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オススメ映画を紹介するよ! 最近気になった映画たち編

例によってアマプラ、ネトフリで見た映画の中から、最近気になったものを紹介します。いつもはテーマを決めているのですが、今回はとにかく何か気になった映画たちです。ところにより【ネタバレ】全開です。


青葉家のテーブル

シングルマザーの春子と息子リク、春子の飲み友達めいこと、その恋人で小説家のソラオという4人で共同生活を送る青葉家。ある夏の日、春子の旧友である知世の娘・優子が、美術予備校の夏期講習へ通うため、青葉家で居候を始める。ちょっとした“有名人”の知世とは20年来の仲となる春子だったが、2人の間には気まずい過去があった。

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不思議な家族構成なのにほとんど言及されないので、アレっと思ったら、「北欧、暮らしの道具店」のWebサイトで展開された連続ドラマがあったんですね。映画見終わってからドラマも見ました。春子、リク、めい、ソラオそれぞれのストーリーがあって、確かにドラマ見てからの方が理解しやすいかもしれません。でも映画からでも全然大丈夫。物語を引っ張る優子や知世が新たに登場しますから。

「北欧、暮らしの道具店」全面バックアップの映画だから、家具や食器、あらゆる小物やインテリアがおしゃれ。さらにみんなが作る料理が本当に美味しそう。だから雰囲気を楽しみに見てもいいのですが、それだけではないのがこの映画。

有名人の娘として将来の選択に戸惑う優子が本作の主役と言えるでしょう。青葉家の面々や、美術予備校で出会った友だちや、リクの中学生バンドとの交流の中で、けっして何とは決めつけられない自分を肯定的に捉えられるようになっていきます。それを後押しするのは春子だったり、コミュニケーションが取りづらくなっていた母の知世だったりします。

基本的にみんないい人で、作り物の世界かもしれません。でもこの映画の世界に触れていると、穏やかな、前向きな気持ちになれるのです。

時々「イタイな、こいつ」と思わせる優子を演じるのは栗林藍希。これまで知らなかったのですが、「左様なら」にもクラスメイトとして出ていたようです。この後見た「クローゼット」では今流行りのホストにダメにされる大学生を演じていたり、他の主演映画ではハードな絡みを見せていたりするようですが、「青葉家のテーブル」の優子はハマり役です。彼女の代表作になったのではないでしょうか。音楽活動もしていて「下北沢にて」に出ていたり、アルビレックス新潟のU-18に在籍していたりとか、個人的にはだいぶ興味ある女優さんです。

もうひとり、この映画の最大の癒しポイントと言えるのが、蛙亭中野くんです。もう本当にコントの時の中野くんそのまんまで、西田尚美も独特の間に戸惑ったとか。それでいて結構セリフもあって、美味しい役でした。そんな中野くん含めて見てほしい映画ですが、現在(2023.12.26)アマプラでは視聴できなくなったばかりです。他のサブスクか円盤をぜひ探してみてください。

映画のラストで流れる「このままじゃ!」。映画に登場する中学生バンド+優子が歌っています。お聴きください。

おろかもの

結婚を目前に控えた兄・健治の浮気現場を目撃した高校生の洋子は、好奇心に突き動かされて浮気相手の女性・美沙と対峙するが、美沙の独特の柔らかさや強さと脆さにひかれていく。そして衝動的に、洋子は美沙にある共犯関係を持ち掛ける。

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インディーズの映画見てて面白いのは、こういった掘り出し物を見つけた時です。タイトルの「おろかもの」は、勿論結婚間近で浮気をしている健治(コイツ本当にクズです。憎めませんが)なのですが、浮気をしている美沙、浮気を知りつつ結婚に至ろうとしている婚約者、そして何より「結婚式、止めてみます?」とかそそのかしてしまう妹の洋子も軒並み「おろかもの」な訳で。人間って、おろかものなんですよ、基本的に。

この映画を見ながら浮かんだ言葉は「シスターフッド」。親友というのは同じ年代でこそ成り立ちそうだし、「ひらいて」のような百合的関係とも違う。洋子と美沙は共犯関係の中で、2人にしかない女同士の繋がりを確立していきます。三者面談に美沙を連れていくところなんてニヤニヤです。また、兄の婚約者とも上手くいっていなかったのですが、互いに率直に話をすることで、新たな信頼関係も生まれてきます。

ラストの結婚式。式場に乗り込む美沙、その行く手を阻むように立つ新婦(婚約者)。そして絶妙なタイミングで美沙の手を取る洋子。あの映画リスペクト的に走り出す洋子と美沙の姿は、清々しくも光が差し込むような明るさがありました。このシーンだけでも、この映画を見て良かったと思えます。

