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無名人インタビュー:モスクワ国立大学で日本語を教えてる人

なんだか謎に包まれていて、興味津々な国、ロシア。
ロシアのイメージと言えば…ソ連崩壊、プロバガンダ・アート、フィギアスケート、マルクス=レーニン主義、赤の広場とKGB(ソ連国家保安委員会:1993年廃止)、ボルシチ/ピロシキ/ビーフストロガノフ、ついでにプーチン大統領。そして、私の知ってる言葉は「Спасибо(スパシーバ)」のみ。

本日は、そんな謎だらけロシアの最高学府「モスクワ大学」で日本語教師をされている方の登場です。なんと最近、ロシア人向けの日本語教科書も執筆&発売されたよう、スゴい!現在のロシアの様子も垣間見れるインタビュー、どうぞお楽しみください

本日ご参加いただいたのは、児玉直子さんです!
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▼イントロ

そんり:今日はどういったインタビューにしていきましょう。

児玉直子(以下、直子):あ、先ず、FacebookでYuukiさんが紹介してらっしゃったのがキッカケで、このインタビューを知ったんですけど。以前、モスクワにYuukiさんがいらっしゃった時に、私も『アイデンティティ・プロジェクト』に参加したんですね。最初にインタビューを受けて、そのあと写真撮ってもらったんですけど、初めて自然にカメラの前に立てたっていうか、そういうのもあって、Yuukiさんすごいなあと思ったんですね。

そんり:はいはい。

直子:そんなYuukiさんが紹介してたから、じゃあやってみようと思って。

そんり:なるほど。

直子:今パンデミックで、外部の人と話せないじゃないですか。モスクワの中だったら、みんな、もう普通に話してる・接してるんですけど。国が閉まってるって感じで、外部の人と全く接触がないじゃないですか。で、こないだ1年ぶりに仕事で知り合いの日本人が来て。「あ!すごい、外国人が来た」と思ってビックリしたんですね(笑)

そんり:(笑)

直子:で、本当にロシア人以外の人、今ここにいる以外の人、外部の人と話す機会が全くないから。それもなんか寂しいなと思って、そんりさんに話していただこうかなと思って。

そんり:日本語でお話ししたいなということですか?

直子:いや、もう日本語とかロシア語とかどうでもいいんですけど。とにかく外部の人、国の外から来た人。自分がいま住んでるテリトリー外から来た人との接触が、全くないから。

そんり:Facebookのプロフィールをちょっと拝見させていただいて。生まれもモスクワですか?

直子:いや、大学卒業までは日本にいて、大学卒業のあとにモスクワで大学に入って卒業して、そのままずっと。だから、1994年からです。

そんり:そうなんですね。今のご職業は?

直子:今は、2つの大学で日本語を教えてます。

そんり:ロシアは日本語を学ばれる方って多いんですか?

直子:多くはないんですけど、熱狂的なファンがいます。

そんり:そういう方って、日本の何に惹かれてるんですかね?アニメ?

直子:アニメもそうだけど、大体ロシア人って親日家なんですよ、日本が好き。

そんり:へえ、なんか意外でした!

直子:でしょ?例えば学生の時も、私が日本人ってだけで、日本人は勤勉で一生懸命やるだろうからっていうことで、そういうステレオタイプがあるでしょ?ロシア人の中にあるんですね。それで、本当はそんなにうまく答えられなくても、いい点数を貰ってました。

そんり:え?それは、先生がえこ贔屓してくれるってことですか?

直子:そう、えこ贔屓してくれます、ちょっと(笑)

そんり:いいですね、日本人ってだけで得になるんだったら使った方がいい。

直子:うん、そうですよ。使えるものはね。

▼ロシア語“も”人を表す

そんり:昔、日本語教師の勉強をしてみようって思ったときがあって。ちらっとテキストを見てたんですけど、すぐ挫折して(笑)すごく難しいですね、助詞とかね、教えるのって。

直子:まあ、何事も慣れって言ってしまえば慣れなんですけども。やっぱり、外国人に教えるための日本語って、また違うんですね。日本人のための日本語と、外国人用の日本語って、学問的には全く違う分野で。だから、そういう面で難しいんですけど。日本語自体が、そんなに文法的に難しい言語じゃないので。

そんり:今ってロシア連邦だから、地域によって使ってる言葉って違うのかな。

直子:場所によっては、ロシア語と別の言葉っていうこともあるんでしょうね。

そんり:文法は、どこの文法と近いんですか?

