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絶景温泉200#14【恐山温泉・地獄と極楽が共存する風景】

新しくスタートした連載「絶景温泉200」。著書『絶景温泉100』(幻冬舎)で取り上げた温泉に加えて、さらに100の絶景温泉を順次紹介していこうという企画である。

第14回は、恐山温泉・地獄と極楽が共存する風景(青森県)

青森県の下北半島に位置する「恐山」といえば、日本三大霊場のひとつとして知られる死者の供養の場。亡くなった人の魂を降ろすとされる「イタコ」でも有名だ。

「恐山=近寄りがたい場所」というイメージがあるかもしれないが、実は豊富な源泉が湧く温泉地でもあることは、あまり知られていない。

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実際、恐山菩提寺の境内に足を踏み入れると、荒涼としたガレ場のいたるところから、もくもくと火山性ガスが噴き出しているのを目にする。いわゆる「地獄」地帯である。

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火山活動は地球の偉大なエネルギーを感じさせる現象でもある。見方によっては、大地のパワーに満ちている場所ということもできるだろう。

しかも、境内はどことなく神秘的な雰囲気に包まれており、心がスーッと清らかになっていく感覚さえある。死者を供養する霊場でありながら、恐山がテレビや雑誌などでパワースポットとして紹介される理由もなんとなくわかる気がする。

恐山の境内には、「古滝の湯」「冷抜(ひえ)の湯」「薬師の湯」「花染の湯」という4カ所の無人の浴場があり、参拝者は入山料を支払えば、自由に入浴することができる

最初に浸かった冷抜の湯は、総木造の素朴な佇まいがすばらしい。浴室内は脱衣所と2つに仕切られた湯船のみのシンプルなつくりで、もちろん浴室の床や湯船も木造である。

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石やタイルの湯船と比べて木の湯船はぬくもりがあり、肌にやさしいので、そのような浴室を発見するとテンションが上がる。誰もいなければ、ごろりと木の床に寝転がりたくなる。

湯船には緑色をおびた白濁湯がかけ流しにされている。茶色の木材とのコントラストも美しい。

とても存在感のある上質の湯。酸性泉なのでピリリと肌を刺すような感覚が特徴だ。また、つんと鼻を突くような硫化水素の匂いが強烈で、窓を開けていないと、火山性ガスが滞留して危険である。

続けて薬師の湯に浸かる。冷抜の湯と同じ総木造の簡素な湯小屋だが、薬師の湯のほうが若干湯船は大きい。誰もいない浴室で極楽気分を味わっていると、心が浄化されていくような感覚となる。

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温泉で身を清めたら、菩提寺を参拝し、境内に位置するカルデラ湖「宇曽利湖」まで歩いた。そこには、それまでの地獄を彷彿とさせる風景とは対照的な風景が広がっていた。

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青く輝く湖面と美しい白浜が広がる光景は、「極楽浜」と呼ばれているように天国を連想させる。ひとり浜にたたずみながら、「恐山は地獄でなく極楽だ」とひとりごちた。

ちなみに、境内には宿坊「吉祥閣」があり、宿泊も可能だ。プールのようなサイズの巨大な内湯もある。宿坊という性格上好みは分かれるかもしれないが、貴重な湯浴み体験ができるのは間違いない。

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