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日本語教師が『謝罪させていただきます』について考えてみた【後編】

こんばんは!
また読んでくれて、嬉しいです!

【前半】
では、以下についてお話しました。
1.よく耳にする『○○させていただく』の用例
2.『○○させていただく』について、一般の人はどう感じてるの?

今回の後編では、
3.「させる」「させていただく」の文法解説+学習者に教える際のポイント
4.『○○させていただく』をそもそもどうして使うの?
などなどについて、お話します!

日本語教師の方々は、是非授業のヒントにしてください!

一般の方々には、
・自分たちが普段使っている日本語って奥が深くて、おもしろい!
・自分の外国人の友達が日本語話しているけど、ちゃんと使えるのすごい!

と思ってもらえれば嬉しいです!

では、始めましょう!


3.「させる」と「させていただく」の文法解説+学習者に教える際の大切なポイント

【日本語を母語としている人】に学校教育などで日本語を教えることを【国語教育】と言います。そして、【日本語を母語としない人】に日本語を教えることを【日本語教育】と言います。
私の専門は【日本語教育】です。そして、以下で文法解説していく際に使う用語も、【日本語教育】で使われているもの採用します。


「させる」について


「させる」は動詞「する」の変化で、【使役形】です。
する  → させる  【使役】
食べる → 食べさせる【使役】
飲む  → 飲ませる 【使役】
のような変化です。

使役形の主な意味は二つあります。
①許可
②強制


その他にも、
・感情の誘発   例:泣かせる、びっくりさせる などなど
・身体動作を表す 例:スカートをひらひらさせる、足をバタバタさせる
などもあります。
ここでは、①許可・②強制だけについて解説していきます。


「させる」を教える際に気をつけているところ

①許可・②強制のそれぞれの例文を出して教えてきますよね。
それぞれの意味がはっきりと出る例文を出します。
それぞれの導入が終わったら、私は以下のような例文を出して、学習者に考えさせます。

例:父が私を日本に行かせます。

そうすると、学習者は「うん?これは許可?強制?」と混乱することが多いです。

その上で、これをどちらの意味か判断するのには、「この文の前後を確認する必要がある」ことを伝えます。
もし、この「私」が日本に行きたいのであれば、先程の文は「許可」の意味になります。反対に、「私」が日本に行きたくないのであれば、先程の文は「強制」の意味になります。


またその後に、【日本語母語話者】だったら以下のように言うことが多いと伝えます。

許可:父は私を日本に行かせてくれます。(使役形+くれる)
「くれる」を加えることにより、「感謝の気持ち」がプラスされます。そうすると、この文は「許可」の文であるということがはっきりします。

授受動詞と言われる「あげる」「もらう」「くれる」はほとんどの場合、既習の項目だから、復習にもなりますね。


日本に行かせてもらえる!


一方で、強制の意味の場合は、以下のように表現できます。
強制:私は父に日本に行かされます。(使役受身形)
ですが、「使役受身形」は未習の場合が多いので、私は学習者のレベルや状況に合わせて出すか出さないか決めます。

長くなったので、次に行きましょう。



「いただく」について


先程、【授受動詞】の「あげる」「もらう」「くれる」が少し出てきましたね。

【授受動詞】とは、別名【やりもらい動詞】とも呼ばれ、
誰かから誰かに、物が移動したり、行為がされたりする時に使われます。

ここでは、「物の移動」は置いておいて、「行為の移動」だけを見ていきます。つまり、それは以下のような場合です。
例:中国語を教えてあげる
例:重い荷物を持ってもらう
例:欲しい物を買ってくれる

上記の例を見ると分かるように、これらの【授受動詞】は【恩恵】を表しています。私が日本語学習者に説明する時には、【感謝の気持ち】と言っています。

特に「もらう」と「くれる」は、とても似ているのに、文法的にも意味的にも異なるところがあるので、学習者が苦労する項目です。使いこなせている人は本当にすごい!

日本語学習者は、「あげる」「もらう」「くれる」を習ってしばらく経ってから、その敬語表現である「差し上げる」「いただく」「くださる」を習います。

重い荷物を持ってあげる


「させていただく」について

やっと本題に入れます…
もう既にお腹いっぱいという方は、また明日にでも戻ってきてください!

この「させていただく」の使用について、文化庁が発表している『敬語の指針』にも載っています。それほど、使い方が難しいということですね。

https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/hokoku/pdf/keigo_tosin.pdf

その他、たくさんの興味深い『敬語の指針』が載っています!

そこには、「させていただく」について、以下のように書かれています。

【解説1 「 お・ご)……(さ)せて 】( いただく」といった敬語の形式は,自分側が行うことを,
ア)相手側又は第三者の許可を受けて行い,
イ)そのことで恩恵を受けるという事実や気持ちのある場合に使われる。


したがって,ア ,イ)の条件を どの程度満たすかによって
「発表させていただく」など
「…(さ)せていただく」を用いた表現には,
適切な場合と,余り適切だとは言えない場合とがある

https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/hokoku/pdf/keigo_tosin.pdf

つまり、上で確認したそれぞれの項目である、
許可「させる」+ 恩恵を受ける「いただく」『させていただく』
という足し算ですよね!

引用にもありますが、この二項目をどの程度満たすかによって我々の違和感の程度も変わってくるということです。

【解説2】次の①~⑤の例では,適切だと感じられる程度(許容度)が異なる。
①相手が所有している本をコピーするため,許可を求めるときの表現
「コピーを取らせていただけますか
②研究発表会などにおける冒頭の表現
「それでは,発表させていただきます
③店の休業を張り紙などで告知するときの表現
「本日,休業させていただきます 」。
④結婚式における祝辞の表現
「私は,新郎と3年間同じクラスで勉強させていただいた者です 」。
⑤自己紹介の表現
「私は,○○高校を卒業させていただきました

https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/hokoku/pdf/keigo_tosin.pdf

上記の引用のように、5つの使用例が出されています。皆さんの「違和感」の度合いはいかがでしょうか。
人によって、かなり感じ方が異なると思います。
私は、①の例文だけOKで、他の4つはどれも違和感を感じます。

許可「させる」+ 恩恵を受ける「いただく」=『させていただく』

この「基準となる足し算」を照らし合わせてみると、
①は明らかに、「許可」を求めているのでOK。

②は人によって分かれるところで、「許可」をもらって「発表する」と考える人もいます。私はここは「発表いたします」のほうが余計なものが付いていないスッキリとした表現だと思います。「します」の謙譲語である「いたします」を使うだけで十分です。

③④⑤は違和感を感じる人がほとんどではないでしょうか。
ただ、もし背景に適切なストーリーがあった場合には、「違和感なし」になる可能性もあります。

⑤自己紹介の表現「私は,○○高校を卒業させていただきました 」
⑤については 「私は卒業するのが困難だったところ,先生方の格別な御配慮によって何とか卒業させていただきました。ありがとうございました 」などという文脈であれば,必ずしも不適切だとは言えなくなる。

https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/hokoku/pdf/keigo_tosin.pdf

このような特殊な場合ですね!



やばい!ここまでで既に3000文字超え!

4.『○○させていただく』をそもそもどうして使うの?
をまだ書いていない…

【前後編】で完結させるはずだったのですが…

すみません。明日に持ち越しとさせてください!(←使ってるし!)

いや、持ち越しといたします。(どっちがよさそう?!)

明日の【○編】は何にすればいいのか…困りました…

ねむねむ

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