Chompyデリバリーアプリをクローズした話
こんにちは。
株式会社ChompyでPMをしていますsomeです。
仕事ではPOSレジやモバイルオーダーアプリなどを始めとする飲食店向けAll in One レストランシステムSaaS「Chompy」を提供しており、プライベートではクラフトビールを中心とした飲酒行為と散歩という名の徘徊を趣味にしております。
先週 pmconf2023 に参加したのですが、Tably 及川さんとアトラクタ 吉羽さんのKeynoteの中で、プロダクトマネージャーの"覚悟"の1つとして「プロダクトや機能を終了する覚悟」について言及されておりました。
2023年5月15日、当社がフードデリバリーサービスとして運営していた「Chompy」はサービス提供を終了しました。
"サービスを閉じる"という最終的な意思決定は代表が下したものにはなりますが、Keynoteを聞きながらサービスクローズのプロジェクトを推進した当時の事をあれこれ思い出し、その時の思いを書き留めておく意味でこのトピックを選びました。
サービス終了PJTのスコープ
フードデリバリーサービスの「Chompy」をサービス終了するという意思決定は3月下旬にされ、その数日後にクローズPJTのリーダーを代表の大見から任され、同時に以下のPJTゴールも設定されました。
2023年5月中旬までにChompyポータルおよび自社配達網デリバリーのサービス提供を終了すること
「ポータル」「自社配達網デリバリー」というところが少し複雑なため補足すると、株式会社Chompyとしては2つの事業を運営していました。2つの事業ともオーバーラップしている部分があるのと、両方とも「Chompy」というサービス名なので紛らわしいのですが、下記のような違いがあります。
これらのうち、主に①にあたるサービスを終了するのが今回のPJTスコープとなります。
(よっていまChompy社は②にあたるAll in OneレストランシステムSaaSを育てています。こちらの話は誰かがAdvent Calendarで書いてくれそうな気もするので触れないでおきます 🙃)
ここ大変だったよ話
ここからはPJT通して大変だったところや頑張ってたよーってところをまとめようと思います。
対応スケジュールの設定
まずはサービス終了のスケジュールをFixさせること。PJTと言っても専属メンバーがアサインされるという訳でもないチーム規模なので、「サービス終了の告知日」と「サービス終了日」の2つのピンを固定することで、他業務との優先度調整やタスクアサインの調整をしやすいようにしました。
スケジュール自体は大まかに下記のようなStepで設定しました。
1. そもそもサービス終了を告知する時点までにFixしておくべき論点を洗い出し、検討リードタイムをどれくらい確保すれば良いか見積もる
そもそもお知らせをするタイミングでFixしているべき論点を洗い出し、それらの論点整理にいまからどれくらいのリードタイムがあれば決めれるかを見積もる → 最短でお知らせ出来る日を設定する、というStepで進めました。
結果、ここの論点整理は1.5w必要と判断しました。
2. 告知からサービス終了期日までのリードタイムを判断する
今回サービス終了のスコープ内で月次更新型のサブスクリプションを提供しているサービスがあったため、告知から終了までは少なくとも1ヶ月以上は確保するという方針にしています。
(もう1つの観点としてステークホルダーへ早くお伝えする誠実さも含まれていましたが、そこも満たせる日数でもあると判断しています)
3. 1+2でサービス終了日を確定する
Step1と2の検討自体はキックオフ実施後の2日間で一気に対応しきりました。その結果を踏まえ、4/13(木)にサービス終了の告知を実施し、5/15(月)にサービス終了するスケジュールを設定しました。
気持ち的には1ヶ月後の5/12の金曜日でキリよく終了したいところだったのですが、後続のタスクが多かったり、万が一の場合に全社でスムーズに対応が出来るように翌月曜日に。営業時間も通常通りの深夜24時までではなく14時を最終受注時刻としています。
新規機能開発などとは異なりスケジュールの遅れが許されない、かつ「5月中旬」という具体的な時期がPJTゴールに設定されている状態のなかでは、割と理想的なスケジュールを組めたのでは?と思ってます。
(といいつつ局面局面でタイトだったのは事実なので、チームメンバーにも大感謝です 🙌)
整理すべき論点の大きさ/重さ
実際に挙がった論点の一部を紹介すると、
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・サービス終了後の個人情報取り扱いやカスタマーサポート対応について
・領収書発行や管理画面での売上レポートなど、終了後でも動作担保する必要のある機能についてのメンテナンス方針
・残存するサービスに関係している箇所の切り分け方針について
・飲食店に貸与していたタブレット端末の回収方法について
・配達クルーに貸与していたウェア・バッグの回収方法
・販売用に在庫を抱えていたグッズの取り扱い
・配達クルーの新規登録対応をいつまで実施するか
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などがありました。
いずれもユーザー視点、会社視点で色んな観点が入り交じる中で1つ1つ整理していく必要があり、1000本ノック状態でした 😤
意識したことで言えば、とりあえずいま決めなくてもなんとかなるもの、後から決めたほうがスムーズに進むものはどんどん後回しにして、いま決めないといけない事にとことんフォーカスすることを考えてました。
例えば、サービス終了によって不要となった箇所のお掃除(リファクタリング)や問い合わせ導線の整理などは、クローズ対応が落ち着いてからでも問題なかったため優先度を下げて対応しました。
最初は解像度が上がり切ってなかったり、影響範囲が大きい不安からあれもこれもと論点が増えていきがちなトピックだと思いますが、後回しにしたことで優先度が落ちた(優先度判定がより精緻になった)ものも多くあり、思い切って捌いていって良かったなと感じています。
