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『華氏119』トランプに終わりは来るか?

『華氏119』 2018年
監督・構成:マイケル・ムーア
製作:マイケル・ムーア、カール・ディール、メーガン・オハラ
撮影:ジェイミー・ロイ、ルーク・ガイスビューラー
編集:ダグ・エイベル、パブロ・プロエンザ
キャスト:マイケル・ムーア、ドナルド・トランプ+いろんなアメリカの人々
上映時間:128min

あらすじ
2016年11月9日、大方の予想を裏切る大ショックが世界を襲った。なんとドナルド・トランプがヒラリー・クリントンを倒してアメリカ大統領になってしまったのだ。誰もがヒラリーの当選を予想している中、監督のマイケル・ムーアは各選挙区の雰囲気から、支持はしないがトランプが当選するだろうと予言していた。悪夢は2016/11/9から始まったのか?
いや、気づかぬうちから悪夢は始まっていたのだ。

今年の目玉イベントの予習に
2020年の目玉イベントと言えば何だろうか?
東京オリンピックはなくなって、都知事選も特に盛り上がらず終わってしまった今、もう残っている特大イベントはアメリカ大統領選しかない。
日本人にとっては別に興味のないことかもしれないが(なんせ都知事選でさえ50%ちょいしか投票率がないのだから)、今年の大統領選は世界のこの先4年間を大きく左右する選挙になること間違いない。
今はまったく興味のない人にもぜひその動向を追っていただきたいから、まず前回の2016年大統領選がどんなものだったかを知るのに最適な本作『華氏119』をオススメする。
2016年の大統領選がどのような情勢で当日を迎えたのかから、なぜトランプが当選したのか、いったいいつからトランプ当選の兆候はアメリカを漂っていたのか、銃乱射事件以降の若者のデモの裏側など、アメリカの2010年代を駆け巡るように映画は構成されている。
アメリカについてなんて何も知らないという人でも、とりあえず理解はできるよう親切に創られているから安心してほしい。
しかし、一つだけ注意してほしいのはこの映画はあくまでマイケル・ムーアの思想の元で構成されているということ。
編集の力は強大で、編集の順番によってはものごとの見え方は全く違ってくるから、映画をピュアに鵜呑みにはせず、気になったことは自分で調べるようにしていただくのがベストだ。

右よりの方々へ
マイケル・ムーアは立場的にはかなり左よりではあるから、右よりの人からすれば本作は観てられるものではないかもしれない。
でも、考えてほしい。
彼のスタイルは完全にジャーナリズム的に映画を創るところにあるから、この映画に映っている映像は全て本物なのだ。(もちろん編集や構成には監督の意図が多分に含まれるが)
そしてそれが本物だとするならば、トランプが人種差別主義的な発言や行動をしてるのは明らかだし、ミシガン州の共和党知事が水質汚染を隠蔽していることも明らかで、民主党のオバマ大統領がミシガン州の問題に何もできなかったことも明らかだ。
その上で共和党のトランプを支持するというのならば、あなたは人種差別主義を容認することになるし、政治の腐敗を赦すことになるとマイケル・ムーアは語りかける。
トランプはコロナ禍でTwitterに「これこそ我々が分断を必要とする理由だ」とツイートをした。
トランプにとってはアメリカが分断されたほうが自分が選挙に当選できるから良いというわけだが、人種による分断、国による分断、貧富による分断は本当に世界を幸せにするだろうか?
香港が中国の手に落ちた今、世界の民主主義を主導するはずのアメリカがどうなるのか、11月は絶対に目を離すべきではない。

みんな興味がない?
ちなみにこれだけの作品がアメリカで665.4万ドルだったという、日本円にして7億くらいだろうか?
アメリカの映画代は平均して1000円ほどだから、単純に計算すれば映画館まで足を運んだ人は70万人しかいないことになる
人口が約3.3億であることを考えれば、なんと全国民の内0.2%にしかあたらない。
2018年公開だから、大統領選からは既に2年経過している。
トランプの無茶苦茶さはもう既に世の中に露見していた時だ。
それでたったの0.2%、これをどうとらえるべきか。
当然日本だって同じだ。
民主主義が滅びるのは独裁者が台頭した時ではない。
市民が政治を諦めた時である。
マイケル・ムーアの訴えを胸に、日本も現状維持で進むわけにはいかない。

なんだか最近ドキュメンタリーばかり観ているが、こうやって見比べるとドキュメンタリーの中でもいろんなタイプ分けができそうだなと感じた。
いずれ書くかもしれない。

そんな金がありゃ映画館に映画を観に行って!