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#2 古本屋のすすめ


もう新品には戻れない。


昨年の夏くらいから、古本屋で本を買うようになった。
古本屋、と言ってもそこらへんにあるような本のリサイクルショップだけれど。


きっかけは、『ハリー・ポッター』シリーズを読みたいと思ったこと。

せっかく読むなら、小学生のとき学校の図書館で見たあの硬くて分厚い表紙の単行本で揃えて読みたい。でも全部新品で買いたいと思うまでの熱量は自分の中になく、近所の古本屋に足を運んでみることにした。


それまで私は、本は本屋で買うものだと思っていた。古本屋にはほぼ行ったことがなく、古めかしいぼろぼろの本が並んでいるイメージだった。

けれど、古本屋は思っていたよりとても良かった。最近の本も多く置いてあって、綺麗な状態の本ばかりだった。

しかも1冊100円や200円で本が買える。
2000円する本を100円で同じ読書体験ができるって素晴らしくない?ちょっぴり心が躍る。


最初に訪れた古本屋には『ハリー・ポッター』シリーズは全巻取り揃っていなかったので、その後私は休日の度にせっせと古本屋をめぐってあの分厚い背表紙を探し回り、結局2000円くらいで全シリーズを手に入れた。


古本屋めぐりをするうち、古本屋は本が安いだけではなく、不思議な空気が流れていることを感じ始めた。

古本屋に並ぶ本たちは、きっと一度か二度誰かの手によってページをめくられた本たちだ。
その本たちは、本屋に並ぶ新品のぴかぴかの本たちよりも少し色がくすんで見えるけれど、気兼ねなくページをめくっていいよ、というような雰囲気を醸し出している気がする。本を手に取り開く自分の心のハードルが下がるような気がするのだ。


それから私は古本屋に行くようになった。

欲しい本を求めに行くのではない。
ふらっと立ち寄って、誰かが読んだ背表紙が集められた棚の中から、自分のものになる本を探す。そして出会う。ちょっとした宝探しみたいな、その時間が楽しい。


もう新品には戻れない。


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