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いよいよ本格的なダークソーシャル時代に

Facebookが、ついにInstagramのDM機能を強化、Facebookメッセンジャーとの統合に乗り出しました。これは本格的なダークソーシャル時代の幕開けにつながります

1.Facebookがメッセンジャー統合へ

Facebookは、InstagramとFacebook Messenger双方のメッセージ部分のシステムを統合するテストを開始しました。
FacebookはMessengerとInstagram、WhatsAppで相互にメッセージの送受信を可能とするため、それぞれのメッセージングプラットフォームを共通化する方針を明らかにしています。またザッカーバーグCEOはメッセージングシステムのエンド・ツー・エンドで暗号化したいと考えているとのこと。
Facebook appears to flipping the switch on integrating the chat systems for Instagram and Messenger. On Friday evening, several editors at The Verge across the country — on both iOS and Android devices — noticed an update screen popped up in Instagram’s mobile app with the message “There’s a New Way to Message on Instagram” with a list of features including a “new colorful look for your chats,” more emoji reactions, swipe-to-reply, and the big one: “chat with friends who use Facebook.”

これはFacebookの数年前の発表に則ったもので、いわゆるオープンなSNSから、クローズドなメッセンジャーへと戦略をシフトしていく方向です

過去の記事を振り返ると・・・

同社はこれまで、企業のミッションとして「making the world more open and connected(世界をよりオープンにし、つなげる)」を掲げてきたが、新たなミッションは「bring the world closer together(世界のつながりをより密にする)」
ザッカーバーグ氏の発表を真に受ければ、「これまでは人々が公の場でどんどんつながって、意見を交換できる、“town square(町の広場)”を作ることに専念してきたけど、これからの時代はもっと親密なつながりが大事だと気づいたので、安心してプライベートにつながれる場、“リビングルーム”を作ることにした」ということです。
Facebookがいうリビングルームとは、エンドツーエンドで暗号化したメッセージングサービスです。そこでやりとりするメッセージの内容はFacebookも見ることができず、データは一定期間保存した後サーバから削除します。
プラットフォームを横断できるメッセージ機能を提供することにより、これらのユーザーはお互いの使いたいアプリでメッセージをやり取りすることができるようになる。普段使っているアプリでより多くのユーザーと交流することができ、ユーザーとしても使い勝手は向上すると予想できる。
3つの独立したコミュニケーションアプリを実質的に統合することにより、AppleやGoogleの提供するメッセージングサービスに対抗する狙いもあると考えられる。

Facebookは数年前に例のケンブリッジ・アナリティカ問題で大きな批判を浴びた直後に、これからはオープンなSNSではなく、クローズドなメッセージサービスに軸足を移していくという方向を打ち出したのです
今回のメッセンジャー統合はようやくその方針が目に見える形になってきたというところです

2.ダークソーシャルとは?

ここでダークソーシャルというワードに注目してください
今回のFacebookのメッセンジャーをはじめ、SNSのDM機能、あるいは古くからあるメールやショートメッセージを使ったやりとりのことです

ダークソーシャルとはウェブサイトのアクセスにおいて、リファラー(参照元)が不明なもののうち、モバイルアプリやショートメッセージ、メールなどのリファラー情報を引き継がないツールを経由したアクセスのことを意味します。
一般的なアクセス解析ツールではリファラーが不明なアクセスは「ダイレクト」などと呼ばれます。従来、この「ダイレクト」に分類される経路はブックマークやURLの直接入力だと考えられてきました。しかし、ウェブサイトの規模拡大・複雑化、モバイルの発展を受けて、ユーザーの流入経路が多様化し、現在はこの2つの経路以外にも「ダイレクト」として分類される経路が存在します。本来は「ダイレクト」に分類されるアクセスではないのにアクセス解析ツールにおいて「ダイレクト」に分類されてしまう経路のことをダークソーシャルと呼ぶのです。

