ミッドナイトスワンを観た

まず、つよぽんが美しい とにかく美しかった

一果と共にバレエ教室に通っていたりんの死

りんの死を受けて、コンクールの舞台で踊れなくなり思わず「お母さん」と呟いた一果

それを見て、性転換手術を決めた凪沙

一果を迎えにきたが追い返され、去り際に女になったからもうお母さんにもなれるのよ、と言った凪沙

中学卒業後、凪沙に会いに行き、変わり果てた凪沙を見た時に「ごめんなさい」と泣いた一果

最期に、踊って、と一果に言って、綺麗だ…と泣いた凪沙

全てが悲しかった

そして美しかった

思わずお母さん、と一果が呟いた時、なんで?凪沙じゃダメだったの?凪沙の愛は伝わってなかったの?とショックを受けた

でも、そうじゃない

凪沙の愛を受け入れつつも、受け止められなかったのだ、と

再会した時に、ごめんなさい、と泣いた一果

何に対してのごめんなさいなのか

迎えにきてくれたのについていかなかったこと

会いに来られなかったこと

凪沙の愛を信じて受け止められなかったこと

色んなごめんなさいが渦巻く中で、愛してくれたこと、愛をくれたことをわかっていながら、その愛の深さまでわかることができなかったことではないかと思った

お母さんになりたい、その気持ちを確かなものにするために性転換手術をした凪沙

でも一果にとっては、そこまでさせてしまった、凪沙の愛をわかっていたのに、性別を超えた愛は確かにあったのに、それを凪沙に伝えられなかった、そんな悔しさもあったのではないか

凪沙は凪沙で、一果がそれを望んでいるいないに関係なく、手術をすることが、女として生きること、母になることの一つの覚悟を決める必要な儀式だったのではないか

これで一果を胸張って迎えにいける、本当の母親にも並べる、私は体も女になったんだから、と。。

その考え方が、心と体の性が違って生まれた人の苦悩と悲しみを表していて、痛かった。。

体が女じゃないと、本当の女としては生きられないのだ、という叫びが刺さった

そしてりんの死

バレエがもう踊れなくなったりん

病院で、この子からバレエをとったら何もないと泣く親の横で遠い目をしたりんが印象的だった

一果に別れを告げて、踊りながら死んだりん

思春期の、危うさと、未熟さと、それゆえの美しさがあった

飛び降りる最期の瞬間、思わず綺麗だ、と心で呟いた





観る前は、トランスジェンダーという言葉がニュースでも話題になっていたし、これは体が男でありながら母になる、トランスジェンダーの生き方がテーマの映画だと思っていた

けれど、観た後の私の感想としては、これは愛の物語だ、と変わった

孤独と苦悩を抱えるトランスジェンダーの1人の人間が、ネグレクトで傷ついた少女と出会い、才能に惚れ、救われ、女として、母として、少女を愛する

愛を知らない少女が、トランスジェンダーの叔父と出会い、バレエを通して傷つき、救われ、愛されて、愛を知る

脚本上つよぽん演じる凪沙がトランスジェンダーだった、というだけで、この物語の核は性的マイノリティーの生き方に対する問題提起ではない

そこで私は、内田監督とつよぽんのインタビュー記事、つよぽんのYouTubeを見てみた

内田監督のインタビュー記事には以下のようなことが書かれていた

そもそもミッドナイトスワンの始まりは、バレエで映画を撮りたいからスタートした

バレエの世界の厳しさ、過酷さ、その中で頂点を目指す様はアジア人の価値観にハマってると感じた

バレエを習う子にもインタビューをしたとき、14歳の子に、もしバレエが踊れなくなったらどうする?と聞くと、生きていけない、と言った

まだたった14歳の子が、生きていけないとまで思うバレエとはなんて世界なんだと衝撃を受けた

バレエ以外にもう一つテーマとして描きたいと考えていたトランスジェンダーを融合させようと考えた

トランスジェンダーの方何人にもインタビューを行い、入念に調べた

この映画は問題提起をする社会派映画ではない

これは少女がバレエで成長していくいわばキャプテン翼のようなもの

そしてつよぽんはこう言っていた

重いテーマを扱うと選り好みされてしまうけど、この映画は広く色んな人に観てもらいたい


2人のインタビュー記事やYouTubeを見て、この物語は、バレエと共に成長する少女を主に置いた愛の物語であるとも理解できる、と感じた

作中何度も出てくるバレエのシーンは、バレエを一度もちゃんと観たこともない私も、その美しさにずっと観ていられるほど感動した

そして一人で広い舞台で踊るその姿は少女の孤独や苦悩が見事に表現されていた

演技が初挑戦とかは関係ない、一果がバレエを踊るだけで、バレエってなんて美しくて、儚くて、人の心に訴えかけることのできる強い表現方法なんだ、と

トランスジェンダーの孤独、愛されたことのない孤独、それが白鳥の湖という踊り、バレエの世界観にマッチしていた






まだまだ書きたいことが尽きないけれど、まとまりがなかなってきたので一旦ここでやめます









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