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2023年1月のよんだ みた きいた

 年が明けると何か新しいことをはじめてみたくなる。とはいえ、すぐに三日坊主
となり、早々に目標を軌道修正したり無かったことにすることも常だ。なので、noteに連載のような形で書いてみることで、まさか1回きりで終わりにしないだろうと自分にハッパをかけることにする。

 で、何を書くかというと、「よんだみたきいた」というタイトルで1ヶ月の間に体験したコンテンツとそれに関することを書く。自分語りにならず、自分とコンテンツの間にあるものが書きたい。普段は株式会社ひらくの代表として2週間に一度「オープン社内報」というコラムを書いているのだが、この場ではそうした看板を外して、少し肩の力を抜いておおらかに書いてみたい。

 ここ数年、仕事とプライベートの境界線はどんどんぼやけている。…いや、ぼやけているというのはちょっと違うな。境界線は確かにあるのだが、それが動く。極めて仕事に近いプライベートのこともあれば、明らかに家族とレジャーに来ているのに心の中では仕事をしているようなときもある。なので、僕の境界線は直線ではなくふたつの点で結ばれた、少し遊びのある糸のようなものだ。なので、境界線を気にせずに、この1ヶ月に一回の連載(と呼びたい)がどのように自分に作用するのかも楽しんでみたいと思う。

 ということで、前置きが長くなりましたが、始めてみたいと思います。2023年1月のよんだみたきいた。

よんだ

「よんだ」のゆるルール
・初めて読んだ本であること
・最後まで読み通した本であること
・買った、借りた、紙、電子は気にしない

1.二重作拓也/強さの磨き方 

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 「強さ」という概念を、人類学、歴史、文化芸術など、さまざまな観点から論じていく一冊。二重作さんの思考の跡を追体験するような読書になる。たくさんの引用や転用があってもぼやけないのは、章立ての骨子がとても強いからだ。土台がしっかりしている本は、遊びがあっても崩れない。


2.ジェームズ・クリアー/ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣

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 個人的にメンターにしている篠田真貴子さんが、年始にツイッターで紹介していたので即購入した。面白かった。習慣にしたいことは自分にとってメリットがあるように。習慣にしたくないことは自分に不利益があるように設計する。ただそれだけのことをとにかく丁寧に説明する。これを読んですぐ、スマホからツイッターとFacebookのアプリを削除した。見るときはブラウザから見る。

3.工藤勇一/改革のカリスマ直伝!15歳からのリーダー養成講座

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 週に一度パーソナルトレーニングに通っている。トレーナー兼オーナーが紹介してくれた本。紹介してもらった本はその場ですぐ購入する。そして次会った時に感想を伝える。自分では決して選ばない本だったが、すごく面白かった。シャチョウという立場に肩肘が張っている最近の自分にとても相性の良い、平易な言葉で語られる素直なリーダー論。

4.坂口恭平/継続するコツ

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 坂口恭平の本は、条件反射的に買ってしまう。noteで読めるのに。2.で習慣本を読んだばかりだったので、その共通項が見つかって面白い。継続=幸せ。結果ではなく、状態がすべて。この本で繰り返し論じられるテーマはそれだけなのだが、坂口恭平のリズムは最後まで読ませる。


みた

「みた」のゆるルール
・初めて見た/観たコンテンツであること
・リアルorオンラインは気にしない

1.映画「コペンハーゲンに山を」@イメージシアターフォーラム

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 建築家ビャルケ・インゲルスが手がけたコペンハーゲンのゴミ処理場建て替えのプロジェクトを追ったドキュメンタリー。圧倒される。詳しくはオープン社内報に書いたが、「良い施主であること」「なじみ×斬新の法則」など、示唆に富んでいる。1時間でスパッと終わる短さも良い。

2.歌舞伎「壽 初春大歌舞伎 卯春歌舞伎草紙 弁天娘女男白波」@歌舞伎座

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 もうすぐ5歳になる息子が、去年から歌舞伎にハマっている。きっかけは通っている園で「ねぎぼうずのあさたろう」という絵本を借り、五七調の江戸言葉がピタッときたらしい。そこから、同じ作者が書いた声に出して読みたい日本語シリーズの絵本で、弁天小僧菊之助の名台詞「知らざあ言ってきかせやしょう」に辿り着き、もう300回は読んだ。僕も妻も、3歳と1歳の二人の妹も、みんなそらんじて言えるくらい、染谷家に浸透している。つい半年前まで歌舞伎なんて随分遠い世界だったのに、いまは一番近いエンターテイメントだ。

