ナナメの夕暮れ 【somo somo! ブックス】

著者: 若林 正恭  出版社: 文藝春秋

 私は20代の頃、よくひとり旅をしていた。旅先で知り合う人たちの交流が楽しく、何度もひとり旅をしていたが、最初の理由は「自分探し」だったように思う。見つかるはずもない「自分」を探す旅。そう思うとなぜ「自分探し」をしたのだろうか。「自分に自信が持てず、他人を羨む心から抜け出したかった」。そうではないかと思う。その時期に本書に出会っていたら、私の心により響いていたのではないかと思う。
 本書の冒頭と終盤に「自分探し」について書かれている。本書では自分を探す理由を、「自分がよくわからなかったから」としている。よくわからないから、いろんな疑問をもってしまい、ネガティブになる。これでは、卑屈で他人を批判しまくるような人になると思うが著者は違う。ネイティブ・ネガティブならではの前の向いた人生を歩んでいくのである。その考え方が非常に心に響く。『自分の行きづらさの原因のほとんどが、他人の否定的な視線への恐怖。それを消すためには自分の他人の否定的な姿勢をやめるしかない』や『世界の見え方は思い込みにすぎない』など様々な考え方を提示してくれる。なかでも印象的だったのは、『外のジャッジが正しいとは限らないから。』という言葉。時に他人から否定的な言葉を浴びる。しかし、その言葉たちが正しいとは限らない。他人の意見も聞くことも非常に大事ではあるが、正しいとも限らない心ない言葉に心を痛める必要なんてないんだ!と、心が非常にすっきりした。
 著者はお笑い芸人オードリーの若林正恭さん。お笑い芸人南海キャンディーズ山里亮太さんとも通じるが、ネガティブな心を燃料にしてエネルギーとする才能にすぐれている。一見、ネガティブは悪いものに捉えられる。しかし、『世界の見え方が思い込みにすぎない』とある通り、思い込み方次第で、大きく人生を変えられるのだと思ってしまう。

written by 左利きは僕のあこがれ

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?