見出し画像

「ソロ温泉」×「ワーケーション」を愉しむ

これまで数回にわたって「ソロ温泉」の魅力について述べてきました。ソロ温泉によって享受できる最大のメリットは、日常では得られない「空白の時間」を過ごせることです。

仕事や日常生活から離れて、温泉地で自分自身と向き合うことがソロ温泉の真髄だと提案しました。ただし、ある程度の連泊が可能なら、「ワーケーション」の場として温泉地を選ぶのも選択肢のひとつだと考えています。

温泉効果を得ながら仕事もこなす

ご存じのとおり、ワーケーションとは、英語のワーク(仕事)とバケーション(休暇)を組み合わせた働き方のスタイル。観光地やリゾート地など普段の職場と異なる場所で仕事と余暇を両立させようというもので、コロナ禍によってITを駆使したリモートワークが普及したのをきっかけに注目されています。

ここで提案したいのは、温泉地で仕事をしながら、同時にソロ温泉も楽しむこと、つまり「ソロ温泉」×「ワーケーション」の実践です。私はこれを「温泉ワーケーション」と呼んでいます。温泉効果を得られるだけでなく、ついでに仕事もしてしまう。一挙両得の旅のスタイルといえます。

3泊以上できるなら「温泉ワーケーション」

温泉ワーケーションの特徴は、長期滞在を前提とすること。できれば7日以上、最低でも4日(3泊)は温泉地に滞在したい。1泊、2泊の旅で仕事などしていたら、結局心も体も休まりません。ソロ温泉の目的である「空白の時間」を愉しむことに徹したほうがいいでしょう。

しかし、3泊以上の連泊が許される環境であれば、ワーケーションの場としてソロ温泉に繰り出すのもありです。私自身も、短期の滞在には仕事をもちこまないように心がけていますが、長期の滞在が可能なときは仕事と湯治を両立させるようなプランを立てて出かけています。

オンとオフのメリハリがきく

ワーケーションという言葉が世間に浸透するずっと前から、私は温泉ワーケーションを何度も経験してきました。フリーランスの立場で書籍の編集や執筆を生業としている私の場合、働き方の自由度が高い。基本的にパソコンがあれば、どこでも仕事ができます。だから、まとまった大きな仕事に取り組みたいときは、長期滞在が可能な湯治宿で温泉に入りながら、パソコン作業をすることがよくありました。

たとえば、7日間の滞在で、1冊分の本の編集や執筆が完了するケースが多い。普段なら10日以上かかる仕事量なので、温泉地で仕事をすると生産性が高まることを実感しています。

ただし、現地での過ごし方には注意が必要です。温泉ワーケーションでも、あくまで主役は温泉です。せっかく温泉地にいるのに仕事ばかりしていたら意味がありません。

たとえば、「仕事をするのは午前中の4時間だけ」というように、時間を区切る。「それでは仕事が進まない」と心配になるかもしれませんが、オン(仕事)とオフ(温泉)のメリハリがつくことで集中力が増し、いつもより仕事が捗る感覚を得られるはず。温泉で脳もリフレッシュしているので、頭を使う仕事やクリエイティブな作業にも向いています。

「温泉ワーケーション」に向いている温泉地とは?

私がよく長期で滞在したのは、鳴子温泉郷(宮城県)です。鳴子温泉、東鳴子温泉、川渡温泉、中山平温泉、鬼首温泉の5つの温泉地からなり、源泉の総数は東北最大を誇る名湯です。

鳴子温泉郷が温泉ワーケーションに向いているのは、観光客相手の宿だけでなく、昔ながらの湯治宿が今も健在だからです。これらの湯治宿は自炊・素泊まりが基本で、1泊3000円台から。1週間滞在しても、高級旅館に1泊するより安価で済みます。

また、鳴子温泉を中心にほどよく温泉街が発展している一方で、少し歩けば山や川、田んぼなど長閑な風景が広がります。気分転換に散歩するのも楽しい温泉地なのです。

そのほか、長湯温泉(大分県)、大沢温泉(岩手県)なども、もともと湯治客の人気が高く、ワーケーションにも向いています。

長湯温泉は山あいの静かな温泉地で、全国的にも貴重な炭酸泉が自慢。適度に温泉街がにぎわっていて、ラムネ温泉館、御前湯など個性的な日帰り温泉や共同浴場も多い。比較的安価で泊まれる湯治宿がいくつかあるので、そこを拠点に湯めぐりを楽しむのもいいでしょう。長期滞在しても、温泉施設のバリエーションが多いので飽きません。

大沢温泉は一軒宿であるが、長期滞在向きの「湯治屋」が今も健在。良心的な価格であるのに、温泉の質もすこぶる高い。うれしいのは食事処や売店があり、自炊が面倒な人でも過ごしやすい点。ひとつの宿の中に衣食住の機能がコンパクトにまとまっているので、初心者でも気軽に長期滞在にチャレンジできます。

メジャー温泉地も「温泉ワーケション」に向く

空白の時間をひとりで過ごす「ソロ温泉」は、観光客が多く、にぎやか温泉街はあまり向きませんが、長期間滞在するなら話は別。草津温泉(群馬県)や別府の鉄輪温泉(大分県)、道後温泉(愛媛県)など観光地としてメジャーな温泉地も候補に入ってきます。大きな温泉地なので格安の宿も複数あるし、街が栄えているので、素泊まりでも食事に困らない。実際、草津や別府にマンションや別荘をもち、長期間滞在している人も多くいます。

ソロ温泉⑬草津温泉

長い期間滞在するのであれば、観光客が少ない時間や場所を選べるので、ソロ温泉の「ひとりの時間をつくれる」といったメリットも享受できます。

会社員にとって温泉ワーケーションは敷居が高く感じられるかもしれません。そもそも会社に制度がなければ、長期間、温泉地で滞在するのは現実的ではないでしょう。

一方で、リモートワークが当たり前になったことにより、働き方のバリエーションが増えていくことが予想されます。この機会に温泉ワーケションの可能性に目を向けてみてはいかがでしょうか。

↓↓発売中! よかったら読んでみてください↓↓



この記事が参加している募集

リモートワークの日常

サポートいただけたら大変ありがたいです。サポートは温泉めぐりの資金とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。