だいたい2016年ぐらいから国内でも“ダークソーシャル”という単語が記事にも取り上げられています

リアルな人付き合いに疲れる→オンラインに逃げる→みんながオンラインに集まってくる→オンラインとオフラインの境界線がなくなる→オンライン≒リアルな付き合いになる→オンラインの人付き合いに疲れる→「閉じこもれるオンライン」を求める(イマココ)

インターネットで行われるコミュニケーションの中でも、このダークソーシャルの占める割合は年々増えつつあり、上で紹介した「Contet hub」の記事中にも、2015年の時点でモバイルウェブのシェアの84%をしめていると記されています

ダークソーシャルが注目されている理由はモバイルでのウェブサイトのシェアの大部分を占めているからです。エンタープライズ向け広告のプラットフォームを提供するRadiumOne社の調査レポートによればモバイルでのウェブサイトのシェアのうちダークソーシャルの割合は2014年69%、2015年84%と増加の一途を辿っています。
ユーザーのプライバシー意識とセキュアなソーシャルメディアに対する需要が急速に高まっており、それに伴いプライベートなソーシャルメディアに対する関心も高まりを見せている。
プライベートなソーシャルメディアとは、特定のユーザーどうしが情報のやり取りやシェアを行うもので、LINEやフェイスブック・メッセンジャーなどがその範疇に入る。
特に北米でのフェイスブックユーザー数の伸び悩みが指摘されるなど、パブリックなソーシャルメディアの減退傾向は年々強まっていると考えられる。
一方で、ダークソーシャルは右肩上がりでユーザー数を伸ばしている。Statistaのまとめでは、フェイスブック傘下のWhatsAppの1日あたりのアクティブユーザー数は2017年第1四半期に1億7,500万だったが、2018年第2四半期に4億5,000万人、2019年第1四半期には5億人に到達した。

3.スマホ上でダークソーシャルをめぐる争いが起きている

最古参のダークソーシャルはいわゆるメールですが、やはり伸びているのはスマホを使ったメッセンジャーアプリ、あるいはSNSなどのDM機能を活用したダークソーシャルです

インスタでは友人同士のコミュニケーションもありますが、実は盛んなのはダイレクトメッセージ(DM)です。ストーリーズへのリアクションも、いいなと思うコンテンツも、全部DM内で共有する仕組みになっているんです
世界の潮流として、オープンなソーシャルメディアは頭打ちになっています。そこでプラットフォーマーたちはメッセンジャーツールに注目し始めました。

各プラットフォームのユーザー数を見てみてください。まずは国内の数字です

LINE:8,400万
Twiter:4,500万
Instagram:3,300万
Facebook:2,600万
TikTok:950万

そして海外にはユーザー数20億というお化けのようなメッセンジャーアプリがあります

メッセージングアプリ「WhatsApp」のユーザー数が20億人に達した。WhatsAppが米国時間2月12日、ブログ記事で明らかにした。
シェアトップは「WhatsApp」です。2019年9月時点で、世界中で16億人ものユーザーを抱えています。続く第2位は、Facebook Messengerの13億人。そして第3位は、中国のテンセントが提供する「WeChat(微信:ウィーチャット) 」、ユーザー数11億人と続きます。
私たちの生活では、家族や友人との日々のやりとりが大半を占めます。そんなチャット(会話)を支えるメッセージングアプリが世界で爆発的に広まったのは自然な成り行きと言えます。

LINEなどのメッセンジャーから始まったアプリだけにとどまらず、多くのSNSプラットフォームがメッセンジャー強化に動いています
SNSは本来はやはり1対N機能ですが、やはり1対1へとユーザーのニーズもシフトしてきているのだと思います

Threadsはこのダイレクトメッセージ機能を切り出したうえで、親しい友達とのコミュニケーションに特化したアプリといえる。Instagram Directと同様に写真や動画、文字、スタンプなどをメッセージとして送受信できる。違いは、Threadsでメッセージを送信できるのは親しい友達だけで、表示されるのも親しい友達とのやり取りだけという点。「勉強中」や「移動中」といった友達の状況が分かる「ステータス」機能を利用できる。

