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かなしみとかいたみのこと

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#小説

鯖の味噌煮

わたしは一体あと何百何千回自分のために食事を拵えてそれを食して皿を洗うのだろう。一週間前にまとめて煮こんで冷凍していた最後の鯖の味噌煮を電子レンジで温めて美味しくいただいた残骸がこびりついた皿をひとつ199円の赤いスポンジで擦りながらふとそんなことを思った。わけもわからず気がつけば入り込んでいたこの「自分」という肉のかたまりが今日も服を着て歩いて他の肉たちにあいさつしたり仕事をしたりたまに愛しあっ

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日記

君の大きな大きな瞳がわたしにばれないようにほんの少しだけきらりと揺れる。傷ついたこころを隠すように少し笑う。わたしはどうして君のことをいつもいつも傷つけてしまうんだろう。

君はわたしとまるでちがうふわふわとした髪の毛で少し肌が黒くてまつ毛が少女のように長くてそして、本当はとてもとても優しいただの若い男の子で、きっとわたしと同じくらい、もしかしたらもっと自信なんかなくって、傷つきやすくって、それが

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なんだろこれ

君はたぶん結局30までに死んだりなんかしないし仕事が落ち着いて貯金ができるまでは実家を出ないしご両親がやがてお年を召したら引き取って三世帯で同居したりなんかするんだと思う。結納とかもちゃんとするし披露宴とかもちゃんとするんだと思う、でき婚はしないんじゃないかな。

何が言いたいかってあたしもっと刹那的な暮らしがしたくておっぱいぼろんて出してすっぴんでタバコ吸ってねこかまけるみたいな暮らしがしたく

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