく、他作品以上に芋生悠の自然体の演技を見られるのは良かったです。

因みに、この映画にも巨匠岡野陽一氏が登場します。今回はセリフもある役でした。

JKエレジー

群馬県桐生市に暮らす高校3年生の梅田ココアは、学業は優秀だが家庭が貧しく、ギャンブル狂の父親と元漫才師でニートの兄のせいで将来に希望を見いだせずにいた。そんなココアには、学校とバイトの合間に「クラッシュビデオ」(ものが女性に踏み潰され、破壊されるさまを見て性的欲求を満たす目的で作られた動画)に出演しているという秘密があった。もともとは兄の元相方であるカズオに頼まれてはじめたことだったが、最近ではココア自身も、さまざまなものを踏み潰す感触に快感を覚えはじめていた。そんなある時、クラッシュビデオ出演が学校にバレてしまい、大学推薦を取り消されて学校にも居場所がなくなってしまったココアだったが……。

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掘り出し物です。ダメ父とクズ兄というおおよそ劣悪な家族下で、それでも真っ当に生きようとする主人公。明るい兆しが見えてきたのにまたゼロにまで戻されるというドン底のお話ですが、ココアは悲壮感は見せず、淡々と、自分の芯をしっかり持って生きているので、暗い映画ではありません。ダメ父クズ兄もどこか憎めません。

芋生悠はその友達役で、もうひとりの友達と3人で互いをわかり合い支え合っています。でも経済的にはココアより圧倒的に恵まれていて、それが亀裂を生むことにもなります。祭りの日、半グレに命懸けで立ち向かったココアが、夜を徹して待っていた友人たちと土手で会うシーンは、ココアにとっての微かな希望を感じさせ、爽やかな幕切れとなります。

経済的に立ち行かないココアの一家が、今後急激に上向きになるとも思いませんが、ようやく重い腰を上げて働き始めた父親の姿とともに、一歩踏み出せる未来が見えたような気がしました。

番外編:サイレント・トーキョー

どの作品においても、芋生悠はどちらかといえば幸薄く、ほわっとした第一印象でありながら、心の中には揺るがない何かを持った女性として描かれます。あどけない高校生を演じることはこれからもありそうですが、がっつりとしたラブシーンでは大人の色っぽさも醸し出しています。主人公の側にいる友だち役を任される機会も多いみたいですね。何しろ出演映画数が半端ないので、サブスクに上がってきたら片っ端から見てみたい女優さんです。

さて、番外編として「サイレント・トーキョー」を挙げました。あのちゃんを吹き飛ばしたことで記憶に残るこの作品に、芋生悠が出ていたこと全く気付きませんでした。他のサイトで見かけたので確認してみたら、冒頭ケーキ屋さんか何かの店員として、ほんのちょっと出ていました。これこそ芋生悠の無駄遣い。その一瞬を探してみてください。

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