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2023年8月のよんだ みた きいた

「つかれたつかれた」と連呼している人には近づかないようにしているが、自分自身がそうなっていることに気がついてぞっとする。なるべく小さな幸せとなるべく小さな不幸せ、なるべくいっぱい集めよう。そんな気持ちがわかるような気がしてくる。ヨラテンゴの追加公演のチケットが取れたこと、買い換えたばかりのiPhoneを落として背面を割ってしまったこと。

お盆に1週間休みを取ったが、子供たちとがちゃがちゃと過ごしているうちに終わってしまった。年を重ねれば重ねるほど、毎日に「自分」が入り込んでくる余地がなくなってくる。家族を養うために仕事をし、家を回すために家事をする。社員から否応なく埋められるカレンダー。月曜日はいつもmtgだらけで、昼食を食べる時間すらない。昔はもっと自分のために使う時間があったが、いまはもうない。健やかでいられる忙しさなら良いのだが、それを超えてくると少しつらい。

よんだ

「よんだ」のゆるルール
・初めて読んだ本であること
・最後まで読み通した本であること
・買った、借りた、紙、電子は気にしない

8月は読み通した本が少なく、「カルチュラル・コンピテンシー」「差し出し方の教室」「ガリバー旅行記」「修身教授録」を少しずつ読んでいる。ただ一冊だけ、購入したその日にぐいぐいと読み耽って読了した本があった。

1.さみしい夜にはペンを持て/古賀史健

古賀さんの本にはとにかく強度がある。何度も読み返したくなる。読み返すたびに発見があり、その都度面白い。「嫌われる勇気」は何度も読んでいる。「取材・執筆・推敲」はまだ2周目だが、きっと一生手放さない。そして、この本はまたアプローチが新しい。中学生に向けての物語なのだ。

僕はこの本を読んでから、毎日の日記にテーマを設ける欄をつくった。8月18日は「人に支えられている」と記し、8月20日は「失敗」と書いた。8月28日のテーマは「月曜日はしんどい」となっている。バカみたいだけど、それでいいのだ。とにかく続けてみようと思っている。

子供たちがもう少し大きくなって、自分である程度物語が読めるようになってきたら、僕はこの本を手渡したいと思う。それほどの強度がある。

みた

「みた」のゆるルール
・初めて見た/観たコンテンツであること
・リアルorオンラインは気にしない
・映画、展示など広義の"みた"

お盆休み、子供たちが寝静まってから妻と小さなPCの画面を覗き込みながら配信された映画を観る。いまの僕たちにはこれくらいしか選択肢がない。後述するが、子供たちを連れた映画館は大失敗に終わった。

1.TAR

しんどかった。しんどいのに目を離せなかった。ずーんと心の芯がしびれるような感覚が続く。描写はこまやかで、ケイト・ブランシェットはひたすら険しく美しい。「もう観たくないけど、また観たい」という矛盾した想いを抱かせるとんでもない作品。「イニシェリン島の精霊」にも通じる、"そりゃないっしょ"があり得てしまう予感と実感。とにかく素晴らしい作品でした。

2.日々是好日

いま、染谷家は家族でお茶を習っている。裏千家だ。お茶の先生から教えてもらいこの映画を観た。雨の日には雨の音を聴くことが、こんなにも当たり前じゃないなんて、と気付かされる。

お茶を習っている時間は、とても集中できる。まったくお手前をできるレベルではないが、すぐに習得できないことをやれるということはとても楽しい。

樹木希林さんの存在感、まろみは一体どうなっているんだろう。

3.スワンソング

Apple TVのみ視聴可能な映画。僕はマハーシャラ・アリのファンなので、この映画は彼の演技を堪能するために見たようなもの。そして少し未来のSFという設定も大好物なので、心地よく視聴した。「HER」「アフター・ヤン」あたりとリンクする。

ナオミ・ハリスの演技も素晴らしいが、なによりマハーシャラ・アリの存在感といったら。本人とクローンの優劣がだんだん入れ替わっていく中盤が見どころ。


4.地図と測量の科学館

夏休み中、とにかく行くところがなくなってしまい、ずっとなんとなく気になっていた地図と測量の科学館に行ってみることに。展示自体はちょっと年長さんを連れていくには難しかったが、売店にあったスーパーボールのがちゃがちゃに魅了された。

とてもとても久しぶりに、まったく無駄なものがほしくなってしまい、2,000円分がちゃがちゃにつかった。10回目に、ようやく欲しかったスーパーボールを手に入れた。宇宙飛行士がふたり、寄り添うように佇むものだ。

5.ステフィン・カリー アンダーレイテッド

これもApple TVでしか視聴できないもの。NBAのスター、ステフィン・カリーのドキュメンタリー。A24が制作している。僕は一昔前のNBAファンだが、ステフィン・カリーの凄さを改めて知ることとなった。レジー・ミラーが冒頭インタビューで出演していてとても懐かしい気持ち。そう、僕が好きだった頃のNBAのシューターは、レジー・ミラーとかレイ・アレンとか。

6.君たちはどう生きるか

家族揃って映画館で視聴。はじまって10分で子供たちが泣き出し、映画館を逃げるようにして飛び出す。予告編がずいぶん長くて、「ホーンテッド・マンション」の予告時点で子供たちが怖い怖いと叫んでいて、いやな予感がしていたが、やはりだめだった。ちゃんと最後まで見てみたい。

7.デイヴィッド・ホックニー展/東京都現代美術館

いやー、これは素晴らしかった。素晴らしいものを眼前にしたとき、ひとは笑ってしまうらしい。来場者が、みんな「うっひゃー」みたいな嬉しそうな表情をしていた。展示方法もすばらしく、絵画ってこんなに自由で、展示ってこんなに挑戦的なんだと感激した。ショップではずいぶん散財した。

きいた

「きいた」のゆるルール
・初めて聞いた/聴いたコンテンツであること
・購入orサブスクは気にしない
・心が動き数回繰り返して聴いていること

いわゆる新譜はあまり聞かない月だった。先月に引き続き、ブラーはよく聴いた。すばらしい作品だと思う。

8月は「みた」に偏重していたよう。9月もこうした時間をちゃんと持ちたい。


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