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アイドル活休備忘録

美容院に行ったとき ネイルサロンに行ったとき 人とご飯を食べているとき 初めましての人に会ったとき 久しぶりの人に会ったとき けっこうな高確率で「休みはあるんですか?」「休みの日は何してるんですか?」という話題になる それは場を繋いだり親しくなったりするための典型的かつ定番の話題であると同時に わたしが『アイドル』というちょっと特殊な場所に立っているからな気がしている

ただわたしは そういうときに うまく話せた試しがない

休みは、うーん、連休はあんまりないかもしれないですね、あっ、でもたいてい夕方とか夜から稼働なので、休みがないわけじゃないです、ライブが月に20本くらいあって、あはは、休みの日は、なんかオンラインのコンテンツやったり、あとは、えーっと、何してるんだろう、何してたっけ、本読んだりとか、あとは、ええと、でも大体お仕事に関係することしてるかも、えっでも全然平気なんですよ、楽しいし、慣れたし、逆に休みの日になるとどうしていいか分かんなくなっちゃうんですよね、


2019年7月にデビューしてから 感染症の自粛期間ですらもどうにか人を楽しませよう、そして自分たちのことを知ってもらおうと SNSや動画投稿 オンライン特典会を休むことなく続けて そういえばわたしたちは この2022年9月まで 歩み続けるどころか走り続けてきたように思う

だから 大変じゃない、と言ったらそれはとんでもない嘘になるけれど 慣れた、というのは全く嘘ではなくて 休みの日になるとどうしていいか分からなくなる、というのも紛れもなく本当のことである


そんななか 2022年9月10日の活動休止前ラストライブをもって わたしたちSOMOSOMOというグループは無期限活動休止期間に入ってしまった

無期限活動休止というのは珍しい話ではないと思うのだけれど 無期限活動休止をしたバンドやアイドルの大半は メンバーの脱退 現体制終了、グループ名の変更 最悪の場合そのまま活動終了 解散なんてのもある

ラストライブのMCでもお話した通り わたしたちの活動休止はメンバー全員とプロデューサーでたくさんの言葉を交わして たくさんの時間をかけて 全員が納得するかたちで決めたことで メンバーは誰も辞めないし プロデューサーも変わらない 名前も変わらない、つまりいちばん分かりやすく言うと充電期間というわけで けっこう頑張ってきたので一旦休憩してすこし長めの夏休みをいただいて 落ち着いて成長してまたみんなで帰ってきます!という話

でもまあ いまは一旦とりあえずお休みの期間で みんなで共有しているGoogleカレンダーに入っている予定は現状週にひとつくらい あんなにもみっちり埋まっていたはずがすっからかん 厳密に言えば活動再開に向けて何にも進んでいないわけではないのだけれど いまのところ次にメンバー全員とプロデューサーと顔を合わせるのはすこしさきのことになりそうだということもあり

つまり『どうしていいか分からなくなる』期間なのである


わたしはどうにかこうにかこのひとりの時間を 充実させなければという義務感と向上心に駆られている 寂しさも時間も なにも無駄にしないと決めている

過去一の曲数である27曲をライブで披露してぼろぼろになって ハイカロリーとすこしのアルコールを摂取してたくさん笑って 汗とプレゼントで重たくなったキャリーケースをごろごろ転がして家に着いたあと だらだらとびたびたと余韻に浸った深夜
眠気の向こう側の冴えた目でちゃんとメイクを落として ちゃんとお風呂に入って スキンケアもヘアケアもちゃんとしたあと 自分の部屋のベッドにたどり着いたころには外はもう白くて 窓際に寄りかかってまたSNSを徘徊しながら 目が覚めたときにやっと自分が眠たかったことに気がついたのは11日の13時だった

閉館まで1時間を切っていますがよろしいですか、と受付で言われて え、と思いながらも静かな空間に似合うようにわたしは平静を装って 時計を確認することなく 大丈夫です、と答えた チケットを受け取ったあとふと気が付いた受付の後ろの壁にある時計を見て 大丈夫、まだあと40分ある、と思った
詳しい知識なんてなんにも持っていないのだけれど 美術館とか 資料館とか 博物館とか そういうものに魅力を感じる わたしの通らない小さな声でも隣にいる人にぜったいに届く閑静な空間 高い天井の空調の音だけが聞こえる 自分が随分と神聖な生き方をしているような錯覚が好きなのかもしれない
絵を見た すごく昔のやつとか 最近のやつとか 海外のやつとか 日本のやつとか なんの知識も無いわたしですらもじっと見つめていたくなるのが不思議な魅力だった つぎは恐竜が見たい 骨じゃないやつ あと できれば動くやつ