直子:ロシア語は、インド・ヨーロッパ語の言葉ですから。つまり、ヨーロッパのほぼ全部、フィンランド語とハンガリー語以外の言葉。もっと細分化されるんですけど、同じグループといえば、同じグループ。

そんり:英語とは違う文法になるんですか?

直子:英語もインド・ヨーロッパ語の一つなんですよ。

そんり:なるほど、じゃあ「S+V+O」ってことか。

直子:そうなんですが、英語みたいに文法的に並びが厳しくないんです。その代わり、格変化っていうのがあって、それによって意味を伝えていくっていう感じですかね。

そんり:格変化?聞いたことないな、難しそう。例えばどんな感じですか?

直子:難しいのはすごく難しいです。例えば、「私・あなた」と、複数の「あなた達・私達」と、「彼・彼女」。これで全部動詞の語尾が変わります。

そんり:スペイン語も、そんな感じじゃなかったでしたっけ?名詞によって動詞が変化したような。

直子:スペイン語はね、もうちょっと簡単かな。

そんり:メチャクチャややこしいですね、じゃあ。

直子:メチャクチャややこしいですけど、日本語の漢字と同じで、覚えるとすごく便利。主語を外しても、誰が言ったっていうのがわかるっていう感じです。それぞれの「あなた」「あなた達」「私」「私達」「彼」「彼女」が違うので。主語を飛ばしても、その中の誰が言ったかっていうのがわかる。そういう面ですごく便利、面白いでしょ?本当にね、言葉は面白いです。

そんり:覚えるの、大変じゃありませんでしたか?

直子:もうね、泣いてましたよ。本当、毎日8時間ぐらい勉強してました、ずっと。

そんり:全く知らないロシアに留学して、ロシア語を学んで、ロシア語でお勉強されてたっていうことですよね?いやあ…凄まじいわ…。

直子:それがね、すごいんじゃなくて。なんか若い時にすごい焦ってたんですよ。

そんり:何に対してですか?

直子:人生に対して(笑)

そんり:(笑)

直子:例えば、卒業するでしょ?大学。日本だと大学を卒業した後、就職する時って自分で選べなくて、選ばれる立場じゃない?それがすごく癪で。そこでただ就職すると、自分に何も価値がないような感じがして、怖かったんですよね。それだったら、ロシア語をちゃんと勉強して、何か手に職をつけようと思ったんですね、自分が何か有利になるように、価値があると思えるように。人としての価値の有無じゃなくて、あると思えるような立場になりたかった。

そんり:なるほど。大学の時は、何を専攻されてたんですか?

直子:最初は福岡に住んでて、16歳の時に父の仕事の関係で札幌に転勤になったんですよ。で、札幌で大学に進学したんですけど。札幌の大学では、けっこう第二外国語でロシア語を取れる大学が多いんですね。

そんり:ああそっか、北方領土があるからか。

直子:そうそう。第二外国語を何しようかなと思った時に、中国語は難しすぎるし、ドイツ語もフランス語も興味がないし。で、消去法で残ったのがロシア語だったんですよ。

そんり:中国語の方が簡単そうなイメージだけど。

直子:いやいやいや。でも、中国語って4つの音階みたいなの、イントネーションあるでしょ?あれがどうも分からないなと思って。

そんり:ああ、そうですね、ちょっと難しいかもしれないですね、日本の人には。

直子:うん!そんりさん、わかります?中国語。

そんり:中国語はわからないですけど、韓国語は少し話せるので。発音的に似てるところもあって。多分、発音と音階の聞き分けが一番のネックになるんだと思います。でも、ロシア語も相当大変そうですけどね、お話をお伺いしてると。

直子:音楽のようなイントネーションがないだけ、マシなのかな。まあでも、語学を習得するのは、何語でも大変ですよね。

そんり:日本語も世代によって、使ってる言葉が違ったりしますけど、ロシアでもそういうのあるんですか?

