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「自分都合な思考」との向き合い方

今あなたは正しい判断ができていますか?

はじめまして。SOMPOホールディングスでUXデザイナー、サービスデザイナーとしてリサーチ&課題抽出や体験設計などを担当している小幡です。SOMPOグループ内の新しいサービスの企画支援やPoCなどを実施しています。

さて、突然ですが、みなさんは目の前の事実や事象をありのままに受け入れて物事を客観的に判断することは得意でしょうか?ここでいう「ありのまま」とは「事実を捻じ曲げない」ことで、「客観的に判断」とは「自身、自社を忖度しない意思決定」とします。

普段僕はデザイナーという立場で、さまざまな事業部から「今ある事業課題(社会課題)から我々はこんなことをしたいがどうか?」という相談を受け、僕も含めデザインチーム内メンバーが各種リサーチやワークなどを通して、「顧客の課題が何なのか?」「自分たちが仮説として持っていた課題は本当にあるのか?」「課題に対して我々は何ができる(すべき)か?」を一緒になってうんうん考えて、新しい価値・アップデートした価値を世の中に実装すべく日々奮闘しています。

これらの活動は会社として(個人としても)まだやったことのない新しいことにチャレンジする活動であり、いわば未開拓の地を、目の前に散らばるヒントを探し集め、そのヒントから次の方向を決め、目的地に到達することをゴールにしています。今まで歩いたことのないルート探しと到達したことのないゴールなので、自分たちの中には判断する基準や材料がないことが多々あります。

それはつまり「今までの経験」や「今までの感覚」を基準とした判断が通用しないことを意味し、その基準で判断することは、既存の視点でしか物事を考えることができず新しいアイデアを拡げたりする可能性を狭めることにもつながると考えています。

例えば、あらかじめ考えたアイデア案(自分たちは成功するだろうと思っている)のコンセプト検証を行なった時に、否定的(だが、ヒントになる)な意見に対して「これはイレギュラーな意見である(思っていた答えと違う)」「価値が受け入れられないのは説明の仕方が不十分だったんだろう」と元々の路線から外れないような思考の元、軽視して、自分たちの都合のいい意見だけピックアップしてそのまま進めてしまう…みたいなことです。

これは極端な例ですが、大なり小なりみなさんも日々の判断の中でそのようになっていることはないでしょうか?

目の前の事実を早々にある思考によってフィルタリングして除外してしまい、「ありのまま受け入れる」ことができず、また同時に「客観的に判断」できていない例だと思います。もちろん否定的な意見を全て受け入れることが正しいというわけではなく、きちんと精査は必要ですが、先ほどの話でいう目の前に散らばるヒントも拾わずに「頭の中の理想の地図(自分にとって都合がいい)」をもとに進むことになるので、現実に即さない「このルートだったらいいな」という自分にとって都合のいいルートを通って未開拓の地を進むようなものだと思います。

一昔前には存在してなかった(存在してたけど表出していなかった?)多種多様な価値観が日々顕在化&複雑化している現在、UXやCXといわれるような自社のサービスやプロダクトを使ってくれる人の体験をより良くアップデートしていくことにも、DXと言われるような変革を推進していくことにも、過去の模範解答はありません。その中で、「目の前のヒントを元にどの方向に進み、どのルートを通るべきか」については正確かつ客観的に判断していくことがとても重要であると思います。

こういった判断を邪魔してくるある思考のことを僕は「自分都合な思考」と呼んで意識的に認識したうえで、必要に応じて思考を切り替えるようにしています。

なぜ人は「自分都合な思考」をしてしまうのか

先ほどの例は分かりやすく表現したものですが、こういった「ありのまま受け入れること」「客観的な判断」は、実は多くの人にとってものすごく難しいことだと思っています。
なぜならこの自分都合な思考

  • 自分の判断が間違っていたことを簡単には認められないし、

  • 自分に都合の悪いことからは目を背けたくなるし、

  • 自分が正しいと思いたい

という、ある意味人として当たり前の感覚と密接して関わっているからです。


そりゃそうですよね。誰だって(特に年齢を重ねるほど)自分の過ちを認めることは簡単にはできないし、都合の悪いことから逃げられるなら逃げるに越したことはないです。それに、自分が間違ってると思っていたら自信を喪失してしまいます。

ここからはこの自分都合な思考がどんなものなのか、なぜそこに囚われてしまうのかを深掘っていきたいと思います。

自分都合な思考は「自分は(我々は)正しい」がスタート地点

僕が考える自分都合な思考の大きな特徴として以下が挙げられます。

  • どうすれば自分の考えが正しいと信じられるか?というところからスタートしている
    そのため自分の考えを強固にするための素材のみを探し、それ以外には目を向けなくなる

  • 事実ではあってほしくない(自分の考えの反対のもの)時に「どうしてもこれを信じなくてはならないのか?」と考え、言い訳を探そうとする
    自分の考えが正しいと思っているので、それを否定するものに関しては「信じない」「否定する」から入ってしまう

  • この思考の最中は「自分が正しいということを否定する事実」は脅威と感じる
    望ましくない・できるだけ排除したいと考える

  • 近視眼的(目先のものしか視えていない)に、やや偏って物事を捉え、判断してしまう

自分都合な思考に囚われるのは「守りの思考」であるから

この自分都合な思考は「間違いを認めたくない・都合が悪いことから逃げたい・自分は正しいと思いたい」という自分自身を守るための思考であり、それには以下のようなメリットがあります。

