光を掴む男、春田創一

 改めて連ドラを見返すと、春田の成長ぶりには目を見張る。牧は春田に成長してないと言ったけれど、この一年で春田はまるで別人のように変わっている。全ては牧に歩み寄るためだ。

 男同士のキスなんてありえない、誰が見ているか分からない、そう言って牧の手を払いのけていた彼が、武川さんにあちら側の人間だと評されていた春田が、男同士という概念と牧という唯一無二の存在の間で揺れながら、あちら側どころか牧とのずっとずっと先の未来まで見据えていた。そのめまぐるしい成長の早さに面食らったのはむしろ牧の方だ。

 春田は決して自ら光り輝く太陽のような男ではなく、サンキャッチャーのような男なのだと思う。誰かの想いや闇に共鳴し、そのエネルギーをありとあらゆる方向へ拡散する。時に明後日の方向に拡散してしまうデリカシーのなさもあるが、すぐにその非を認め軌道修正ができる柔軟さがある。それが春田の最大の強みだ。

 牧はずっと自分の中に自分の感情を押し殺して生きて来た。恐らく武川さんに対して正直な気持ちの半分も伝えていなかったように思う。もしかしたら本当は別れたくないという気持ちもあったかも知れない。

 でも春田には素直な感情をぶつけている。本人が一番、そんな自分に驚き戸惑っている。だからすぐに次の一歩が踏み出せないのだ。それはジャスも狸穴さんも部長も同じ。彼の行動はいつも突拍子がなく面食らうが、誰もがみんな春田には素直な気持ちをぶつけられる。それが春田創一という人間なのだ。

 炎の中の告白のシーンで、牧が春田と向き合わなかった理由を素直に認めている間、春田は牧の顔をじっと見つめている。その言葉のひとつひとつを取り零さないように、全てを受け止めようとしている。

 そして牧の告白を聞き終えた瞬間、くしゃっと顔を歪めて泣きそうになる。そこでやっと自身の感情へと意識が向かう。彼はいつも全力で誰かと向き合い、それに全力で応えようとする。だから皆、その誠実さに突き動かされるんだろう。

 春田は人の心の機微をキャッチすることに長けているのだと思う。極度な寂しがり屋なのかもしれない。そういう点では牧よりもずっと敏感で、感覚や本能で生きている。そしてその都度、自分の中で細かい軌道修正もしている。自分がキャッチした相手の想いや闇をそのまま、あるいは衝撃を打ち消して、あるいは七つに色を変えて打ち返している。

 ラストシーン、自分から動くことに消極的だった牧が、自ら勝ち取り自分で選んだ夢の道へと歩み出そうとしている時、春田はそっとその背中を押す。自分がキャッチした彼の想いを、何倍にもキラキラとひかり輝く夢に変えて。