最近話題のTikTok、あるいはZenlyなどもDM機能は無視できない重要機能になっています。単なるテキストレベルの交換機能からいずれもそれぞれならではのリッチなやりとりへと強化されています
たとえばTikTokは気になるショート動画投稿をワンタッチで友人にシェアできたり、またZenlyは音付きのスタンプというユニークなメッセージと送れるようになっています(乱打するような使い方も可)

iOS、MacなどAppleデバイス同士でやりとりのできるiMessageもダークソーシャルの担い手です

我々は多くの国々でリードしているが、とりわけiPhoneが強いアメリカなどの国々では、最大の競争相手はiMessageである。AppleはiMessageをデフォルトテキストアプリとしてデバイスにプリインストールしており、当社に優っている。iOSとAndroidの間の競争が激しいヨーロッパのような地域では、当社のサービスが選ばれている

一方で、あまりパッとしないDMとしては、あのGoogleはいろいろ試行錯誤はしているものの、メッセンジャーについては迷走につぐ迷走・・・
また、日本ではキャリアによるいわゆるSMSに変わる+メッセージがスタートしましたが、あまり話題にはなっていないようです

いわゆるLINEのようなメッセージアプリはもちろん、本来は1対多のSNSプラットフォーム、あるいはキャリアまで、みんなダークソーシャルの方を向いているのがよくわかります

4.コロナでますます増えるダークソーシャル

ウィズコロナ、アフターコロナの時代です、在宅学習や待機、勤務を否応なくされている人たちは、ますますオンライン化が進み、学習やビジネス、娯楽、あるいは飲み会やデートまでPCやスマホ上で行うようになりました

コロナ禍で緊急事態宣言が発令された状況の中、外出やおしゃれもままならず、インスタ映えから遠い生活をしていた人は多かっただろう。インスタ映えではなく、つながりや好きなものの情報を求めてストーリーズを使った人が多かったと考えられるのだ。

最近のトレンドでもある“画面共有”もダークソーシャルの世界です

ウィズコロナの中でTeamsなどを使ったビジネス上のコミュニケーションも激増しているはずですが、その中でも1対1あるいは少人数間のチャットベースのやりとりが増えていると実感している人は少なくないはずです

5.これからは本格的なダークソーシャルの時代

今回のFacebookのメッセンジャー統合をきっかけに、さらなる本格的なダークソーシャルの時代がやってきそうです

FBグループの強みはなんと言っても強大なプラットフォームをいくつも持っていることです。それらを束にすることによって、iMessage、あるいはLINEやWeChatに対抗しようというわけです
それもスマホネイティブでもっとも勢いのあるプラットフォーム、Instagramをメインに展開していくのでしょう
Instagramにとって、写真共有はほんの一部分、SnapchatからパクったStoriesがあり、TikTokからパクったReelsがあり、さらに今度はメッセンジャーありという総合デパート状態になっていくのでしょう
なんといっても世界一のSNSの巨人Facebookによるメッセンジャー統合は注目すべきトピックスです

下記の記事は最近のダークソーシャルに関するたいへん興味深い調査結果と分析記事です

文字通りダークで見えないダークソーシャルですが、そこを想定した戦略が企業側にも求められてくることになります
オープンの裏ではもっと多くの時間とコンテンツが交わされていること。表に出ていくのはその一部であることをより自覚して、施策を打っていくことが、これからはますます大切になってきます

6.ダークソーシャルも完全にプライベートではない

ダークソーシャルという呼び名ではありますが、完全にプライベートなやりとりが保証されているわけではありません。ネット上のやりとりは、つねに晒される可能性があることは留意しておかなくてはいけません

わかりやすい例が、ドルチェアンドガッバーナの炎上事件です

もちろんFacebookのチャットの「秘密」モードには一定期間でメッセージが消える機能があり、本家Snapchatもメッセージは消えてしまいます
でもだからといって安心はできません。いつスクショを撮られているか?
あるいは別スマホやカメラで撮られたら防ぎようはないわけです

ダークソーシャルだからといって、晒されるリスクは常に留意しておく必要があります

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