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Unityまんがパンフを作った話【2010年代のUnityイベントマネージャー回顧録 vol.11】

『まんがでわかるゲーム開発ソフトUnity』というパンフレットをご存知の方がいたらちょっと嬉しいのですが、今回はその制作の楽屋裏話を書いてみようと思います。

『まんがでわかるゲーム開発ソフトUnity』

このパンフは、中高生向けのゲーム開発大会「Unityユースクリエイターカップ(旧Unityインターハイ」のプロジェクトの中で企画・制作されました。中高生や小学生のUnityユーザーが増えていく・増やしていく中で、そうした若年層にもUnityやゲーム開発がどんなものか知らしめるため……というのは建前で、真の目的は彼ら学生ゲームクリエイターの後ろにいらっしゃるご家族や学校関係者の方に、ゲーム開発とは何なのかを説明するために制作しました。

元々は大会参加者やUnity初心者向けに執筆した「Unityビギナーズブログ(旧Unityインターハイブログ)」の存在が先にありました。

大会参加者が少しずつ増える一方で、何とか出来上がったのであろうゲームが、残念ながら快適にプレイできるバランスではなかったり、完成する前に心が折れてしまった方も多くいて、少しでも力になれればという思いでブログを執筆することにしたんですね。そのときに作ったキャラクターが「そめ先生」と「たにっこ」です。

僕の描いた「そめ先生」初期ラフスケッチ
「たにっこ」のラフスケッチ。自分より他人の方が描きやすいw

(言うまでもなく)僕自身と同僚の谷川さんをモデルにしていて、谷川さんは顔と体格が大らかなイメージ、僕はせかせかしてるイメージで手書きラフを描いてデザイナーさんに発注して仕上げてもらいました。

デザイナーさんに描いていただいた初期のラフ。うーん、さすが本職

技術者でもない僕が技術ブログを書くというのは一見無謀ではあったのですが、都合が良い面もありました。Unity Japanのエンジニアが記事を書くとなれば、それは公式の情報発信になるのでミスや誤情報のないよう配慮する必要が出てきます。炎上まではいかなくとも「◯◯さん、この前の記事で間違ったこと書いてましたよね~w」という目で見られるのは本職のエンジニアからするとご自身の沽券に関わるわけです。

中の人 x 2

一方で、「Unity初心者だけど頑張って書くので間違いがあっても温かい目で見てやってね!」というキャラクターに言わせることで、そうした後ろ指を差されるような自体を吸収できるものにすることができました。

また、これは僕に限らないと思うのですが「中の人」の思い入れやモチベーションを強く底上げする効果があります。こういう寸劇やなりきりが好きな方で、お仕事で企画するチャンスがあったら検討してみてくださいw

ただ欠点もあって、それは属人性が強すぎることですね。VTuberくらい振り切った仕事なら別として、色々な仕事の中の1つとしてやるには替えが効かなくなるリスクがあります。実際、翌年以降は色々な事情からブログを継続することができなくて苦しい思いをしました。もうちょっとフラットでクセのないアセットストアの配管工みたいなニュートラルキャラなら都合が良かったのかもしれませんが、多くを語らせるとやはり属人性が強くなります。

ちなみに、当時参考にしたのは「スーパーマリオメーカーコース作成講座 ましことヤマムラ」です。面白い演出も多数表現されていて、めちゃくちゃ楽しいものになってる解説コーナーです。今見てもすごい!

自分のブログ活動は半ば独断で進めさせてもらえたのですが、幸い社内の反応も(苦笑いぎみながらw)概ね良く、作ったキャラクターを有効活用する余地が生まれて、冒頭のパンフを制作したというわけです。

スタンドバナーやステッカーの他、Unityのお役立ちショートカットキーが書かれたうちわ、下敷きなども制作し、大会やゲームジャムイベント等で配布しました。グッズはキャラクターがあると格段に作りやすいですね

大会を運営していく中で参加者や彼らのご両親と話す機会があったのですが、ほとんどの場合、学生クリエイターのご家族はゲーム開発がどういうものなのか、子供のつくったゲームの何が優れているのか、そもそも子供にゲーム開発を続けさせていいのかよくわかっていなかったんです。

「ウチの子がPCにかじりついてゲームづくり?をずっとやっている、これは良いことなんでしょうか?」という感じです。これは何とかメッセージを伝えねば……ということが制作のきっかけでした。

当初は進研ゼミ漫画のような20-30Pくらいのショートストーリーを考えていたのですが、同僚からの2Pくらいの短編を繰り返した方が話を作りやすいのではという良アドバイスと、好きだった「ドラえもん科学ワールド」の構成を参考にして漫画パートと解説パートが交互する構成で作ることになりました。

伝えたいことを各章ごとに整理して、解説パートは自分で書き、漫画パートは同僚のntnyさんの紹介でイラストレーターのhounoriさんに依頼することにしました。

ワタクシの雑なラフ(すみません…)プロフィール文はちゃんと用意しました…
劇的なビフォーアフターでございます。ありがとうございますありがとうございます
Unityというより「ゲーム開発」を意識して構成しました

僕の「こんな感じの話」というアイデアや、箇条書きにした「各章での伝えたいこと」をベースに大変面白く仕上げていただけました。hounoriさんはお題に対するアレンジ力がすごく高く、こちらの意図を繊細に汲み取ってくれました。多少の微調整やリクエスト等はありつつ、漫画はほぼhounoriさん提案のネーム通りにスムーズに進行しました。

パンフは(今のところ)特設ページから自由に閲覧できます
続編(?)の大会ルール補足まんが。こちらで読めます

パンフはイベント等で配布するほか、全国の学校やプログラミングスクールからリクエストがあれば必要数を無償でお送りする形にしました。この座組みは結構手応えがあって、ゲーム開発に興味のある若年層に届けたいUnityと、彼らにゲーム開発の面白さを伝えたいスクール、読み物として面白い漫画パンフをもらえる学生、その後ろにいるご家族や先生……と、皆さんwinの良い形にできていたんじゃないかなと思います。

高校や専門学校、大小様々のプログラミングスクールやCoderDojo等からお申込みがありました

印刷はちょっといい紙(ハイマッキンレーディープマットスノー)を使って、A5サイズ中綴じ24~40Pを1部100~150円くらいで刷りました。1000部で10~15万円くらいですから、販促物の制作費としては安価な方です。パンフやフライヤーって、安く作れるけど簡単に捨てられることも多いんですよね。そんな中では比較的、ちゃんと読まれるものになっていたのではと思います。

このページのGDCの写真を撮るために自腹でGDC旅行に行きましたw この話はまたいずれ…

色々な場面で使いやすかったので、最終的に6~7万部以上を配布・送付したと思います(普通のパンフやフライヤーは1000~5000部くらい)。作るのは大変でしたが、僕が勤務していた頃のUnityのパンフでもっとも刷って配ってを繰り返したのがこの漫画パンフでした。

(記事協力:谷川 敬章)


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