「分かったつもり」の原因と対処法

今回はこのツイートを深掘りしていきます。
よくある生徒の悩みの一つが「分かったつもり」です。

この原因は、「分かりやすい解説」であることが多いです。
普通、わかりやすい説明は良しとされますよね?

しかし、わかりやすい説明は時に、生徒を思考停止にさせます。
だって自分から考えなくても、講師が淡々と授業を進めてくれるのですから。
イメージとしては、テレビをぼんやり見ている時のような感じでしょうか。
よく情報番組でニュース解説がありますよね。あれ、見ているときは分かった気になります。でも1週間後に、その内容を覚えていますか?自分の言葉で説明できますか?
恐らく難しいと思います。

わかりやすい説明は、スッと胸の中に入ってきますが、それを自分の言葉で「再生」するのが難しいのです。

では、どうしたら良いのか。
それは、「生徒が自分で考え、自分の言葉で表現すること」です。
つまり、再生ですね。

これは特に、国語の授業では有効です。
なぜなら他の科目と違い、同じ問題が出ませんから。

算数だったら公式を覚えれば、似た問題でそれを使える。
社会だったら年号の知識などは、同じ問題がでることもあるでしょう。
しかし、国語は同じ題材が出ることが、まずほぼありません(あったら超ラッキーです)
だから常に一から考える必要がある。覚えたことを復唱するだけでは、対処できないのです。

こうした国語独自の特性も相まって、望ましい授業の形も変わってきます。
説明をただ聞くだけでなく、自分で考え、言葉を発する必要があるのです。

これは記述対策にも大きな力となります。
よく「記述で空欄になります」とお悩みをいただきます。
しかし、実際に授業をしてみると、思いの外生徒は考えを持っている。

どうやら、自分の考えを言語化することに慣れていないようです。
これは恐らく「わかりやすい授業」の弊害でもあるでしょう。

私の授業では、とにかく生徒に考えさせます。解説は当然しますが、できるだけ控える。
理想としては、発問だけで進めば良いなと思っています。

最終的な入試本番では、講師はそばにいません。何のアドバイスもできないのです。最後は独力で立ち向かう必要がある。
だから、自分で考えさせます。

特に新人の講師ほど、教え込むことに必死になりがちです。
自分がいかに良い説明をできるか、ここに拘ってしまう。
もちろんそれは講師として必須能力ではあるのですが、それ以上に大事なものがある、ということです。
案外ベテラン講師ほど、生徒に喋らせるものです。

さて、ここまで「分かったつもり」の危険性を述べてきました。
では、ご家庭でどのように指導したら良いのでしょうか。
生徒の様子を見て的確な発問をすることは、経験値が必要であり、なかなか難しい部分かと思います。

一番簡単な方法としては、文章を読み終わった後
「どんな話だった?」
と聞いてみて下さい。これは物語文でも説明文でも有効です。

恐らく最初のうちは
「たんぽぽの話」
など、一言で返ってくると思います。そうしたら、
「そうだね!たんぽぽの話だね。たんぽぽの何についての話なんだろう。もう少し詳しく教えて?
と聞いてみます。

こんなふうに、少しずつ掘り下げていくと良いです。「詳しく教えて?」と聞くのがポイントですね。

逆に、話の概要を先に説明してしまうのは、悪手です。
(残念ながら9割の授業はそのスタイルなのですが)
これでは、生徒はテレビをみている感覚になります。

先ほどのやり方は、どんな題材でも有効です。
国語の題材文でなくとも、普通の小説などでも使えます。
ポイントは、生徒にまず考えさせることです。

皮肉なことに、国語が得意になればなるほど、教えたくなります。
でもそこはグッと堪える。
生徒目線に立つとは、そういうことです。

集団授業なら、まだ解説メインの組み立てでも良いかもしれません。
(上位クラスや入試直前期ではアリだと思います)
しかし、個別指導や家庭教師でこれは最悪ですね。

以前、超有名大学出身の講師の授業を受けた方から、様子を聞いたことがあります。
曰く、「とても綺麗な解説なんだけど、どうも受け身で終わってしまう」とのこと。まさに今回話したような現象ですね。
特に国語センスがある講師ほど、生徒が「なぜできないのか」がわかりません。逆に、国語で苦しんだ講師は、その気持ちがよくわかります。

余談ですが、私も中学受験時代、国語が苦手でした。
「文章中の言葉を使って書きなさい」という問いに対し、
「文章中にある50音以外は使えない」と思い、必死に50音を探すくらいの国語音痴でした。
その後学生時代に塾講師をやる中で、国語のノウハウに気付き、今では得意になりましたが、かつては苦手でしたね。
だからこそ、国語で苦しむ生徒をみると「わかるわぁ〜」となります笑

国語は他の科目と違い「公式」が見えづらいんですよね。どう解いたら良いかわからない。
でも、確実に公式はあります。それをいかにして生徒に気づかせるかが、講師の腕の見せ所です。大人は出しゃばりすぎてはいけないのです笑

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?