直子:あります。でも、やっぱり言葉は人を表すんですね。だから、話す言葉によって教養の有無がわかる、そういう言葉です。

そんり:胸が痛い(笑)

直子:私もです(笑)

そんり:ロシア語でも何語でも同じだ、育ちがわかるって感じなんですか。

直子:出ます出ます。でも、育ちというか…何でしょう。ちゃんと考えてるか考えてないかでしょうね、言葉に対して。うん、そういう感じがする。

そんり:ロシア語の方が、そういう傾向が顕著ってことですか?

直子:すぐわかりますね。だいぶ昔ですけど、すごい有名なフィギュアスケートの選手が、インタビューでロシア語を話してて。それを聞いて、ちょっとビックリしました。中学校しか卒業してないの?っていうような話し方で。イメージ的に言うと、ギャルが話す言葉みたいなのを、インタビューで使ってるみたいな。だから例えば、日本語を習ってる外国人も、ちゃんと学校に行って習った人の日本語と、コミュニケーションだけで覚えた人の日本語って違うじゃないですか。

そんり:わかる!

直子:それと同じ、すぐわかるでしょ?

そんり:外国人の男性って恋人から言葉を覚える人が一定数いるから、女性っぽい言葉遣いの人が多いなと思ったり。で、ちゃんと日本語を習った人は、日本人より日本語が丁寧。

直子:本当にそうです。多分、大人になってやる語学教育は、文法とか、ちゃんと体系立てて覚えないと、やっぱり変な日本語になる。で、私が毎日、学生を絞ってるんです、ギュウギュウに。ちゃんと、TPOに合わせて変えれるように。やっぱり、それを目指さないと学生達が困るでしょ?日本に行った時に。

そんり:うんうん、確かに。で、ロシアの大学では何を専攻されてたんですか?

直子:ロシア語と文学です。文学は、主にヨーロッパとロシアの文学でした。ロシア文学とヨーロッパ文学とロシア語。この3本立て。

そんり:ノイローゼになりそう。

直子:でもね、面白かったですよ。ヨーロッパ人が大事っていうか、クラシック、基本とする文学を最初から読むんですよ。4年間でずっと。

そんり:シェイクスピアとか?

直子:そうそう。シェイクスピアは1500年代でしょう?まず最初に、ジョヴァンニ・ボッカッチの『デカメロン』とか、ダンテ・アリギエーリの『神曲』とか(※どちらも1300年代)、そういうのから始まるんですね。

そんり:へえ!で、ロシア文学だとどういうものをやるんですか?

直子:ロシア文学だと、やっぱり古いのから。でも、日本で元寇(げんこう)があったじゃないですか。モンゴル軍が2回、日本に攻めてきたでしょう。それがロシアでも起こってたんですよ、その時にロシアの本が全部焼かれたんですね。だからそんなに古いものは、残念ながら残ってなくて。だから古くても、13世紀ぐらいのしか残ってないの。で、近代になるとアレクサンドル・プーシキンとかドストエフスキーとか、そういうとこでしょうね、トルストイとか。

そんり:なるほどー!

▼ロシア古今東西

そんり:どんな感じのお子さん時代を過ごされたんですか?私からすると、ロシアに留学されるなんて、すごく大胆だなと思ったんですが。

直子:けっこう臆病な性格なんですね。でも、何かに急かされると、名前の通り一直線に行っちゃうんですよ。もう何も見えなくなって、その目的に邁進しちゃうんですね。

そんり:“直”子さんですね(笑)それは、お子さんの頃からそういう傾向があったんですか?

直子:多分、子供のときは、とにかく外国に行きたかったんです。とにかくどこでもいいから、外国に行きたくて。「世界青年の船」とかあるじゃないですか。あれ、すごく行きたかったんですけど、私が行きたかった時が沖縄だったんですよ。韓国だったら絶対に行ってたのに、「え?沖縄?」って思って参加しなかったんですけど。その時から、ずっと外国に行きたかった。

そんり:もうそれは小さい時からですか?

