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東京から福岡へ子連れ移住。就学直前のタイミングを見逃さず、1ヶ月半でやりきった

この数年でリモートワークに対応する企業も増え、いままでとは違う土地に住める可能性も広がってきました。でも子育て中だと、生活を変えるハードルがとたんに上がってしまうものです。

今回登場するのは昨年、東京から福岡に移住を果たした田村梨江さん。ご自身の会社を経営しながら、7歳の息子さんをシングルで育てています。移住を決めたきっかけや子どもがいるなかでの準備、仕事と生活がどのように変わったのかを伺いました。


仕事のための移住。でも、息子にとってもベストタイミングだった

――田村さんは、もともと東京でクリエイティブワークやアーティストのマネジメントを手がける会社「HANGOUT COMPANY」を経営されていました。福岡への移住を決めたのは、どんな経緯があったのでしょうか?

大きなきっかけは、2019年末から福岡でパーソナルトレーニングジム「MILL」を開業したことです。店舗事業をやることすら初めてのなか、福岡在住のスタッフたちと遠隔で連携しながら手探りで運営をしていたのですが、オープンから間もなくコロナ禍がはじまってしまって……。現地の空気感がどうしてもつかみづらくなってしまったことや、現場にマーケティングの経験者がいないことなどがネックになり、東京/福岡間のコミュニケーションコストがかさんでいました。

だったら、いっそ私が福岡に行けばいろいろ解決するんじゃないか? と思いついたのが2023年2月末のこと。MILLが軌道に乗ったら、そこから派生するウェルネス事業に集中しようと考えて、東京でのクライアントワークをちょうど減らしはじめたタイミングでもありました。

――目の前の仕事にも今後の事業にも、田村さんが福岡に行くことで得られるメリットがあったんですね。でも、ご家族がいると生活を変えるときにブレーキがかかることも少なくないかと思います。そのあたりはいかがでしたか?

それが、息子にとってもちょうどいいタイミングだったんですよね。彼は当時年長クラスで、ちょうど次の4月から小学生になるところ。しかも、移住を決める数ヶ月前に受験した私立の小学校に落ちてしまい、どこの小学校に進むかを決めかねていました。公立小学校ならどこも大きな差はないだろうし、転園より転校のほうがハードルが高い気がしたので、いま動くのが一番いいと思えたんです。

――確かに就学前はひとつの頃合いですね。2月末に移住することを決め、その後はどのように準備を進めていったのでしょうか。

福岡の公立小学校の入学式を調べたら4月12日だったので、それまでに移動を終えようと決めました。でも、そこから1ヶ月半のタイムリミットですべてをやりきるのは、ふつうに考えてめちゃくちゃ大変。だから、まずはモチベーションを上げるような住まいを探そうと思い、さっそく福岡の家をオンライン内見しはじめました。住むつもりのエリアに何があるか、おいしそうなお店や楽しそうな場所もセットで探しながら、とにかく検索しまくりましたね。住まいの条件は、公園と駅が近いこと。学区もいろいろ調べたけれど、行ってみないと結局リアルなところはわからないし、もしも合わない学校だったら引っ越せばいい。だから、最後は直感で決めちゃいました。

――通常の仕事や子育てと並行しながらの移住準備、なにが大変でしたか?

やっぱり大量の事務手続きは大変でしたね。ただでさえ就学で手続きがたくさんあるところに引っ越しなので、提出しなければならない書類が本当に多くて。入学式の3日前に引っ越しを終えたのですが、入学したらしたで学校から毎日大量のプリントを持って帰ってくるし……しばらくはどうしても事務系タスクに追われました。

――お子さんには、移住をどのように話したのでしょうか。大きく環境が変わることやこれまでの友達と会いづらくなることなど、伝え方がちょっと難しい部分もありそうです。

相談ベースで「引っ越していい?」と聞くか、決定事項として伝えるかはちょっと考えましたね。でも、もともといろんな土地への出張に同行させていたから、日本国内ならどこでも近いよ! という感覚はあって。だから「都内からちょっと横浜のほうに引っ越すよ」くらいのノリで「来月から福岡に住むよ~」と伝えることにしました。福岡の職場にもよく連れていっていたし、現地のスタッフとも仲良くしてもらっていたから、息子にとってわりと知っている土地だったのも大きいと思います。

「仲の良いお友達と離れるのがさみしいかな?」とか「慣れているシッターさんと別れるから、また新しく信頼できる預け先を探さなきゃ」とかも思いましたが、本人はさほど気にする様子はありませんでした。

ママ友がつくれたら、暮らしがさらによくなりそう

――では、引っ越してからのことを聞かせてください。住んでみて、福岡はいかがですか?