  • 精神的なメリットがある(心地いい・安心する、自尊心を保てる、やる気が出る)

    1. 仕事がうまくいかなかったら「依頼の仕方が悪い」「誰がやってもうまくいかない」などと考えることで自分を納得させる

    2. 自分ができないのは「やったことないからしょうがない」と考え、安心する

    3. 「今自分は努力しているから大丈夫」と根拠はない楽観主義にすがりやる気を出す

  • コミュニケーション上のメリットがある(説得力が増す、帰属感を感じる)

    1. 自社の製品が素晴らしいと思っている人の営業トークの方が刺さりやすい(長所を強調し、短所は言わない)。マルチ商法とかこの典型….

    2. 今流行りの考えに乗っかったり、常識や慣習に対して疑わずにそのまま受け入れることで、みんなと一緒であるという帰属感を感じることができる

いかがでしょうか?ご自身を振り返ってみてこのような思考メリット(特に精神的メリット)を感じたことはないでしょうか?と同時に、ついついこの思考に囚われてしまうことも自分自身を守るためにはある意味仕方がないことだということもお分かり頂けるかと思います。

かくいう僕自身も振り返ってみて、数多く該当することがあります…。
これは日本的な社会・集団で悪目立ちしないように振る舞うために意図せずに身についてしまった、ある意味習得を避けられない思考ではあります。

自分都合な思考から脱却するために

自分都合な思考がどんなものかはなんとなくイメージしていただいたかと思いますが、ではそこから脱却するってどんな思考なの?どうすれば脱却できるの?という問いの答えに近づくヒントを記していきたいと思います。(かくいう自分も常にこの思考と脳内バトルしてるので、日々格闘中です)

自分都合な思考の逆の思考とは

  • 「自分は正しいだろうか?」に立ち返る
    👉今目の前にある(チームや自分が出している)答えに対してやみくもに誰かが言ってるから「正しいだろう」とすぐに受け入れずに「本当だろうか?」から入る
    👉一見正しそうでもっともらしい答えであってもそれは自分たちの「自分都合な思考」によって導き出されたものではないか?と自分(たち)に問いを立てる
    👉この思考の最中は、自分が正しいということを否定する事実は「嬉しいこと・望ましいこと」として受け止める
    👉俯瞰的(目先の部分だけでなく過去や将来、関係性を視る)に、全体を見渡しながら物事を捉え、判断する

  • 新しい事実や発見に対して(チームや自分の)答えに無理やり紐付けない
    👉特に検証時、分析時には元の答えを変えても問題ない(自分都合な解釈をしない)という前提のもと事実をありのまま検証・分析を行う。

自分都合な思考から脱却するヒント(今から始められる思考実験)

とどのつまりは自分(たち)の中に「自分都合な思考」がないかを疑い、認識できさえすればまずは良いということかなと思っています。自分(たち)の中の自分都合な思考がどこに存在するのかが分かれば「あー、これはちょっと自分たちに都合が良く考え過ぎているからユーザーの声を聞いてみよう」とか「受容性のこの意見はもしかしたら企画を方向転換するチャンスかも」という風に一旦立ち止まって考えるきっかけを作れるからです。

そのためのおすすめの方法として、簡単な3つの思考実験をご紹介したいと思います。ちなみに思考実験とは読んで字の如く「思考上で行う実験」なので、自分一人でいつでも行えます。特に大きな組織に属している人ほど自分(たち)の意見やアイデアを客観的に見れるようになる効果があると思います。

  • あなたがもし部外者だったら?
    恐らくこの記事を読んでくださっている多くの方がどこかの会社のどこかの部署の誰かのチームに属しているかと思います。今目の前のあなたの意見や企画・アイデアを全く別の会社(例えば競合会社)の人が見たらどのような意見を持ちそうでしょうか?その立場に立っていても、企画やアイデアは魅力的でやるべきことに値しますか?

  • 上司や同僚など周囲の意見が変わったとしたら?
    例えば、今進めようとしている企画やアイデアがあったとして、恐らくその企画には1人以上の上司や同僚が賛同してくれていると思います。もしもその上司や同僚が意見を180度変えたとしてもあなたは企画を推し進めるでしょうか?意見を変えた上司や同僚と議論になった時に堂々と主張することができそうでしょうか?

  • 今のままだと失敗すると仮定してみたら?
    前述のように今進めている企画やアイデアがあったとして、このまま行ったら失敗する前提であえて考えてみます。どこが失敗するのか、何がいけなかったのか、思い当たる点が何か出てきたとしたら、変化を恐れて合理的な判断ができていないかもしれません。

まとめ

  • わたしたちは無意識のうちに「自分都合な思考」のもと色々な判断を日々している

  • 「自分都合な思考」は決して悪いことではなく、守りには向いている

  • ただし新しいことをしようとしている状況においては足枷になりうる

  • その思考脱却においてまず大事なのは自分(たちの)中の「自分都合な思考」を認識すること

  • そのきっかけとして簡単な思考実験がおすすめ

以上、今回は「自分都合な思考」の特徴とそれから脱却するための方法についてまとめてみました。みなさんの日々の業務・生活における思考・判断のヒントになれれば幸いです。