直子:小学校の高学年くらい。

そんり:なんでそんなに外国に憧れがあったんですか。

直子:なんか、外の世界を見てみたかったんですね、多分。あまりにも昔のことで、ちょっと覚えてないんですけど。自分の内面よりも、外にベクトルが向いてた感じ。多分。

そんり:何か閉塞感を感じられて、お子さん時代を過ごされてたっていうワケでもないんですか?

直子:いや、どうなんでしょう。出身地は福岡県の太宰府市なんですけど。文化と歴史の町なんですけど。特にそんなに閉鎖感があったワケでもなく。

そんり:なんかよくわかんないけど、「将来は外国に行くんだ」ってのがあったんですね。

直子:はい、色んな世界を見てみたいっていうのはあったかもしれません。

そんり:今はご結婚されてるんですか?

直子:はい。札幌に住んでた時、北大(北海道大学)に留学してたのが、今の主人だったんですね。私が大学1年生の時で、卒業したらロシアに行くって決めてたから。何事もやっぱり実践じゃないですか?言葉も実践しないと覚えないし。その当時、札幌にいるロシア人て、漁師さんか大学の先生とかになるようなおじいさん達ぐらいしかいなかったんで。若いロシア人がいるって聞いて、それは知り合いにならなきゃ!と思って。

そんり:はいはい。

直子:私、大学の外でもロシア語を勉強してて、そこでは、もうちょっと歳上の先生に習ってたんですけど、別の若い先生もいるっていうのを聞いて。で、ロシア語を習っている教室で花見があったんですね。その花見に3,000円払わなきゃいけなくて、当時の私にしては大した金額だったんですけど。これは、何が何でも知り合わなきゃいけない!と思って、行きました。ロシア語のプラクティスの為に(笑)

そんり:じゃあ、学生時代からお付き合いされてたんですね。

直子:そうですね。

そんり:で、お二人でロシアに戻られたんですか?

直子:いや、私の方が先にロシアに行って。夫は多分、北大の大学院にも入れたと思うんですけど、私が居ない人生なんて意味がないって言って、ロシアに帰ってきた。

そんり:ロマンチックな人!

直子:ロマンチックというか。今考えると、いやいや…大学院に行っとけば良かったのに…とは思うんですけど。その時は、そうだったんですね(笑)

そんり:その頃って、まだソ連でした?

直子:いや、もうロシアでした。ちょうど混乱の時期で。

そんり:ですよね、ロシアに変わってすぐぐらいですよね、時期的には。

直子:そうです、そうです。

そんり:どんな感じでした?当時のロシアは。

直子:今でも、その時期に一緒に留学してた人達と会ったら、盛り上がるんですけど。当時はなんだか怖かったです。留学してた男の子達は、殴られなかった人がいないんじゃないですかね、外で。

そんり:え?なんで?

直子:理由もなくですよ。

そんり:ええ!?なんでえ!?

直子:いや、お金がないでしょ?みんな。そういう不安定な時期だったら、治安も良くなかったし。

そんり:内戦ってしてましたっけ?

直子:いや、内戦はなかったですけど、やっぱり国自体が混乱してて。特に警察とか怖かったです。警察が見廻りするでしょ?もう遠くから見かけたら逃げてましたよ、怖いですもん。

そんり:警察も急に殴ってくるの?

直子:イチャモンつけて、お金取るって感じ。あと、やっぱりね、どれだけ新日家って言っても、黙ってるとどこの国の人か分からないでしょう。人種差別とかも、あったと思いますよ。今は、みんな笑って話してますけど。でも、やっぱり当時は怖かったですね。私も一度、パスポートを携帯し忘れて、身分証明できなくて、地下鉄の中の鉄格子みたいな留置所みたいな所に入れられたことありました。

そんり:え?地下鉄の中に鉄格子?

