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【コラム】南チロルの風:12

2001年の春からお世話になり始めたサドレル。そこでの私の仕事はワインをサービスすること。いわゆるソムリエの仕事と必要に応じてお皿を出し下げするカメリエーレの仕事を任されました。

「イタリアにはワインを勉強しに来ました!」

面接の時に大きい口を叩いてしまった山下少年は、ミラモンティで身につけたサービススタイルと本で得た知識のみで臨むことになりました。

しかしどんなに注ぎ方がうまくなっても、デキャンタージュができても、リストに載っているワインをテーブルまで持っていくまでの準備が必要です。得た知識をどのように説明するか。それはつまり言葉の問題です。

言葉の壁

ミラモンティ・ラルトロではフランチェスコやウンベルトがワインの説明しているのを、他の仕事をしながら聞いていました。しかしワインの知識をアウトプットする=お客様に説明するという機会がほとんどありませんでした。そのような状況でサドレルでワインを振る舞っている時、「カメリエーレ!」とあるお客様から呼び止められました。

「このデザートワインは何のブドウ品種で、どのような味わいなの?」

言葉の内容は理解できても、お客様が知りたい内容が答えられない。そんな悔しい経験したのです。理由は単純で、様々なワインの表現用語を自分の中で解釈し、そして自分の言葉で伝えるという練習していなかったからでした。

「あんな悔しい思いはもうしたくない!」


この頃、イタリアに来て約1年が過ぎていましたが、ワインの知識や言葉の問題など課題がたくさんありました。もちろん当時はソムリエの資格すら持っていません。というような状況で私が行ったのは、ただひたすらインプットです。

まず始めにこのレストランで扱っているワインリストの中身を覚えていきました。販売する商品を知らなければ顧客のニーズには答えられません。

このワインにはどのブドウ品種が使われているのか?どこの街の近くにある生産者なのか?一つ一つ確認をしてワインリスト全体の流れを覚えます。そしてアルファベットのタブが付いた小さな手帳にそれらの細かな情報を書き写し、いつでもその情報が取り出せるようにしておきました。ちなみにその手帳はボロボロになった今でも現役で活躍しています。

次にワイン表現用語です。

日本語やイタリア語で書かれたワイン教材をもとに、色合い、香り、味わいの表現用語を書き写し、暗記をします。お風呂に入りながら、覚えた表現でシュミレーションをしてみたりもしました。


より会話を弾ませるために語学学校へ

最後にやはり必須のイタリア語の日常会話です。この頃から語学学校というものに通い始めました。午前中から昼過ぎにかけての2時間コースを受け始め、文法から会話までみっちり勉強しました。

入学して初めて、ミラモンティで過ごした1年間、本当に語学を勉強しなかったということを実感しました。ワインやサービスの情報ばかり覚えて、職場で使うイタリア語以外の言葉は二の次三の次。当時の自分は言葉に不便を感じるとは思っていませんでしたが、これほど文法を知らなかったのかと恥ずかしくなりました。ちょっと喋ることができるという理由で振り分けられたクラスで
「”食べる”という動詞の条件法はマサ、言える?」

と先生に聞かれて、

「え、条件法ですか。マンジャーレ?」

条件法という言葉の意味すら理解しておらず、

「さあ、皆さんで言ってみましょう。マンジェレイ・・マンジェレスティ・・・・」


確実にクラスのお荷物です。クラスメートがそれを言い終わるまでの無言の寂しさときたら他に言いようがありません。

私が参加しなかった前コースでの必修分野だったようで、先生から「これをすぐ覚えなさい」という一言を頂きました。

このようにしてワイン用語に加えて文法もインプットしていきます。しかし幸運だったのは昼間勉強したことを夜仕事場で試すことができる。このようなインプットとアウトプットを同時に行える環境は語学を吸収するのに最高の場所でした。しかし仕事が終わった後、翌日の学校の宿題もしっかりとこなさなければならなかったことは言うまでもありません・・・・

次回は給料日前の家での生活についてお話しします。

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