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『狩りの時間』韓国製純アクションスリラー

『狩りの時間』 2020年
監督・脚本:Yoon Sung-hyun
製作:Handae Rhee
撮影:Lim Won-geun
編集:Yoon Sung-hyun, Wang Sung-ik
キャスト:Lee Je-hoon, Ahn Jae-hong, Choi Woo-shik, Park Jung-min
上映時間:134min

あらすじ
ウォンが暴落したディストピアな近未来の韓国。チンピラ3人組は海の向こうを目指して、裏カジノの強盗を計画する。一攫千金は成功するも、謎の追手が逃げても逃げても追いかけてくる。狩りの時間が始まった。

韓国製ムービーの上質さ
昨年の『パラサイト 半地下の家族』で日本でも一気に韓国映画の面白さが広まった。
韓国の映画業界を称賛して、日本の映画業界を変えなければと声高に言い出す人が頻出した反面、そんなことは前から分かっていたことだし、ポン・ジュノだって昔から面白かったぜと映画オタクたちはクールに見守っていたことであろう。
まあそれでも日本と韓国で映画にかけられる予算のさが広がっていることは事実で、その差はこういうアクション映画に如実に現れてくる。(『新感染 ファイナルエクスプレス』でも明らかだった)
どこまでがCGでどこまでがセットかは、ちいこい画面で観賞しているため分からなかったが、冒頭からちょっと荒廃したディストピアと化した世界であることは一目瞭然なくらいには世界観を作りこんでいる。
ホームレスとかデモ隊のエキストラもケチらずに使いまくっているし、それぞれの衣装やメイクも手を抜いていない。
この辺りはやはり予算をかけられないと拘れるところではないから、商業映画ではサボりがちなのだ。
『パラサイト 半地下の家族』では、あの半地下の住居とその周りの住宅(大雨で洪水になっている区域)は全部セットで作りこんでしまうこだわり度だったが、本作はどうだろうか?
ぜひ観てどこまでがCGかを見分けるチャレンジをしていただきたい。

あと、日本のアクションと違う点があるとすれば、やっぱり軍役があるからどのキャストも銃の扱いにそこまでぎこちなさがないというところだろうか。
途中からリボルバーだけでなくショットガンやらM4やらがどんどん出てきてぶっ放されるが、日本映画に銃が出てきたときのあの非日常感はなく、うまく溶け込んでいる。
国ごとの習慣の違いというか、国民に何が馴染んでいて何が馴染んでいないかが素直に表れてしまうのはリアルだ。

NETFLIXの脅威
ちなみに本作は今年の2月に開催されたベルリン映画祭のマーケットで、プロデューサーがNETFLIXと各国の配給会社へ同時に交渉を進めてしまったらしく、なかなかトラブルがあったらしい。
結局NETFLIXが勝ち取ったから配信されているが、これからこういう配給会社とNETFLIXが映画の取りあいを続けていけば予算が潤沢なNETFLIXが勝ち残る可能性が高い。
面白い映画を独占してさらにユーザー数を増やしていくとなれば、また予算が増え、と正のループが生まれて、遂には売れそうな映画は全部NETFLIXになってしまいそうだ。
業界内の噂によるとNETFLIXが映画館を作ろうとしているやら、映画祭を始めようとしているやら、本格的に従来の映画業界に踏み込んでくる可能性が高い。
映画業界の悪い習慣を壊して、残すべき習慣は残したまま、より良い方向へ向かってくれることを願っている。

そんな金がありゃ映画館に映画を観に行って!