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「温泉ワーケーション」のワークスペース5つの選択肢

温泉地でのワーケーション(=温泉ワーケーション)は、温泉宿を拠点に仕事ができるのが魅力といえる。仕事をしたあと、すぐに温泉につかれる環境は最高である。

だが、温泉宿でのワーケーションには必ずつきまとう問題がある。ワークスペースについてだ。仕事をするスペースをどう確保するかは、ワーケーションの成果を左右するテーマといえる。

旅館の部屋でのPC作業はつらい!?

もともと温泉宿は、仕事とは対極に位置する施設である。宿泊客は仕事で疲弊した心身を休めるために温泉に入りにくるのであって、館内はリラックスできる環境となっているのが普通だ。

そもそもビジネスをする場として想定していないので、いざPCを開いて仕事をしようと不便に感じることが多い。

最も悩ましいのが、部屋の中にオフィスで使うようなテーブルやイスがないことだ。温泉旅館の部屋の多くは和室なので、畳の部屋に座卓と座椅子(座布団)が基本である。

短時間であれば、PC作業も十分に可能だが、姿勢を保つのが意外と大変だ。私の場合、30分もすると腰が悲鳴をあげて、集中力が落ちてしまう。

部屋によっては広縁にローテーブルとイスが置かれているケースもある。座卓よりはいくぶんましだが、どうしても前かがみの姿勢になるので、これも長時間の作業はきびしい。

また、電源の問題もある。古い旅館だとコンセントの数が極端に少なかったり、アダプターコードが届かなかったりする。

さらには、Wi-Fiの問題もある。ここ数年で部屋の中にもWi-Fiが飛んでいる旅館は増えている印象はあるが、データ容量が小さくてオンラインミーティングに適さない場合もある。

現状、温泉宿でワーケーションをしようとしたら、こうした問題にぶち当たることになる。

デスクワークやPC作業はほとんどせずに、アイデア出しなどの「脳内作業」が目的であれば、オーソドックスな温泉旅館でも十分だが、PC作業やオンラインミーティングを伴うようであれば、「ワークスペース」の問題は出発前にある程度クリアしておくべきだろう。

5つのワークスペース

温泉宿でワーケーションをする場合、「ワークスペース」の候補として、次の5つが考えられる。

①宿泊する部屋                           ②宿内の共有スペース                        ③近場のコワーキングスペース                    ④カフェや公共スペース                            ⑤屋外

①宿泊する部屋

前述したような問題はあるが、Wi-Fiが飛んでいれば、とりあえずPC作業をこなすことはできる。また、オンラインミーティングなどは人の目がある公共スペースでは支障があるので、個室という環境はかえってメリットになる。

「半日くらいなら座卓などでも乗り切れる」という人であれば、部屋にこもって仕事をするのもありだろう。実際私も、ほかに選択肢がなく、腰の痛みをごまかしながら自室で作業をすることが多い。

洋室であれば、作業に適したデスクやイスが備え付けられている可能性があるので、宿探しの段階で、洋室のある温泉宿を選ぶという選択肢もある。

②宿内の共有スペース

代表的なのはロビーであるが、ソファセットが中心でPC作業などには向いていない。また、人の目もあるので、オンラインミーティングはしにくいし、長時間の利用は迷惑にもなる。

宿によっては宿泊客が寛げるラウンジやライブラリーを備えているケースもあるので、他の宿泊客の迷惑にならない範囲で作業をすることも可能だろう。最近では、ワーケーションの受け入れに積極的な宿の中には、ワーキングスペースを設置する動きもある。

昔ながらの旅館や小規模な温泉施設では、そのような設備投資は難しいだろうが、連泊をするなら宿の人に率直に相談してみてもいいだろう。

ある小規模の宿に滞在したとき、座卓でのPC作業がつらかったので、食事処のスペースを借りたことがある。「昼間は誰も使っていないからどうぞ」と快諾していただいた。やはりテーブルとイスがあるだけで、集中力も作業量もアップする。

③近場のコワーキングスペース

宿泊している温泉宿に「Wi-Fiが飛んでいない」「座卓で姿勢がつらい」といった事情があって、仕事に向いていないのであれば、宿の外にワーキングスペースを求めることになる。

宿の近くにコワーキングスペースがあれば、ドロップイン(立ち寄り利用)で利用するのも選択肢のひとつ。

当然、Wi-Fiも飛んでいて、PC作業もしやすい環境なので、仕事も捗るだろう。オンラインミーティングも可能であるし、個室を備えていればなおよしである。

近年はワーケーションが観光・地域活性化の起爆剤として期待を集めているため、コワーキングスペースが新設される温泉街が増えている。インターネットで「温泉地名+コワーキングスペース」で検索すれば、これに関連した情報を見つけるのは容易だ。

お目当ての温泉地があるなら、コワーキングスペースの有無をまずは調べてみるといいだろう。

④カフェや公共スペース

コワーキングスペースが温泉宿の近くにないなら、カフェや公共スペースが選択肢となる。

カフェといっても、スタバのようなPC作業に適したチェーン店がある温泉地はほとんどないため、地元の小さなカフェや昔ながらの喫茶店などが候補となる。

なによりテーブルで作業できるのはありがたい。素泊まりで滞在しているなら、カフェでご飯をいただくついでにPC作業をするという手もある。

ただし、長時間の利用はマナー的に問題があるし、Wi-Fiが飛んでいないケースもある。あくまでも旅館での作業に行き詰まりを感じたときなどの一時利用が現実的だろう。

カフェよりも広く開放された「公共スペース」のほうが使い勝手がよいかもしれない。たとえば、福島県のいわき湯本温泉の最寄り駅「湯本駅」の2階には、無料で利用できるワーキングスペースがある。

いわき湯本温泉ではワーケーションプランを売りにしている宿も多い。ワーケーションの受け入れに積極的な温泉地には、公共スペースをワーキングスペースとして開放しているケースがあるのでうまく活用したい。

⑤屋外

ワーケーションを取り上げた記事を読んでいると、海岸の砂浜の上や緑豊かな高原の風景の中でノートPCを広げているイメージ画像が使われていることがある。

ワーケーションといえば「自然の中で優雅に仕事」というイメージなのかもしれないが、実際にやってみると難しい。

屋外だと日が当たってPC画面が見づらいし、Wi-Fiが飛んでいない場所がほとんど。真夏や真冬は論外だが、天候が穏やかな季節でも、日差しが強い日は暑いし、逆に曇天だと肌寒い。外に数時間座って仕事するのに適した天候は意外に少ない。

アイデアを練るといった脳内作業なら問題ないが、屋外でPCを使ってがっつり仕事をするのは現実的ではない。

屋外でおすすめできるのは足湯。散歩のついでにちょっと考えごとをするにはちょうどよい塩梅である。

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以上、温泉地におけるワークスペースについて検討してきたが、現状ではまだ不便を感じるケースが多い。

だが、テレワークやワーケーションの普及によって、温泉地でも少しずつテレワーカーを受け入れる環境が整っていくと予想される。ワーケーションに積極的な温泉地ではコワーキングスペースやWi-Fiの配備も進んでいる。将来、温泉ワーケーションが定着・普及するかどうかは、受け入れる側の環境整備にかかっている面がある。今後の展開に期待したい。


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