洋子役の笠松七海は飄々とした演技が素晴らしいです。それでいて感情が昂る場面もまた素晴らしい。美沙役の村田唯、婚約者の猫目はちは、2人とも今泉力哉監督の「退屈な日々にさようならを」に出ていたんですね。猫目さんの印象は強いです。またあくまで第三者として物語にを動かしていく友人役の葉媚も可愛いしいい味出していました。

「おろかもの」の不倫を扱った作品ですが、どろどろはしておらず、心地いい時間を過ごせると思いますよ。

友だちのパパが好き

自分の父親のことを「好きだ」と親友のマヤから真剣に告白され、あきれる妙子。その話を聞き、母は笑い飛ばすが、父はまんざらでもない様子だ。妙子への突然の告白をきっかけに、マヤは父親へのアタックを猛然と開始。常識もかえりみないマヤの純愛が、家族、恋人、愛人、先生、同僚とさまざまな人間関係をも巻き込んで繰り広げられる。

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愚か者と言えばこの映画に出てくる妙子の父も愚か者です。クズです。不倫中の恋人がおり、離婚も間近。それなのに娘の友達に言い寄られ結局ノリノリになってしまう。愚か者極まりないです。しかしそれ以上に強烈なのはマヤ。好きになったら親友の父親だろうがお構いなくアプローチしていきます。それもかなりエグい。作品中何度も「変態」と言うワードが放たれますが、まさに変態的性癖。結局はそのせいで悲劇的な、とは言え喜劇的な終末になだれ込みます。壊れていく人間関係を乾いた薄ら笑いで見るのがこの映画の正しい見方なのでしょう。

由宇子の天秤

3年前に起きた女子高生いじめ自殺事件の真相を追う由宇子は、ドキュメンタリーディレクターとして、世に問うべき問題に光を当てることに信念を持ち、製作サイドと衝突することもいとわずに活動をしている。その一方で、父が経営する学習塾を手伝い、父親の政志と二人三脚で幸せに生きてきた。しかし、政志の思いもかけない行動により、由宇子は信念を揺るがす究極の選択を迫られる。

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「由宇子の天秤」というストレートなタイトルからわかるように、報道する立場にいて、正義とは何かを常に追い求める側の由宇子が、身内の醜聞に接した時にどう考え、どう行動していくかが主題となっています。由宇子の父の行いは、由宇子がまさに報道しようとしていたことの裏返し。表沙汰になれば自殺事件の番組を表に出すことも怪しくなる。さらには自殺事件の真相も不確かになり・・・。徹頭徹尾ヒリヒリするような感覚が続きます。男前な(!)瀧内公美、物語の鍵を握る河合優実の熱演が印象に残ります。

ラスト近く、映画の禁じ手では?というような展開になりドキドキしました。是非そこまでご確認ください。

寝ても覚めても

大阪に暮らす21歳の朝子は、麦(ばく)と出会い、運命的な恋に落ちるが、ある日、麦は朝子の前から忽然と姿を消す。2年後、大阪から東京に引っ越した朝子は麦とそっくりな顔の亮平と出会う。麦のことを忘れることができない朝子は亮平を避けようとするが、そんな朝子に亮平は好意を抱く。そして、朝子も戸惑いながらも亮平に惹かれていく。

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東出昌大と唐田えりか主演。後にスキャンダルとなる2人の発端とも言える作品になってしまったということで、正当に評価されていない気がします。実は自分も避けていたところがあったのですが、実際見てみると、これが凄くいいです。ある意味ファンタジックなラブストーリーであり、逆にリアルでもある。説明的ではないですが、会話や表情で朝子や亮平の感情の機微が伝わってきます。

東出昌大の二役、ほぼ無表情な唐田えりかはもうこれしかないという好演。申し訳ないけどこんな映画撮ったら恋に落ちてしまうのも納得(善悪は置いておいて)。唐田えりかの演技を下手とか棒読みとかいうネット評も見ましたが、この作品ではあれで正解かと。

ラブストーリーでありながら冷たい感触の作風です。なんとなく見ていると、時々ガツンと殴られたようなシーンがあります。前触れなく東日本大震災をぶっ込んできたところ、親友の渡辺大知(from黒猫チェルー/aka「二」)が病気になるところ。勿論、最大の「⁉︎」は後半のあの場面。鳥肌立ちました。ここは前知識なしで見てほしいです。

朝子に感情移入するのは難しいかもしれません。でも、人間ってそうなのかもとも思えます。「業」を感じさせるラストシーンまでご堪能ください。

それでは、最後にこの映画の主題歌、tofubeats「RIVER」を。

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