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オススメ映画を紹介するよ! シャマラン監督編

シャマラン監督と言えばいまだに「どんでん返し」を期待する向きもあるようですが、個人的には「思いついたひとつのネタを使い、世界の変容を表現する」ことに徹した監督だと思います。世間的にも一時期の低迷を脱し、コンスタントに面白い作品を世に出すシャマラン監督はお気に入りです。例によって最近サブスクで見た作品たちを紹介します。

シックス・センス

言わずと知れたシャマラン監督の代表作。予告もあらすじもここでは引用しません。まだこの映画を見ていない幸運な人がいるならば、一切の情報なしに見てほしいです。因みに自分の子どもたちはまだ見ていません。羨ましいなあ。

この映画が公開された当初、映画館で見たと思います。エンドロールの後、後ろを振り返ると、高校生くらいの男の子がまさに号泣していました。何が彼をそうさせたのかはわかりませんが、「シックス・センス」はそれくらいのポテンシャルがある作品です。

ヴィジット

休暇を利用して祖父母の待つペンシルバニア州メインビルへとやってきた姉妹は、優しい祖父と料理上手な祖母に迎えられ、田舎町での穏やかな1週間を過ごすことに。祖父母からは、完璧な時間を過ごすためにも「楽しい時間を過ごすこと」「好きなものは遠慮なく食べること」「夜9時半以降は部屋から絶対に出ないこと」という3つの約束を守るように言い渡される。しかし、夜9時半を過ぎると家の中には異様な気配が漂い、不気味な物音が響き渡る。恐怖を覚えた2人は、開けてはいけないと言われた部屋のドアを開けてしまうが……。

映画.com

この映画、途中に入るテロップのフォントがダサかったり、つなぎが雑だったりします。それはシャマランが適当に撮ったから、ではなく、主人公である姉が、母と疎遠になっていた祖父母の家を訪問する様子を自らドキュメンタリー映画にするという目的で撮られた映像だからです。もっと言えば、私たちが見る映像は主人公によって既に編集された映画」なのです、「ヴィジット」においては。

手持ちのカメラなどで撮られた風を装うPOVは流行りはすぎたもののそこそこ定着した手法です。通常より主観的な映像になりますが、それを編集したのは誰?ということにもなります。

この映画は撮影したのも素材を取捨選択したのも、主人公です。しかもある意図を持って編集されています。だからこそ、ラストを迎えた時、監督としての主人公が伝えたかった思いが伝わってきます。以下は最初に見た時の自分の感想ツイート。

シャマランの「ヴィジット」について、「ラストの弟のラップが蛇足」的な感想見たけど、弟のたっての願いのラップを入れたことで姉が編集したドキュメンタリーが完成するのだし、鏡に向かって髪をとかすことができるようになった姉の姿を自然に映し込むことで、シャマランの狙うテーマがいきてくる。

sonnet_gzのTwitter

これ見てシャマラン上手いなあと思いました。内容全然紹介していませんが、ショッキングな場面もありホラーとしての完成度も高いです。

オールド

人里離れた美しいビーチに、バカンスを過ごすためやってきた複数の家族。それぞれが楽しいひと時を過ごしていたが、そのうちのひとりの母親が、姿が見えなくなった息子を探しはじめた。ビーチにいるほかの家族にも、息子の行方を尋ねる母親。そんな彼女の前に、「僕はここにいるよ」と息子が姿を現す。しかし、6歳の少年だった息子は、少し目を離したすきに青年へと急成長していた。やがて彼らは、それぞれが急速に年老いていくことに気づく。ビーチにいた人々はすぐにその場を離れようとするが、なぜか意識を失ってしまうなど脱出することができず……。

映画.com

これなんか誰もが一度は考えたことある、「時間の進み方が違ったら」みたいなネタから発展させたみたいな作品。かなり絶望感は強いです。人の一生は有限だってわかっているのに、普段はそれを忘れている。いざ死から逃れられない現実を認識した時、本当に大切なものが何かわかる、と言えば難病ものの映画で繰り返されたモチーフですが、「オールド」ではそれをリアルに突きつけられます。

モヤっと終わるのかなと思っていたら、終盤には黒幕の存在が明らかになります。このあたりはシャマランらしくないとも言えるかもしれません。

アンブレイカブル/スプリット/ミスター・ガラス

見知らぬ男に拉致され、密室に閉じ込められた女子高校生3人組は、監禁場所で神経質な雰囲気を漂わせた男を目にする。男が部屋から立ち去り、必死に脱出方法を思案している最中、ドアの外から男と女が会話する声を耳にした3人は助けを求めて声を上げるが、そこに現れたのは、女性の服に身を包み、女性のような口調で話す先ほどの男だった。男には23もの人格があり、9歳の少年やエレガントな女性など、ひとりの体の中で人格が激しく入れ替わっていく。そして、そんな男に24番目の人格が現れ……。

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フィラデルフィアのとある施設に、それぞれ特殊な能力を持つ3人の男が集められる。不死身の肉体と悪を感知する力を持つデヴィッド、24人もの人格を持つ多重人格者ケヴィン、驚くべきIQの高さと生涯で94回も骨折した壊れやすい肉体を持つミスター・ガラス。彼らの共通点は、自分が人間を超える存在だと信じていること。精神科医ステイプルは、すべて彼らの妄想であることを証明するべく、禁断の研究に手を染めるが……。

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「アンブレイカブル」の時点ではシリーズになるなんて予想もできなかったし、「スプリット」も最終盤までは緊張感あふれるよくできたスリラーだな、助かるのは誰かなって見ていたのに、ブルース・ウィリス登場でまさかのユニバース化。シャマランははじめから考えていたのかなあ。

作品としては「スプリット」が面白くて、「ミスター・ガラス」はそこまでではないです。でもシャマランの思い描くヒーロー像(アンチヒーロー?)がテーマとして打ち出され、それが世界に広がっていくエンディングは納得できるものでした。

ブルース・ウィリスの病気はどの程度だったんでしょうね。セリフは確かに少なかったですが、存在感あふれるデヴィッドを好演していました。

ノック 終末の訪問者

ゲイのカップルであるエリックとアンドリュー、そして養女のウェンの家族が山小屋で穏やかな休日を過ごしていると、突如として武装した見知らぬ謎の男女4人が訪れ、家族は訳も分からぬまま囚われの身となってしまう。そして謎の男女たちは家族に、「いつの世も選ばれた家族が決断を迫られた」「家族のうちの誰か1人が犠牲になることで世界の終末を止めることができる」「拒絶することは何十万もの命を奪うことになる」と告げ、エリックとアンドリューらに想像を絶する選択を迫ってくる。テレビでは世界各国で起こり始めた甚大な災害が報じられるが、訪問者の言うことをにわかに信じることができない家族は、なんとか山小屋からの脱出を試みるが……。

この作品もほとんどワンシチュエーション。謎の訪問者の言う終末説を信じるのか、家族の誰かを殺すべきなのかで最後まで引っ張ります。普通そんなことを言う人たちのことなんか信じられないのですが、彼らは1人ずつ死んでいき、世界の最後を思わせる天変地異も実際に起こり始めます。山小屋という限られたロケーションで、世界を救えるかを選ばされるという、アンバランスな究極の選択が魅力的です。

エンディングまで見ても、科学的にスッキリするようなことは何もなく、評価を下げる人がいるのもわかります。それでもそれがシャマランらしいんですよね。

この作品でも、サラッと父親2人家庭が出てくるの、まだまだ日本映画には少ないパターンで好感が持てます。

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