実験音楽の行方その2 bandcamp best-selling編
その1では、実験音楽の現状について定義的意味合いで触れました。
今回は、前回同様、bandcampを覗き、実験音楽の現状について見ていこうと思います。
bandcampによる実験音楽の区分け
ここでは、bandcampというサイト内でされているexperimental(実験音楽)の区分けについてみていきます。
bandcampではexperimentalジャンルの中にこの7つの小ジャンルが提示されています。
簡単に説明します。というより、wikipediaから引用します。
noise
drone
avant garde
experimental rock
improvisation
sound art
musique concrete
best-selling からみる実験音楽の価値
まず、best-sellingは売れている作品ということで、先ほどのジャンルごとにどのような作品が売れているのか上位に表示されるものを取り上げます。
(この記事を書き始めた時から投稿するまで日数が経っているため、今、bandcampに反映されているbest-sellingのものと私が取り上げる作品は異なるかもしれません。)
では、noiseからみていきます。
(アーティスト名→アルバム→曲)
sylveon 『I'm still here』 new dreams limited by our desires
作品は、直接ノイズを使うのではなく、サンプリングしたものに暴力的なミックスをし、ノイズ音楽に仕上げている感じですかね。ジャンルの中で新たなジャンルを言うとややこしいかもしれませんが、IDMという印象を受けました。具体的にはスピードを変えることで、遅く重い音にしたり、速く高い音にするなどの編曲がなされており、その中でビートの存在が音楽であることを維持しているように感じます。
drone
dystopian exoplanet 『Infinite Water』 Soul Spores元
重量感のある残響音の中に現れる激しい祭囃子のようなコーラス?が特徴的です。なんというんでしょうかね、一番わかりやすいのは平沢進の男性コーラスのような感じですかね。残響音の中、さらに層を重ねるが如く、響くコーラスのエコーはドローン音楽ならではの陶酔感を感じさせます。
avan garde
Moor Mother 『Jazz Codes』 RAP JASM
ジャズをバックグラウンドとしたヒップホップといった感じです。私は、ジャズもヒップホップも詳しくないのですが、avan gardeに分類される所以はどこにあるのか調べてみました。すると、このアルバムについてのpitchforkの記事があったので引用します。
黒人の音楽史と”記憶の仕事”、黒人の音楽史はわかりますが、”記憶の仕事”とはなんのことでしょうか。
少し難しいですが、私の解釈として、ジャンルの本来の意味は新たな音楽を定義するための探究心として、ここでの「記憶の仕事」は、その音楽がジャンルとして定義される過程の提示だと感じます。
要は、似通った作品をジャンルとして一括りにするジャンルの捉え方ではなく、人間的な精神に基づくジャンルの捉え方の前提を曲作りで重要視しているのでしょう。
experimental rock
Tom Bukovac 『Plexi Soul』 Cardboard Cutouts In The Shade
歪みのあるギターの音と余韻が強調されたメロディーが特徴的です。エクスペリメンタル要素は少し薄いように感じます。
improvisation
KONSTRUKT & PETER BRÖTZMANN 『Dolunay』 Dolunay
ドローン的な音を背景にフリージャズをしているといった感じです。個人的に、即興といえば、フリージャズのイメージが強いのですが、フリー〇〇といった感じで、一定の規則の中で自由な動きをするといった作品も面白いですね。
sound art
Heavy Cloud 『Memoria(HT074)』 In an imaginary place
電子的なジーという音がエコーすることでリズムとして機能させており、それを中心に輪郭がぼやけた残響音が鳴ることで、ディストピア的イメージを想起させます。個人的に好きです。
musique concrete
stelzer/murray 『commit』 commit 1
キーという耳鳴りのような高周波数の音が響く中、声と楽器の中間的なコーラスが現れます。これも、先ほどと同じようにディストピア的世界観を彷彿とさせるのですが、無機質的ながらも鬱々と響く音色は不気味で恐ろしさを感じさせます。
ディストピア的な作品が好きな方には上の『Memoria(HT074)』と同様におすすめです。
さてと、感想が少し雑になった箇所もありますが、ざっとこんな感じです。
7つに小ジャンルに区分された実験音楽のbest sellingを取り上げるという試みをしたわけですが、bandcampの各ジャンルを見ていると、ジャンル区分が割と曖昧なところもありました。
しかし、実験音楽というと、小難しい印象を持っている方もいるかと思いますが、サイト側が区分けを提示することで、実験音楽の定義的に良い悪いは置いといて、足を踏み込みやすくなっていると感じます。
個人的には、断片的な音響をコラージュ的に使うmusique concreteの曲は無機質性と切り取られたような人間味を持っており、面白いし、好きです。
以上になりますが、
また、機会があれば実験音楽の記事を書こうと思います。
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