すばらしい街ですね。福岡市内で一番大きな大濠公園という公園の近くに住んでいるんですが、広々とした空間に大きな遊具が充実していて、自然が好きな息子はすごく楽しそうに遊んでいます。お散歩するにもめちゃくちゃいい環境だし、素敵な美術館もあるし、食べ物はなんでもおいしい。どこに行くにも移動しやすいコンパクトシティだから、暮らしていてストレスがかかりません。休みの日にはフェリーに乗って日帰りで離島に遊びに行く、なんてこともできちゃいます。

東京も大好きでしたが、福岡は地方都市ならではのほんわかした印象がとてもいいなと感じますね。人もとっても優しいです。MILLのチラシ配りやご挨拶で近隣の店舗に行ったりすると、みんなちゃんと話を聞いてくれるんですよ。偏見かもしれないけれど、東京だったら8割くらい門前払いされていたような気がします(笑)。

息子はどんなコミュニティでもぐいぐい入っていけるタイプなので、友達ができなくてさみしい……といった思いもいまのことろまったくしていません。私自身も仕事でつながった方々がずいぶん気にかけてくださって、家族ぐるみのお付き合いをしてくれているので、とても楽しめています。

――息子さんだけでなく、田村さんもさっそく仕事つながりで交遊関係ができてきているのはいいですね。では逆に、いま感じている生活の課題はありますか?

移住したことで一番感じているデメリットは、青森の実家が遠くなったことです。もともと近くはないけれど、東京だったらどうしても困ったときに新幹線で来てもらうことができました。親は飛行機を怖がるので、陸路一択。でも年齢を考えると、福岡まで新幹線を乗り継いで来てほしいとはとても言えません。ただでさえ忙しくてなかなか実家に帰れていなかったのに、物理的な距離がさらに空いてしまったことは気になっています。

あとは、小学校でママ友ができないことでしょうか。35人×5クラスのマンモス校なので、なかなか横のつながりをつくる機会がないんです。だから「明日から水泳が始まるみたいだけど、準備するものがよくわからない!」とか、学校からの情報が足りないとき気軽に聞ける人がいないのは困っちゃう。いまのところ学校に直接電話して解決しているものの、できたら仲の良いお友達をつくって、子育ての協力体制を構築したいと考えています。

それから、子どもの習い事やスクール関係を一切フォローできていないのもちょっとした悩みですね。本当はダンスや運動系のスクールに興味がありそうなんだけど、忙しくてなかなか時間がさけておらず……東京にいたときから抱えている課題ですが、やっぱりそこは解決できていません。

――ご実家の問題はともかく、子どもの習い事やママ友関係は、時間が経つにつれ解決できることも多そうです。

そうですね。いままで当たり前だった生活ががらりと変わったので、しばらく課題が残るのは仕方ないなと思っています。でも、それ以上に新しい可能性にふれることができて、私も子どもも成長する機会になりました。

大きく盛り上がっている土地で、思いきり種をまく楽しさ

ーー福岡に移って、仕事のほうはどのように変化しましたか?

東京ではクリエイティブ系のクライアントワークなどが多かったのですが、いまは本腰を入れて福岡の店舗を頑張らなくちゃいけない時期。これまでとは違うマーケティング目線が必要になっているため、新しい挑戦の日々です。まずはこれまで皆無だった福岡での人のつながりを開拓したくて、引っ越してきた4月はとにかくたくさんの人に会いました。交流会に参加したり、誘われる経営者飲み会には絶対に顔を出したり……。種まきの時期だととらえて、一ヶ月に50人以上はご挨拶したと思います。

――福岡はいま、とても盛り上がっている土地ですよね。本格的に拠点を移し、これからどんなお仕事をされていきたいですか?

MILLというブランドを土台に、さまざまなウェルネス事業を展開していきたいと思っています。いま、福岡の繁華街では「天神ビッグバン」という都市再開発プロジェクトが動いていて、2026年あたりまでに新しいビルがどんどん建てられていくんです。そのなかでBtoB向けのウェルネスエリアをプロデュースする……といった企画にも参加しはじめているところ。これは、春にたくさんまいた種が実ってきた結果でもあります。

とにかく、いまこの時期に福岡に来られて本当によかったですね。スタートアップもたくさん誘致され、ビジネスが活性化しているこのタイミングに、この街でどんなことができるか? というワクワク感がすごくあります。

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