ビートルズの曲で興味深い、コードとメロディーの関係2(Drive My Car)
ビートルズのドキュメンタリー映画が始まりましたが皆さん見ましたか?
という訳で前回に続いてビートルズについて。ハーモニーが意味が分からない曲の筆頭かもしれないDrive My Car。
この曲は普通にコードとの関係で分析すると本当に意味が分からないです。だいたいのところを五線譜にするとこんな感じでしょうか。
高い方のポールのパートは基本ずっとGの音を歌ってますが、これはDのコード上ではアボイドノート(コードと不協和なので避けた方がいい、使うとしても短い音価で使うべき音)になります。録音ではコードを弾くのではなくリフを弾いているので実際に不協和音が鳴ってる時間は短いですが、カバーしてる人はコードストロークしてるのもあり、それでも違和感はない気がします。ちなみにAのところはコードネームにするとA7(#9,♭13)となり、ドミナントコードと考えるとオルタードテンションとなるので、Dコード上のG音のようにアボイドノートにはなりません。しかしこの曲の場合はそのような考えから使われてる音ではないでしょう。
曲調から言ってDコードの上の不協和音もA7上の一見複雑な音使いも、ブルース的なコンセプトから考えるとあまり複雑に考えなくてもいい気が一気にしてきます。ブルースの場合、このようなぶつかりは普通にあります。ブルースでアドリブを演奏する場合、コード進行をほとんど考えず、マイナーペンタトニックスケール一発で通したりすることもあると思います。その際、どの程度コードとの関係性を重視するかは人それぞれだとは思いますが、ブルースは比較的コードと旋律が独立してるというか、旋律がコードに寄り添わないことはよくあります。
A7上の音は全てトニックDのマイナーペンタトニックスケールの音です。このようなハモリは珍しいでしょうが、アボイドノートではないという意味では頭を悩ませる必要はないのかもしれませんかねー。
ブルースで使われるスリーコードと、マイナーペンタトニックスケールをCのキーで書くと下記の通りです。
譜例1
譜例2
Drive My Carの冒頭で出てくるコードに対するアボイドノート(メジャーコードの4度に当たる音)を図示すると下記の通りです。赤線で結んだ音が半音でぶつかりよろしくないってことです。
譜例3
先程も書いた通り、これをどれぐらい避けようとするかは人それぞれ或いは場合によりけり、アドリブソロの時とかにあまりに気にしすぎると小さいというかせせこましいというか男らしくない感じがします(笑)。
この辺のことはまたいずれ別記事にしたいと思いますが、いずれにしても、メジャーコード上で4度の音がメロディーになることはブルースでは珍しくありません。ブルースだと考えるとそれぞれの音単体としては全然ありだという気がしてきますね。ただその中でもトニックコードかつ冒頭かつこれだけずっとという点ではやはり大胆で特異ではないでしょうか。
あくまで私の考えなのでもっと納得いく説明があるならば聞きたいです。いずれにしても今後もずっと多くの分析者を悩ませる曲ではないでしょうかね。ちなみに今回説明した後の部分も大変面白い曲です。
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