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南の島 - 海と本屋

沖縄へ。
今年に入ってコロナも落ち着いてきた頃に計画していたが、出発前に沖縄で感染者数が急増し医療機関が逼迫との報道で、これは注意せねばと気を引き締める。

乗り物やスーパー、人が多い所では暑くてもしっかりマスク。
宿泊はキッチン付きにして、食事はほぼ自炊またはお店の持ち帰り。
旅の目的のほとんどは海だったので、外食しなくても何の不満も無し。

朝9時、離島のビーチ。
島の時報のメロディは「椰子の実」

本島でも、移動と食事の買い出し以外は海にいた。
コロナ前に数年続けてお世話になっていたマリンショップのお兄さんと4年ぶりの再会。
今までとは違うポイントでSUPとシュノーケルをしたのだが、今回はあるパワースポットに案内してもらった。

崖の間の狭い砂地に細い岩

その場所は2017年に立ち入りが禁じられて陸路からは辿り着けなくなってしまったのだが、カヌーやSUPで海からの上陸は可能。

もともとあまり知られていない、地域の人だけがひっそり訪れる神聖な場所だったそう。それがパワースポットブームのせいで噂が広まり、あっという間に観光客が押し寄せるようになってしまった。
集落のはずれの海と林の間に入口があるのだが、舗装されていない車一台が通るのがやっとの道、駐車スペースもほとんど無い。
そんなところにみんなが車でやって来るので、周辺は大変な渋滞だったらしい。
入口が閉鎖された今は、それもなくなった。

ビーチからマリンショップに戻る際に、ちょっと遠回りして陸からその場所の入口の前を通ったら、フェンスで中に入れないようになっていた。

2017年に立ち入りが禁じられたと書いたが、集落や行政が禁じたのではなく、そのパワースポットに陸から入る場所の地主がフェンスを設置して入れなくなったとのこと。
パワースポットの場所自体は地主のものではない。なので、海からのアプローチはOKとの説明だった。

ボードにフィンとマスクくくりつけて漕ぎ出す
海から小さな砂浜に上陸

私は霊感はなく感性も鈍いので「パワースポット!」という実感はなかったけれど、崖に挟まれた狭い砂浜は妙に居心地よく、案内してくれたお兄さんが「昨日とは違う所にまたウミガメが産卵しにきた跡がある」とか言うし、確かにとても気持ちのよい場所だった。

あとはもうただ泳ぐ。

海辺の小さなかき氷屋でおやつ
おきなわぜんざい白玉入り


海の他に、目的地はあと二つあった。
一つは沖縄に行くと必ず立ち寄っていた国頭郡の最高においしいお菓子屋。ところが、着いた翌日からまさかの臨時休業。無念。
もう一つは那覇の小さな古本屋。

牧志公設市場横。
「市場の古本屋ウララ」
店主の許可を得て掲載

「ウララ」のことを初めて知ったのは、2012年7月1日号vol.56の『ku:nel』で。
まだ悪魔に魂を売る前の昔の『ku:nel』は面白い読み物がたくさんあったが、この号はウェールズにある古書店の町ヘイオンワイのことや、上野英信、星野博美、シートンの記事もあり、私にとっては大当たり号だった。

「都会のフクロウ、南の天地へ。」と標題がついた記事。
この時ウララは開店してまだ1年も経っておらず、店舗は今より狭く、店主の宇田智子さんのインタビューも初々しい。
あのワクワクする公設市場のあるアーケードで、たった一人で本屋さんだなんて!と、市場も小さな古本屋も好きな私には夢のような記事だった。

その後宇田さんは何冊かウララについての本を出した。

『那覇の市場で古本屋
ひょっこり始めた<ウララ>の日々』
ボーダーインク 2013年
那覇の出版社から出ている
『市場のことば、本の声』
晶文社 2018年
増補『本屋になりたい
この島の本を売る』
2015年にちくまプリマー新書から出たものの増補版
ちくま文庫 2022年

ウララの目の前にある牧志公設市場は、老朽化による建て替えのために2019年6月に閉まり、その後仮設への移転を経て今年の3月に新装オープンした。
その過程を記録した宇田さんの最新刊を購入。

『三年九か月三日
那覇市第一牧志公設市場を待ちながら』
市場の古本屋ウララ 2023年

この本、写真もたくさんあって興味深い。
こういう記録物は当事者でなくても、たまに訪れるだけの旅行者にとっても色々な気づきをもたらしてくれる。

新しい公設市場は、建物は確かに新しく明るくきれいになっていたが、中味は以前の時とあまり変わっていないようにも思えた(いい意味で)。建物の外にくっついていたいくつかの店舗はなくなっていたが。
その中の一つ、ウララと反対側の角でおばあさんが切り盛りしていた小さな惣菜とおやつの店のぽーぽーが大好きだったのだが、その店もなかった。そこは市場の建て替えよりずっと前になくなっていて、もしかしたら市場が新しくなったら戻ってきてたりして…と淡い期待もしていたのだけれど。

とにかく、食べ物や服、雑貨、お土産、金物などを売る店や飲食店などの中に、当たり前のようにぽつんとある古本屋はとても魅力的。
著書の中で、「古本屋は不急かもしれないが不要ではない」と書いてあったけれど本当にその通り!

『本屋になりたい』の、高野文子の挿絵ポストカードも一緒に購入。

あぁ、いい絵だなあ。
高野文子に挿絵描いてもらえるなんて、素敵だなあ。

あとは、アーケードの沖縄菓子の店でカーサムーチーを数種類。

月桃の葉にくるまれた、色々な味のお餅。

沖縄での一足早い夏休みは蝉も大合唱。
蚊にもたくさん刺されて帰ってきた。

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