友人来岡

 先日、金曜日の夜から日曜の夕方まで、山口県に住む友人が自宅を訪ねてくれた。かの友人は高校時代からの付き合いで、往々にバカなことをしてきて、結局三十路を過ぎた今でも連絡を取り合う無二の友となった。
 そんな彼との2日半について、少し書いてみようと思う。
 テーマというか、結論は「食って食って食う」だ。

 金曜日、我らが総務課長は出張で不在。皆揚々として、仕事を早めに切り上げた。私もその足に同調して仕事を切り上げ、官舎に戻り、人ひとり分が寝られるスペースを確保してから友人を迎えに岡山駅に向かった。
 時間は18時~19時、世のサラリーマンが一気に仕事から解放される時間。岡山中央病院の前を通る国道53号線はすさまじい数の車に覆われていた。普段なら40分~50分ほどで着く路程を1時間以上かけて現地に到着した。
 この日の夕食は中山下の「金八ラーメン」。
 この店は何といっても、どでかい角煮が乗った太肉ラーメンだ。醤油系のラーメンにでかい角煮が乗っている。こってりしているわけではないが、あっさりしているわけでもない。どこか遠くに苦みを覚えるが、とてもおいしい。
 ラーメンに舌鼓をうち、帰路に就く。帰りは帰りで国道は激しく混んでいた。少し道をそれて、芳賀団地を通り吉備新線に合流。友人の思い付きでホタルを見に行きたいと。当初は北房まで行きたいと言っていたが、さすがに遠いため、吉備高原都市からほど近い津賀集落に向かい、ホタル観賞をしてから官舎に招き入れた。

 土曜日は朝から蒜山に向かう。目的地はひるぜん焼そばと唐揚げの名店、「悠悠」。賀陽インターチェンジから岡山道ー中国道ー米子道と伝い、蒜山高原へ。お店には開店30分前に到着したが、この時点で5組目の客が我々であった。
 店が開き、順次番号で呼ばれて店に入っていく。ここに来たらいつもの「ひるぜん焼そば」と「唐揚げ」だ。初めてこの店に来た5年前、お店で「炭水化物×炭水化物=うまい」という文字をみて感激した覚えがある。
 食後は鬼女台へ。ここは蒜山高原と大山を一緒に見ることができるスポットだ。ここにきてソフトクリームとコーヒー牛乳を飲み食いしながら蒜山高原を眺める。ここで次にどこに行きたいかをゆるりと考える。
 

 考えた結果が出た。「蒜山ジャージーランド」だ。ジャージー牛の牧場と、馬の牧場があり、肉やミルクを使ったデザートもある。友人はここでさらにソフトクリームを食べていた。私はさすがに飲み物を。この日は残念ながら牛の放牧や乳しぼり体験はしていなかったが、馬の餌やり体験くらいはすることができた。ひとしきり歩いたのちに、「道の駅 風の家」へ。ここで友人は家族らへのお土産の購入と、ジェラートを食す。
 道の駅を早々と出発して、「塩釜の冷泉」へ向かう。ここは長く手を入れておけないほどの冷たい水が湧く泉とのこと。近くの駐車場に車を止めて徒歩で向かうが道を誤り、無駄にキャンプ場彷徨う不審者となっていたが、よくよく見ればとても分かりやすい場所に泉はあった。
 早速手を入れてみたが、痛いくらいに冷たい。顔や腕に塗りたくるように水をつけて暑い日差しにやられた体を取り戻す。

 せっかく冷泉で冷たく冷やしたのに次に向かったのは「湯原温泉」であった。特に、湯原温泉には「露天風呂番付 西の横綱」にランクされた「砂湯」がある。なんとここは混浴風呂なのだ。友人はこの「混浴」に踊らされての訪問となった。
 昨年、私はここに1泊したことがある。女性はもちろん水着。男性はすっぽんぽんの裸で入っていたが、この日は女性は皆無。おじさんばかり5人ほどとテレビ番組のクルーが来ていた。
 このテレビ番組のクルーが一人のおじさんに取材をしていたが、湯の暑さと容赦のない日差しにおじさんが負けて風呂に溺れてしまい、私と友人とクルーと3人で救出にあたったりした。友人も風呂の暑さより、日差しに負けてしまったようで、あまり長居はしなかった。

 湯原温泉を出て、高速「湯原インターチェンジ」から米子道ー中国道と通り、北房へ。北房の「ホタルの里」へ向かう。ここは県内随一のホタルの生息地として知られ、この時期がピークなのだそうだ。
 たまたまちょうど、この日は「2023 ホタルの夕べin北房」が開催され、出店や歩行者天国同様となった商店街をゆっくり走り駐車場へ向かう。車を止めて、ひとまず屋台巡りをし、久々にちゃんとした焼き鳥や牛串を堪能。また、ホタルの里のすぐわきには小さな鍾乳洞があり、ひんやりとした空気と水の轟音を聞き、陽が落ちるのをジッと待つ。
 20時ごろより、ぽつぽつと緑の光が河原に見え始める。無の心境で眺めていたが、友人は10歳くらいの女の子と仲良くなっていた。親から逃げ出し、ホタルを捕まえてビックリさせたいそうだ。私も仲間入りさせてもらい、おしゃべりしながらホタルの捕獲を試みるがうまくいかない。捕まえられないたびに「このばかちん!!」という少女についつい笑ってしまう。この少女のおばあ様がホタルを捕まえるのが非常に得意だそうで、少女もこれに倣いたいらしい。そうこうしているうちに探しに来た母親につかまり、「まだ捕まえてない~~」と言いながら消えてしまった。
 悔やまれるのは名前くらいは聞いておけばよかった。日に焼けた「ばかちん少女」、またいずこかで再会できるのを楽しみにしたいところである。
 21時ごろから最大化し、22時前にはゆっくりと光は小さくなる。我々もそのころにお暇し、吉備高原都市の官舎へ戻った。

 日曜日は基本的に動かない。とはいいつつ、11時ごろに旧賀陽町、吉備中央町役場本庁舎近くの山の上にたつ天空のカフェ、「オーガニカコーヒィ」へ。私はお腹に昨日の食物が残り、コーヒーとケーキをオーダーしゆっくり食す中、友人はケーキを3個食べていた。さらに、役場本庁舎前のラーメン屋にも行きたいとのたまう。その胃袋に敬意をこめて、ケーキの後にラーメンを食べに行く。
 本庁舎前のお店、「新町食堂 丸屋」。食堂と言っているものの、ラーメン専門店だ。ここでお昼の定食をいただく。内容は醤油ラーメン、唐揚げ、ごはん。友人はここで食べすぎていることを自覚したようだ。助かったのはこのラーメンがとてもあっさり系であったことだ。こってり醤油だったら食べきれたか怪しいところだ。

 このまま官舎に戻り、お互い思い思いに過ごす。友人はマンガ本を読みふけり、私は布団に転がり夢と現世の狭間を行ったり来たり。
 15時ごろにおもむろに友人がそろそろ戻るか・・・と。私もゆっくりと動き出し、また金曜夜と同じく大渋滞するなか岡山駅に向かい、彼とまたどこかで再会しようと誓い別れた。
 非常に濃密な2日半。私は帰りに天満屋のデパ地下で少しお高めの食品を買って帰り、現実と向き合うことにした。

 またいつか。17歳ごろの気持ちのままで、語り合える日を。

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