直子:そう、地下鉄の中に。例えば、ちょっと危なそうな人とかいるでしょ?そういう人がいたら、閉じ込められる場所みたいなのがあるんですよ、鉄格子みたいな。とにかく当時は警察自体の質も悪かったし。何やっても、イチャモンつけられるっていう、そういう感じでした。

そんり:ロシアって連邦だから、いろんな国が地続きになってると思うんですけど、ロシア連邦内でもパスポートって要るんですか?

直子:ロシア人って、大体2つパスポート持ってるんですね。国内パスポートと外国パスポート。だから、国内パスポートは普通に携帯してますね。でも、今はすごく治安がいいんですね。90年代と今のモスクワ、もう全然違います。今は、夜遅くに帰ってきても平気なぐらいに、安全な街になりました。

そんり:想像してたのと、全然違うわ。

直子:今は日本よりも便利かもしれない、モスクワ。

そんり:日本より便利っていうのは?

直子:例えばタクシーとかでも、Uberみたいな、ああいうシステムとかも整ってるので、安くどこにでも行けます。モスクワ近郊で3つぐらい空港があるんですけど。1時間半ぐらいタクシーに乗ってたとしても、大体2千円以内で行けます。

そんり:安い!

直子:でしょ?だから、ちょっと行くんでも20分とかだったら、タクシー使ってパッて600円とか700円ぐらいで行けるから。何も考えずに乗れる。

▼ロシアの奨学金制度

そんり:今のロシアの初任給って、大体幾らぐらいなんですか?

直子:日本みたいに、初任給の平均が取れる国って、多分ないんですね。大体、大学卒業してみんな同時にどっかの会社に入るっていうのも、それ、日本が特殊なんですよね。だから、そんなに1年半前とかに就職の準備もしないし。企業は人材が要る時だけ募集する、だから初任給っていう概念がない。本当に人種も立場も多種多様だから、平均給料っていうのもなくて。貰ってる人はものすごく貰ってるし、貰ってない人は全然貰ってないし。それで平均しようっていうのは、すごく難しいですね。でも、大体1ヶ月に手取りで10万以上あれば、割と何も考えずに生活できるぐらいかな。

そんり:日本だったら厳しいですね、その金額だと。

直子:そうですね。日本は多分、出費が多いんですよね。こないだ知り合いのロシア人が驚いてたんですけど、日本って、入学試験時に受験料払うじゃないですか。あれってちょっと良くないですよね。

そんり:ああ、そういう感覚なんですね。

直子:だって、私立ならわかりますけど、国立で受験料取るってちょっと酷くないです?考えると。その前にも…最初に共通試験でしたっけ?

そんり:センター試験?

直子:そうそう。それがあって、そのあと大学ごとに試験があって、その時もお金取るでしょ。それちょっと、国立はお金取っちゃいけない気がしますね、うん。

そんり:へえ、ロシアはそういう感じなんですね。

直子:うん。だから出費が少ないんです。大学にしても、もし小中高の時に、ちゃんと勉強してたら、大学進学の時に無料の道が開かれるんですね。今はモスクワ大学で教えてるんですけど、モスクワ大学の多分40%ぐらい?は無料で勉強してる子達なんですよ。

そんり:奨学金とかとはまた違う?完全無料?

直子:完全無料じゃないと、「奨学金」って言っちゃいけないと思います。あとで返さなきゃいけないお金は、奨学金じゃないですよ。

そんり:そっか、確かに。優秀でもお金が無いから大学に行けないっていう子も、いっぱい居ますもんね。

直子:それ、不公平ですよね。

そんり:うん、不公平。やっぱり人にはそれぞれ能力があると思うんで。学びたい意欲があって勉強が出来る人には、今後の国の発展の為にも、国が出資しても良いんじゃないかなって思います。

直子:だから、そういう境遇の人達にも学びの機会を与えられるように、ちゃんと支援していかないと。勉強への意欲もあって、良い成績を取ってる場合、無料で進学出来るようなシステムを取らないと、もし貧困家庭とかだったら、もう貧困から抜け出せない構図になっちゃうでしょ。せっかく能力があるのに、もったいないですよね。やっぱり教育に携わってるから、そういうのが日本にあればいいなって思いますね。

そんり:じゃあ、直子さんが日本語を教えていらっしゃる学生達は、奨学金で大学に通ってる人も結構多いんですか?

