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ちいさなわたしの告白

冷蔵庫にある鶏の玉子。これからひよこが生まれないだろうかと思ったことがある。
ひよこは卵から生まれる。この卵と冷蔵庫の玉子の何が違うのだろうと子どもながらに思った。親に聞いてもきっと答えは返ってこない。なら、辛抱強く冷蔵庫の玉子を育ててみようと思った。
冷蔵庫から玉子を1つ、棚からタオルを数枚拝借する。自室の引き出しの奥にたまごスペースをつくり、そっとしてみた。

その後の流れは皆さんのご想像通りだ。
玉子は引き出しの中で腐った。ひどい臭いがする。流石にまずいと思い、ビニール袋に玉子を入れて捨てて、タオルは手洗いして洗濯機に入れた。
恐らく母にはバレていなかったと思う。
今思えば、食材を無駄にしたとは思っている。当時はだめかあ…としか思わなかった。母にバレたらガチで怒られていただろう。

また別の日、新たなことを思いついた。りんごを育てたら何かになるかもしれないと。
土に種や苗を植えるわけではない。私の脳内ではりんごから何か別の生き物が生まれていた。

玉子で学ばず、りんごにも引き出しの奥にスペースをつくった。そっと置いておいて、たまに開いてはじっと見守った。
けれども、何かが生まれるわけでもなく、端っこからじわじわと腐り、引き出しにやばい色が付き始めた。
こりゃだめだと思い、また母に隠れてひっそりと捨てた。

大人になった今ならわかることだが、りんごからは何かは生まれない。
これが幼少期の私である。


ちいさなわたしの探求が止みませんように
May the wind be ever at your back

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