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これが現代の青春小説なのかもしれない『真夜中乙女戦争』byF

映画化をされたので、興味本位で本屋で手に取ったこの小説。
個人的には、東京タワーの表紙に惹かれた。
本の装丁は、とても綺麗だったし途中で写真がちりばめられてておしゃんな感じではあった。
ただ、内容はわたしにはあわなかった。
きっと大学生の頃の20代前半だったならば、刺さったのかもしれない。
それほど私が、年齢を重ねてしまったからだろうか?とは思う。
内容は、今時の若者ぽい暇と鬱々とした闇を抱えた『私』が、年上の先輩に恋をし、黒服という謎の男と関わりながら、世界を滅亡させたいという方向に走っていくという青春ストーリー。
ファンタジーなのか、現代なのか、世界観が不明ぽいところはある。
以上を踏まえて、作品を読んだ感想。

1.『私』の独白が多すぎる

主人公は私、という大学に入りたての大学生の男性。
なんだろう…とりあえず偏屈、不眠症を抱えている、未来に希望が見いだせない。
恐らく陰キャである。
女性の先生にはくってかかるし、バイトは黙々とこなすが、とにかく人生にひたすら絶望しているひと。
そう、なんか独白が多すぎて読むのがつらかった。
なんていうか、セリフが少ない。
圧倒的に少なくて、この私の心理描写が多すぎる。
多すぎるわりには、とてもいいことを言っている風なんだけど、その言葉が頭に入ってこないのがつらい。
そしてその作者の考えが強すぎるせいか、そのキャラクターの印象がとても希薄になるし、愛着が全く感じられない無機質なキャラクターになってしまってる。
リアリティを求めたのかもしれないけれど、なんか魅力的なキャラじゃないから読むのがちょっと辛かった。
小説って難しいな、って思った。
もちろん表現とかは言い回しとかは、とてもいいと思うんだけど、同じ様な作風で森見登美彦先生もそんな感じなんだけど、やっぱりキャラクターが魅力的じゃないと難しいなって。
情景とか心情描写はちゃんと素敵だし伝わるのに、やっぱり私というキャラクターがこの作者自身なのかな?っていうのがあって、ぜんぜん物語に入り込めなかった。

2.全体的になんか厨二病感が漂っている

厨二感はとてもいいし、リアリティなくて逆にいいんだけど。
なんか世間を否定する俺、かっこいい感がある。
きっと20代前半だと、これがかっこいいって思えるのかもしれない。
でもさすがに、年齢がいくとそれがすべて薄っぺらく思えてしまう。
なんか言葉に重みが感じられなくて、読むのやめてしまおうかなって何度も思ったけど、なんとか読み終わった。
でも世界観とか雰囲気はとてもよかった。
キャッチコピー通りの、なんかちょっと鬱屈とした世界。
出てくる、私も佐藤も先輩も、全て何か鬱屈とした何かを抱えて生きている。
個人的には、私の地元からの腐れ縁てきな友人である、佐藤が使い捨てされた感はちょっとかわいそうだった。
もちろん佐藤がクズオブクズなわけなんだけど、なんか自分のやったことがすべて返ってくるにしても、なんかちょっと投げ捨てられた感はあった。
でもスカイツリーにはなくて、東京タワーにはなんとなく情緒があるっていうのはちょっと好きだった。
東京タワーってやっぱり、ちょっと寂しさを感じるっていうのは共感できた。
でも読み進めれば読み進める程、この小説は果たしてリアルなのかファンタジーなのか解らなくなる、ってところはとてもいいと思う。
最後まで謎のままだったけど。

3.黒服と先輩はいいキャラだった

物語中盤で出てくる黒服という彼は、とてもかっこいいキャラだと思った。
そして、私が好きになる先輩は憧れる年上の女性の理想像そのものだなぁって。
黒服は、とりあえず最後まで存在が謎。
先輩はとりあえず、ひたすら憧れの存在。
そして友人の佐藤は、クズオブクズ。
脇役のキャラは結構強かったと思うので、映像化はしやすい作品かもしれないって読み進めながら思った。
黒服はテロリストでリーダー。
私に非日常を与えてくれる。
もしかしたら、私が生み出した偶像なのかもしれないし、理想の姿なのかもしれないなってちょっと読みながら考えたりもした。
こう考えると、逆に私にキャラクターを強く持たせないことで、脇役を光らせていた、という可能性も否定はできなかったりするけど。
やっぱりちょっとやっぱり、主人公の独白が長すぎるんだよなぁと思う。
もっと、黒服や先輩や佐藤の心情描写とかみたかったし、会話ももっとみたかったなぁと思う。

くどくどかいてしまったけど、自分にはあわなかっただけで、刺さるひとには刺さる小説だと思う。
中毒性はありそう。
とりあえず映像化されたほうを、興味本位でみてみる。
ただ、私はあんなイケメンではないな…とちょっと思ったけどw

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