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本当の救いとは何なのか『流浪の月』by凪良ゆう

普通に装丁が素敵なので、映画化されるのを知らなくて買った本でした。
今まさに上映中で、少しだけ一人で見に行ってこようかな?って思うくらい、とても素敵なストーリーでした。
基本的に、1人称視点で小説は進んでいきます。
内容はネタバレなしで明かしますが、未成年を誘拐し逮捕された大学生文(ふみ)、そして誘拐された被害者である更紗(さらさ)、二人はある日偶然再会し惹かれあっていくというストーリーです。

1.文がひたすら優しい

更紗が小学生の時に、彼女の父親がなくなり母親は彼女を捨てて蒸発します。
そして彼女は、伯母の家に引き取られるのです。
しかし伯父と伯母はいい人なものの、その息子の従兄弟である中学生の少年は、文に性的虐待を加えようとしてきました。
それが嫌で常に公園に夜遅くまでいる彼女に、あいつロリコンだって言われている大学生の文が声をかけ、うちにくる?と彼女に言います。
逃げ出したかった更紗は、文についていってしまいます。
怖い目に遭うかと思いきや、彼はひたすら更紗のお世話をするだけ。
本を読んだり、アイスを食べたり、映画を一緒に見たり。
触れる事もほとんどしなければ、危険な目にあうこともない。
ある意味、彼は本当に見本のロリコンなのかもしれない。
なんか昔知り合いに、本当のロリコンは見て楽しむだけだ触らない、という事を聞いたことがあってまさにそれなんだと思ったりしました。
小さい女の子が好き、小さい女の子と一緒にいたいだけ、そしてその子を見て楽しむ。
のちのち秘密が明かされるのですが、文はロリコンなんだけど、そういうタイプのロリコンだった。
大人になって二人は再会するんですが、やはり傷ついた更紗に対して、ひたすら文は静かで優しい。
少女じゃない更紗には興味がないと言いながらも、それでもやはり文も更紗を忘れられなかったんだと思います。
なんか本当の愛ってこういうものなのかもしれないな、って思いながら文の優しさを感じて読んで欲しいです。

2.更紗の人生は不幸すぎるのにへこたれない

彼女の人生を思うと、絵にかいたような不幸のオンパレードなんですよね。
まず、父親が死ぬ。
母親がメンタル弱すぎの変わり者で、彼女を捨てて男と逃避。
伯母と伯父には哀れまれ、従兄弟は性欲の塊の変態。
結局従兄弟の行為が発覚し、施設に入れられてしまう。
施設を出た後は、就職しようにも誘拐の被害者って事で哀れまれ、就職が多々ダメになる。
なぜか彼女を守ってあげるからという支配欲の強い男どもにつかまり、DV男ばかり寄ってくる。
安心だと思った現在の彼氏の亮ちゃんも、やはりDV男である。
という不幸を絵にかいたような子なのです。
まぁでもなんか、俺が守ってあげる的な人って、裏を返せば支配欲強めだからDV男に引っかかりやすいのわかるなぁと思いました。
しかし彼女の幸運なところは、勤め先のファミレスがいい人ばかりなところだったと思います。
男を追いかけまわして娘を放置してしまうシングルマザーの安西さんも、だらしないところはあるけれど、彼女に対してとても優しく接してくれるいい友達。
そしてなんだかんだ、彼女を哀れみながらも、彼女のためにいろいろ考えてくれるファミレスの店長。
そんなひとたちに支えられて、更紗はなんだかんだ悲劇のヒロインにはならずに済んでる。
あんまり私可哀想なヒロインだとちょっとゲンナリしてしまったりするので、このくらい芯が強いヒロインだとやっぱり好きになれるなって思いました。

3.DV彼氏の亮ちゃんがとても可哀想

更紗の同棲する、彼氏の亮ちゃん。
仕事もできるしとてもイケメンだし、いい彼氏だねと周りに言われるほどの理想の彼氏。
更紗の事は俺が守るよ、ともちろん過去の事件のことも知っていて、彼女を守る頼もしい彼氏なのですが……
この亮ちゃんが、この作品の中で一番可哀想だと個人的に思いました。
もちろん暮らしている数年間、何も二人に問題はなかったんだと思う。
普通のカップルの様に同棲し、結婚も考えながら、暮らしてきたのに。
彼の闇を、更紗と文が引っ張り出してしまったという形になっちゃったかなぁという結果かもしれない。
相手によって、DV癖が引っ張り出されてしまうのはよく聞きます。
悲しい事に、DVって連鎖してしまう事が多いんですよね。
彼のお母さんは、浮気して彼を捨てて幼い頃家を出てしまいました。
その理由は、彼のお父さんから受けたDV。
更紗が文にとられそうになったというのを勘づいて、引き留めたくて必死になり、結果DVを更紗に向ける事になってしまうのです。
なんかこの物語で一番可哀想なのは、トラウマを抱えてそこから逃げ出す事ができない亮ちゃんなんだろうなって思いました。
個人的には、一番人間の醜さをあらわしているキャラだと思います。

以上、流浪の月を読んだ感想でした。
映画も含め、ぜひ皆さんにおすすめしたい。そして凪良先生の違う作品もつい衝動買いしたのでまた読んだら感想あげます。
読んでいただき、ありがとうございました。

推してくれたら喜びます('ω')