何もしていないとき 誰にも会わない日 わたしの脳みそはほんのすこし 悲しかったり苦しかったりする方向に傾いてしまいがちな性質がある そういうときわたしはそのどろどろに身を委ねるときもあるのだけれど 最近は体を動かすようにしている
ぜったいに誰にも会いたくないような 格好悪くててきとうなトレーニングウェアで ストレッチをして 筋トレをして ジムで1時間まるっとひたすら歩き続けるのがいつものコース 歩き始めたときは上がる心拍数に不安になるのだけれど 気が付いたらイヤホンから流し込まれるだいすきな音楽に集中力が傾いている そんな自分に安心する
アイドルを辞めると太る、ってよく聞く わたしはまだ辞めてないし辞めるつもりもないし 太りたくないなあ 

小学生のわたしにとっては随分な遠出で 何回行ってもわくわくしていたショッピングモールが近くなった 久しぶりに乗った自転車はギアを一番重たくしても軽かった これを遠く重く感じるようになったら嫌だなあと思った
開店時間ちょうどに着くように母親と自転車を走らせる休日がいつも楽しみだったし 中学校の入学式の前日に初めてともだちとプリクラを撮った 高校生の小雨の夜 その近くのコンビニの前でラジオを流して BUMP OF CHICKENの新曲を聴きながらいちばん安いアイスを食べて そのあと近くの公園に行ってコンビニで買った花火をしたりもした
大人になったいまもなんだかずっときらきらして感じるのは その思い出たちのおかげだと思いながら 切らしたままずっと買い損ねていたヘアオイルとファンデーションを買ってまた自転車に乗った

プロデューサー同士が仲が良くて メンバー同士も会うたびに仲良くなる まるで家族ぐるみで仲のいいともだちみたいなグループのライブを観た それはそれはあまりにもすてきすぎるライブで 写真を撮るのは勿体無い気がして その瞬間を目に焼き付けていた こんなにすてきなひとたちが仲良くしてくれているのが奇跡みたいでしあわせな気持ちになった アイドルが好きだ、と改めて思った

わたしはすこし前まで 自分は本を読むのが苦手だと思っていた 作家の名前を五十音順で一冊ずつ順番に読んでいこうと決めたのもそれが理由だった
のだけれど 『い』で伊坂幸太郎に出会ってしまって 五十音中がなかなか進まずにいる じわじわと進めていまはさ行まで来ているのだけれど 次の五十音に進む前に伊坂幸太郎の作品が読みたくなってしまうのだ
映画『ブレット・トレイン』の日本での公開に向けて読み進めていた原作『マリアビートル』残りページ数が少なくなるに連れて これはまさか、とか やられた!とかいう気持ちにさせてくるのがらしくて最高だった
『ブレット・トレイン』予告編をちらりと観たのだけれど 想像以上にアクションっぽくてどきどきしている わたしが小さい頃からずっと好きで馴染みがある仮面ライダーのアクションシーンは大好きなのだけれど 生身の人間のアクションシーンはどきどきひやひやしてしまう(いままで観た映画『ミスミソウ』『キャラクター』に影響されているからだけかもしれないが)

今日は黒木渚の『檸檬の棘』を読んで どきどきして ひりひりしたりもしていた このことはまたいつかゆっくり



忙しいとか 大変だとか 逃げる理由にできる事情はもういまはどこにもないから ちゃんと向き合ってみようと思う これがなきゃ生きていけない、って それはとても美しいことだと思うけれど それがなくても生きなきゃいけない日がある いまのわたしは毎日がそれだ 明日は何をして生きようか毎日考えて行動して生きている
一瞬くらいは無駄にしてしまっても 一日たりとも無駄にはしたくない 無駄にしてしまったことにちゃんと気付けたら もう次の一瞬は無駄にしなくて済むかもしれない 「休みの日は何をしてるんですか?」をもっとはっきり答えられるようになるかもしれない


明日は何を着て どんなメイクをして 何をして生きてみようかなあ

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