『汽車旅の酒』吉田健一(中公文庫)
この本は、さすが吉田健一と思える文章が、随所にあり、読んでいるうちに、汽車に乗り、ビールを飲み、二日酔いすら旅の良さに感じられる作品集である。どちらといえば、まだ、序の口とも思える一文を紹介しておく。
一文であるが、味がある。作者の書きぶりは、この一文の長さにも表れている。なんだか、呑んでいる時の酔っていく感じである。本多勝一氏の『日本語の作文技術』では、絶対に悪文と言われて、例に挙げられそうな気すらしてくる。でも、呑む人間と旅を楽しむ人間だったら、この文がどれだけいいか、わかると思う。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?