直子:多分、地方から来る人達は無料枠の人ばっかりだと思います。特にモスクワ大学はロシアの最高学府ですから、そういう大学に入れるっていうこと自体、そこの地方ではすごく頭のいい子なので。そういう子達が首都で勉強できるっていう可能性を与えるのは、やっぱり大事でしょうね。それにみんな、やっぱり親に金銭的な迷惑をかけたくないって想いもあるでしょうし。だから、それを考えずに勉強出来るっていうのは良いですよね。

▼アウトロ

そんり:まだ色々お伺いしたんですけれど、残り10分ほどになってしまったので。今はロシアで生活されてますけど、将来は日本に戻りたいと思いますか?

直子:あのね、多分、本当に年金生活とかになったら、日本に戻りたいですね。山登りして、そのあと温泉に行く生活をしたい。それが夢ですね。多分、日本で生活した方が楽だろうなと思います。さっき言ったことと矛盾するんですけど。便利なのは、多分モスクワの方が便利なんですけど。

そんり:はいはい。

直子:でも、年金の手続きとかが複雑で。65歳とかになって、人と怒鳴りあえる元気があるかっていうのが。

そんり:ロシア人ってみんな怒鳴ってるって、聞いたことあります(笑)

直子:多分、言葉のリズムが怒鳴ってる感じなんですよ。ロシア語もすごく可愛い女の子が話すと、すごく良く聞こえるんでしょうけど、そういうちょっと、強い言葉ですからね(笑)とにかく手続きが面倒くさいんですよ、だいぶラクになったとはいえ。私は、日本国籍を持ってロシア人と同じような権利があるっていう配偶者(在留)ビザで生活してるんですが、それを貰うのが結構大変なんですよ。

そんり:何年かに一度は更新とかあるんですか?

直子:そうなんです。でも噂では、次からは永住権的なのを貰える人もいるっていうのを聞いたんですけど、それもどうかわからなくて。そういう手続きのことを考えるとね。多分、歳取ったらできないと思って。でも、わからないですね、どうなるか。

そんり:もしロシアに行ってなかったとしたら、今どういう人生になってたと思います?

直子:どうなってたかな…もしお金があったら、日本固有のいろいろな伝統芸能みたいなのを、習いたかったですね。やっぱり民族的なものが、一番グローバルだと思うんですよ。民族的なオリジナリティが、世界の人を感動させるっていうか。

そんり:うんうん、わかります。

直子:だからやっぱり、どこの国の人でもそういうのを大事にしなきゃいけないと思いますね。そうすると、世界の人達と話すテーマがあって、そういうことに興味持ってる人と心から話し合って、友人になれる可能性が高いと思うんですね。顔見知りとかじゃなくて。

そんり:うんうん。その国の文化を尊重できるって大事ですよね。

直子:私もそう思いますね。だから自分もいろいろ興味を持って、好きになって、知ろうとする。自分が好きじゃないと、他人も好きになれないでしょうね。それは国でも同じかな。

そんり:たしかに。

直子:でも国っていうのも難しい考え方で。いま私はロシアで生活しててもロシア人じゃないし、日本にいても日本人じゃないっていうような、そういう中途半端なのを感じてるんですよ。どっちつかずっていうか、難民みたいな。

そんり:お気持ちはわかります。

直子:でもそれも、ポジティブにそれを考えるか、ネガティブに考えるか。どっちから見るだけなのかなのかなとも思って。

そんり:そうですね。両方をリアルに体験できてるとも言えますしね。人によっては、中途半端な気持ちになるかもしれないですけど。直子さんはポジティブに捉えていらっしゃるんじゃないかと、私は感じてます。

直子:私も、いいとこ取りをしたいなと思ってます(笑)

そんり:今日は興味深いお話がたくさん聞けて、とても楽しかったです!ありがとうございました。

直子:こちらこそ、ありがとうございました。

〜終〜

編集協力:有島緋ナ

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