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会社をずる休みした日のこと

今日がいきなりではなかった。ここ最近、出勤前に涙が止まらないことが続いていた。

恋人はなだめるように私を抱きしめてくれた。最初は「頑張って、大丈夫だよ」と声をかけていたが、わたしがぼろぼろと大粒の涙をこぼしてすがるものだから、何かを察し「今日はおやすみする?」とすぐに言い換えてくれた。今思えば、その柔軟さに感謝しかない。

新卒4か月目に、有給はない。休み方がわからなかった。彼にもそう伝えた。「体調が悪いです」でいいんだよと言われ、震える手でスマホを握りしめて上司に電話をした。上司はすんなり受け入れてくれ、私は今日一日、何もしなくていい権利を得た。

天気は晴れ。時刻は7:50ごろ。日の光が差す布団の上で、わたしはうずくまった。ああ、やってしまった、という気持ちが押し寄せた。嬉しいという気持ちはなかった。

仕事上、今の時期は繁忙期になる。会社からの指示書では、「9:20-21:30で勤務のこと」と記載されていた。しかし実際にその時間では仕事は終わらず、8:30-22:00で仕事をしている。休み時間は30分もあればいい方で、その間も電話は鳴るし来客があれば対応せねばならない。スティックパン2本が、最近のわたしの食事だった。

正直どこの会社も繁忙期はこんなものなのだろうと思う。知恵袋にも似たような悩みが溢れかえっていて、そのほとんどに「どこもそんなもんですよ」という回答がされていた。わたしの会社も繁忙期以外なら9時間勤務だ(しかし休憩は満足に取れないが)。クレーム対応はどこだってあるだろうし、運営部は数字を躍起になって追いかけさせるものだ。まずはやってみなければ何もわからない。だからこそ笑顔で「やります」と返事をしていた。事実、こなしていた。

わかっている。

正直自分でも甘えであることは重々承知している。同期は今も頑張っているし、耐えている。上司は繁忙期でなくともいつも会議で忙しい。わたしだけ何故耐えられないのかと、ひどく憂鬱になった。何回測っても体温は36℃台だし、食欲がないことと涙が出ること以外身体に何の不調もない。いっそ憎らしかった。

鬱になってしまいたい。一人になった部屋で、ぽつりとつぶやいた。

すぐにあわてて思い直した。わたしの姉は数年前に鬱になっている。そのときの様子をそばで見ていたから、鬱病がどんなにつらいものかはわかっていたはずだった。わたしは、なんてことを。しかしこころが疲れていることは確かである。今日はゆっくり休もうと自分にいいきかせた。

洗濯物を干した以外、特筆してやったことはない。本も数ページしか読めなかったし、デリバリーした食事も1/3ほどしか取れなかった。ぐったりと落ちるように眠り、目覚めては涙を流し、また泣き疲れて眠るという繰り返しだった。それでもいい。多分、今日出勤しても仕事にならなかっただろうから。

明日出勤できる自信はない。しかし楽しい予定も待っている。今はそのために動こう。どうか、どうか。今は単にそういう時期なだけであってほしい。数か月後には、笑って幾分かこころが強くなったわたしでいてほしい。仕事にやりがいを見つけていてほしい。そしてどうか、今日のわたしをゆるしてほしい。

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