 Youtubeで何度も見たが、やはり一度は歌舞伎座に連れて行き、リアルな場を体験させてあげたかった。とはいえ、2時間持つかなあとか、周りに迷惑かけちゃうかもなど色々不安があった。一月の演目に弁天小僧を見つけ、もうこれは腹を括って見に行こうと決めた。 
 
 結果、最高だった。ふたりで隅々まで楽しむことができた。舞台は圧倒的にリアルで特に中村勘九郎さんの存在感が素晴らしい。花道がよく見える良い席だったこともあり、見得をじっくり見る。じーーっと舞台を見つめる息子を膝に乗せ、彼の頭越しに舞台を見る。この風景はなるべく忘れたくないな。

 個人的には、舞台左端で木を床に打ち付けて音を出す「ツケ打ち」と呼ばれる方の佇まいが最高にかっこよかった。じっと舞台を見つめタイミングをはかり、音が来た瞬間にカッ!!!と床を打ちつける。その瞬間の顔の表情に迫力がある。これはぜひ生で見てほしい。

3.展示「山中現展 描かれた詩」@群馬県立館林美術館

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 天気がいい日は出かけたくなる。ちょっとドライブに行こうかなんて話してたらあれよあれよと一泊旅行に出かけることに。前橋の白井屋ホテルへ。僕は2度目の宿泊。翌日まっすぐ帰るのもなんなので館林に立ち寄る。まず館林美術館の敷地と建物が素晴らしい。

 そして展示も良かった。存命の版画作家、山中現のキャリアを紹介する展示構成で、特に2000年代に入ってからの印象が強い。一番好きだと思った「ふたつの位置」という作品がいいなと思って検索してみたら、ヤフオクに手が届く価格で出品されていたので即買いしてしまった。

きいた

「きいた」のゆるルール
・初めて聞いた/聴いたコンテンツであること
・購入orサブスクは気にしない

1.永田ジョージ/Crossborder

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 とあるご縁からピアニストの永田ジョージさんと出会った。日常的に顔を合わせる機会がある場合、その人にうまくハマらなかったときちょっと気まずいと勝手に気構えていたのだが、そんな小さな不安は一聴してかき消された。
 
 冒頭の2曲のビートルズのアレンジがまず素晴らしい。オブラディオブラダにこんなに郷愁を感じたことはなかった。ピアノとベースのミニマルな編成だが非常に奥行きがある。ジョニ・ミッチェルのBoth Sides Nowのアレンジも胸に響く。左手のベースラインがじわじわと音階を上げていくところにグッとくる。内省を自然に促す気持ちを落ち着かせる音楽。

2.中西レモン/ひなのいえづと

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 各所で話題になっていたが配信されてなく、なかなか手を出せなかった。CDを買うのは相当に久しぶり。車の中で爆音で聴いていると、町田康のコメントにあるようにたしかに脳みそが溶けてくるような感覚がある。ちょっと流行りのオルタナティブ民謡、と一言で片付けてはいけない気がする。


3.Spoon/Lucifer On the Sofa

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 いまになってギターリフがザクザクしているオルタナティブロックを真剣に聴くなんて。円熟された色気のあるロックに気持ちが上がる。特に2曲目の「The Herdest Cut」のギャオウンギャオウンしているリフには驚いた。エレキギターかっこいいぞ。


4.Nick Drake/Five Leaves Left

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 通っている美容室のオーナーが音楽と映画に詳しく、いつもカットしながらいろんな話をする。彼がニック・ドレイクが好きだと聞き、このアルバムを聴いて驚いた。随分昔に出たコンピレーションアルバムでホセ・ゴンザレスとThe Booksが演奏していた「Celle Song」という大好きな曲の原曲がニック・ドレイクだった。うーん、ちゃんと調べていればもっと早く辿り着けたのに。インディー・フォークの源流のひとつがここにあるんだなといろんなシーンで繰り返し聴いている。飽きない。

 と、ここまで書いて3450文字か。うーん、ちょっと初回から飛ばしすぎている感じもするな。2月はもう少し肩の力を抜いてみたい。最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。



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