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オススメ映画を紹介するよ! 恐るべき監督ランティモス編

「恐るべきランティモス」と言ってしまうとまるで怪獣のような響きですが、ヨルゴス・ランティモスはギリシャの映画監督です。ジャンルは統一されていなくとも、その奇妙さから「あ、ランティモス監督作品か」と全て納得できてしまう、特異性を持った監督です。理解不能なところも含めて、次が見たくなるランティモス作品。今回は3作品と公開前の次回作を紹介します。一部【ネタバレ】します。


聖なる鹿殺し

「聖なる鹿殺し」というタイトルから既に「何を言っているのですか?」という感じです。神話が元ネタらしいですがよくわかりません。ストーリーは以下の通り。

心臓外科医スティーブンは、美しい妻と健康な二人の子供に恵まれ郊外の豪邸に暮らしていた。スティーブンには、もう一人、時どき会っている少年マーティンがいた。マーティンの父はすでに亡くなっており、スティーブンは彼に腕時計をプレゼントしたりと何かと気にかけてやっていた。しかし、マーティンを家に招き入れ家族に紹介したときから、奇妙なことが起こり始める。子供たちは突然歩けなくなり、這って移動するようになる。家族に一体何が起こったのか?そしてスティーブンはついに容赦ない究極の選択を迫られる・・・。

公式サイトより

ジャンルはホラーに分類されるでしょうか。ひたひたと迫ってくる家族への怪異。マーティンの怪しさも相まって緊張が続きます。ラストの選択もギリギリまで息を呑みます。

ホラーとして完成されていますが、次に何が起こるのか、今何を見せられているのかわからない不安を募る描写がランティモス監督らしさと言えるでしょう。

「女王陛下のお気に入り」とも共通するのですが、独特のカメラワークもランティモス監督の特徴のひとつと言えるでしょう。詳しく解説しているサイトがありました。

この作品だけ見ると、ちょっと変わったホラーという括りで完結します。他の作品を見てみると、監督の奇妙さを再確認できるはずです。

ロブスター

今回紹介する中では、最も「変な」作品です。

“独身者”は、身柄を確保されホテルに送られる。 そこで45日以内にパートナーを見つけなければ、自ら選んだ動物に変えられ、森に放たれる。 そんな時代、独り身になったデヴィッドもホテルに送られ、パートナーを探すことになる。しかしそこには狂気の日常が潜んでいた。しばらくするとデヴィッドは“独身者”が暮らす森へと逃げ出す。そこで彼は恋に落ちるが、それは“独身者”たちのルールに反することだったー。

公式サイトより

ね、もう何言ってるかわからないでしょ。実際主人公のお兄さんは犬になってます。そして万が一の時は主人公は「ロブスター」になるのです。おそらく現代の恋愛を寓話としてSFに落とし込んでいるんだろうな、ということは想像できるのですが、見ている人の理解なんぞどこ吹く風という感じ物語は進んでいきます。

暫定独身者たちはこのホテルで伴侶を見つけるため、相手との「共通点」を見つけようと躍起になります。この辺りが、ランティモス監督の現代の恋愛事情への風刺なのでしょう。登場人物たちも戯画化されたように滑稽な行動をとります。どの作品でもどこかしら人間の喜劇的な振る舞いを描き出すのも、特徴かもしれません。

この項以下【ネタバレ】です!
物語のラスト、目が見えなくなった恋人と逃げ出した主人公は、レストランで選択を迫られます。彼女との「共通点」を保つため、彼はナイフを手にトイレへ。己の目を潰そうとして・・・。そして彼を待つ恋人の姿が長めのカットで映し出されます。果たして主人公は目を潰したのか、逃げ出したのか。「聖なる鹿殺し」とも似た、ある意味究極の選択の場面で物語は終わります。判断は観客に委ねられます。人間の愚かさが際立つラストです。

女王陛下のお気に入り

イングランドのアン女王、昔からの友人でもあり、女王の寵愛を受けた女官のサラ、サラの従妹でもあり、成り上がりを目指すアビゲイル。3人の女性の愛と嫉妬と権謀の物語。歴史物でありながら、ほぼ3人の人間関係にフォーカスされているので、イギリスの歴史に詳しくなくてもすんなり入り込めます。尤もあちらの人にとっては常識的な話題なのかもしれません。個人的な人間関係がメインということで、ここでもコメディタッチに感じられる時間が結構あります。しかし最終的には女性たちの嫌らしさ醜さ怒り、というか醜悪な「人間」の姿が浮かび上がります。

ランティモス監督独特のカメラワークは健在で、廊下を歩くシーンに魚眼っぽいレンズを使ったり、蝋燭の光だけで暗い宮殿を映し出したりしています。一番印象に残ったのは、必要以上に顔のクローズアップを続けるカットです。何度か登場しますが、最後アン女王の顔のアップで様々な感情を伝える場面は演技も素晴らしく圧巻です。

ところでアン女王、痛風を患っています。移動に車椅子が必要になる感覚、非常に共感できました(?)。

哀れなるものたち

まだまだ知名度は高くないヨルゴス・ランティモス監督。海外では様々な賞を受けていて、評判も上々です。そして新作の情報も入ってきました。サブスクで見られるのはほぼ今回紹介した3作品だと思います。今のうちに是非ランティモスの奇妙さを味わってみてください。

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