サービス品質を最後まで維持する
大変だったよ話、として書いてますが、最初は大変だと思っていたけど実は大変じゃなかったよ話です。
ChompyはU●er Eatsさんなどと同じで、ギグワーカーの配達クルーの皆さまによって支えられているサービスでした。多くの配達員さんは複数のデリバリーPFで稼働していることが多く、稼働すると実績が増えていき、より多くの配達依頼や良い報酬が得られるエコシステムの中でお仕事されています。
当初、サービス終了をアナウンスしたことで多くの配達クルーの稼働が減ってしまい、配達時間が長くなったりお届けできなくなる注文も増え、お客さまは最後に悪い体験をしてChompyとお別れしてしまうのではないか?と危惧していました 😨
しかしフタを開けてみると、いつも稼働してくれていたクルーの方はサービス終了日まで継続して稼働していただいたり、しばらく稼働されていなかった方も「最後だから…」ということで稼働していただいたり、と、非常に多くの配達クルーの方に稼働していただき、不安に思っていたサービス品質も維持したままサービス終了の日を迎えることができました。
Chompyクルーの方のChompy愛を低く見積もり過ぎていたのかもしれません…!稼働して最後までChompyを支えていただいたクルーの皆さま、本当にありがとうございました!🙇♂️
サービス終了するスコープを正しく伝える
ここは余談程度なのですが、冒頭でも記載した通りChompyは2つ事業を行っており、どちらも"Chompy"という名称だったことで一部のお客さまに誤解を与える告知となってしまいました。
各種お知らせなどの準備時点から意識して調整していた部分でもありますが、公開後に分かりづらいと問い合わせを受けた表記などは、問い合わせを受けてからほんの数分で修正対応が出来たりしたので、Engineer / Designer の皆さまに大感謝でした 🙌
いよいよ当日に…
諸々の準備をして迎えたサービス終了日、メンバーはオフィスに出社して自分が好きだったお店の商品を注文したりしてみんなでランチを楽しみました。
そして14時37分、最後の配達が無事完了し、フードデリバリーサービス「Chompy」の営業が終了しました。
悲しさもありますが、最後まで無事営業することが出来てほっとした気持ちが強かったことをいまも覚えています。
Chompyらしさの表現 / 特設ページ作成
6日目の「フードデリバリーサービス「Chompy」が終了して、その後デザイナーはどう変化したか」 でも言及がありましたが、サービスクローズにあたってユーザー(注文されるお客さま)・配達クルー・飲食店パートナーさんそれぞれに対して、これまでのChompyの利用状況をまとめた「あなたとChompyの思い出をみる」ページの企画を行いました。
デザイナーの @puzzeljp(ちっちさん)が提案してくれたのですが、実はこれまでもSpotifyやApple Musicが年末に特集している "まとめページ" なるものをChompyでも作りたいよね、という話が何度か社内で挙がっており、特に議論等をしなくても「最後にChompyらしさ全開でサービスを終了しよう」という共通認識のもとでこの企画を実施することにしました。
3ステークホルダーそれぞれでページを出し分ける必要があったり、導線設計が複雑だったりと、サービスクローズ対応と並行して作業するのは少し大変だったのですが、企画の実施に対して反対の声が一切上がらなかったように、Chompyがこれまでサービス作りで大切にしてきた「感情価値」や「温かみ・ぬくもり」が会社全体に浸透していたんだなと実感する瞬間でもありました。
ありがたいことにX(旧Twitter)上でも多くの反響をいただき、これまでのChompyの想いがしっかり伝わってたんだな…と、半年経ったいまでもたまに思い出してエモくなってます 😌
(配達クルーの方も結構ポストしてくれてたんですが、鍵垢だったりで載せられませんでした 🙏 1位の方とかはお願いしたら載せてくれそうだけど…(業務連絡))
さいごに
中身はそこまで濃くない & 稚拙な文章ですが、ここまで読んでもらった皆さま、ありがとうございました!(初Advent Calendarなので…勘弁してください😭)
ここまで書いてて、改めてデリバリーサービスって複雑だし難しかったよなあ…ということを思い返していたのですが、実はChompyはまだデリバリーサービスを諦めたわけではありません。
というのも2022年に事業ピボットしてAll in One レストランシステムの事業を始めたあともChompyポータルアプリは運営し続けていたわけですが、ストアフロント型のアプリを世に広めていく中で、そのアプリ内でデリバリー注文されたものをChompy独自の自社配達網で配達する、という構想にトライしていました。
コロナが明け、イートインやテイクアウトなど、お店に足を運んでくれるお客さまや訪日外国人のお客さまが回復してきた状況のいま、デリバリーだけではなくより飲食店の業務基幹をサポートするプロダクト(= All in One レストランシステムSaaS事業)に注力すべき、という判断でChompyポータルアプリをクローズすることになりましたが、Chompy製のストアフロントアプリが世に沢山広まったタイミングで、再度デリバリー領域にチャレンジしたいという気持ちがあります。
そんな思いも込めて、ChompyポータルアプリのサービスクローズPJTは
というタイトルをつけて進めていました。
これからもChompyは「多様な食を多様に届け、「まいにちの食事」を、おいしく笑顔に。」というMissionに向かって、「まいにちの食事」を支えるあらゆる飲食小売ブランドに対して分け隔てなくテクノロジーの活用機会を提供することで、彼ら・彼女らの素晴らしさを世界中に届けるお手伝いをしていきます。
See You Again!
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