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「温泉ワーケーション」の食事で失敗しない4つの選択肢

ワーケーション中の愉しみのひとつが、現地でいただく食事だ。ただ、温泉地での連泊を基本とする「温泉ワーケーション」では、食事にも戦略が必要となる。4つの選択肢から考えてみよう。

連泊中の食事にまつわる4つの選択肢

宿や旅先でいただく食事は、旅の愉しみのひとつである。普段の旅行であれば、少し贅沢をしてでも好きなモノを食べるのが正解、というのが私の見解だが、温泉ワーケーションの場合は少々話が違ってくる。

温泉ワーケーションは「連泊」が基本コンセプトだからだ。連日、好き放題に食べていたら予算が膨らむ。旅館で出される豪華な会席料理を毎日食べるのもしんどいだろう。

では、「温泉ワーケーション」で連泊をする場合、滞在中の食事はどうするのが正解だろうか。選択肢は大きく分けて4つある。

①宿で提供される食事をいただく                   ②外食する                             ③スーパーやコンビニで調達する                   ④自炊する

①宿で提供される食事をいただく

いちばんラクチンなのは、①宿で提供される食事をいただくケースだ。2泊、3泊くらいであれば、予算内に収まる範囲で食事付プランにするという選択は考えられる。

滞在先で食事の心配をしなくて済むのは大きなメリットだが、問題もある。

1つめは、食事付にすると予算が高くつくこと。素泊まりと比べて、食事がつくと宿泊費が倍になるケースは珍しくない。

2つめは、食べすぎて不健康になること。一般的な旅館で供される食事は、基本的におもてなし料理なので量が多い。「少ない」と不満を言われるよりは、「多めに出したほうが安心」という保険の意味合いもあるだろう。

いくらおいしくても、毎食ボリューム満点の食事を摂っていると、いい加減飽きてくるだろうし、体重増の不安が頭をもたげる。豪華でおいしい旅館料理は、たまに食べるから満足度が高いのである。

3つめは、宿の料理が口に合わないこと。私は好き嫌いがないので、なんでもおいしくいただけるが、苦手な食材や料理がある人は相性の良し悪しも重要になる。たとえば、山の幸が自慢の宿に、山菜が苦手な人が泊まったら、お互いに不幸である。

「温泉ワーケーション」は長期で滞在したほうが、心身の健康面でも仕事の成果の面でも効果的であることを考えれば、これらの問題は看過できない。

「湯治プラン」という選択肢

では、「温泉ワーケーション」では、食事付プランを選ぶのはご法度なのだろうか。いや、そんなことはない。

上記は、一般的な旅館に連泊する場合に起きる問題である。湯治系の宿を選べば、こうした問題をクリアできる可能性がある

温泉旅館のなかには、長期滞在を前提にして「湯治プラン」「長期滞在プラン」などを用意しているところもある。

こうした宿では、通常よりもボリュームの少ない食事に替えてくれたりする。そのぶん宿泊料金も安い。長く宿泊するほど料金が安くなるのも、この手の宿の特徴である。

先日、私が温泉ワーケーションを行ったカルルス温泉の鈴木旅館も、まさにそのようなタイプの宿である。湯治プランなどと銘打ってはいないが、夕食膳は5品か7品を選べるようになっている。

ちなみに、次の写真が鈴木旅館の夕食と朝食。毎回メニューが異なり、おいしくいただいた。

鈴木旅館の夕食(5品)。これに鍋物が1品付く
鈴木旅館の朝食

私は鈴木旅館での5日間の滞在中、1泊2食付き(5品)プランを選択した。さすがに普段の食事よりもボリュームがあるので、昼食は抜くことにしたが、結果的にちょうどよい食事量だった。毎回ご飯をおいしくいただけるのは、長期滞在においては重要である。

何もしなくても食事が用意されるのは、やはりとても快適である。予算との兼ね合いもあるだろうが、ワーケーションの滞在先で、こうした湯治系の宿を探してみるのも選択肢のひとつである。

〈鈴木旅館での温泉ワーケーションの様子はこちらから〉

②外食する

2つめの食事の選択肢は、②外食する。この場合、宿は素泊まりで予約し、食事は外で済ませる。

これは、かなり現実的な選択肢である。素泊まりであれば、連泊しても予算を安く済ませることができる。これは大きなメリットだ。

一般的な旅館で食事付きのプランにすれば、素泊まりよりも平均4000円~8000円ほど料金がアップする。一方、外食であれば1000円以下。お酒を飲んで少し贅沢しても3000円くらいで収まるだろう。

また、湯治宿やビジネス系ホテルだけでなく、一般的な旅館でも、素泊まりプランを用意しているところは多いので、宿の選択肢も広がる。

食やグルメは旅のいちばんの楽しみだ、という人は多い。私も温泉地に宿泊するときは、素泊まりを選んで、食事は温泉街の食堂や居酒屋でいただくこともしばしば。旅先でふらっと立ち寄る飲食店の味や雰囲気、人との出会いも楽しみのひとつである。

以前、ながぬま温泉(北海道長沼町)で温泉ワーケーションをしたときは、街の中心街に宿泊施設があり、徒歩圏内に多くの飲食店が営業していた。気になるお店で食事をするのも滞在中のひそかな悦びとなっていた。

〈ながぬま温泉でのワーケーションのグルメ関連記事はこちら〉

「食事難民」になる可能性も

ただし、外食を選ぶ場合は注意点もある。滞在する宿の近くに飲食店がないと、このプランは成り立たない。食事難民になってしまう。車があればなんとかなるが、もし持っていても遠出するのは少し面倒ではある。

したがって、ある程度、規模の大きい温泉街を選ぶか、事前に飲食店の有無をチェックしておく必要がある。

先述した鈴木旅館のあるカルルス温泉は、旅館が並ぶだけの小さな温泉街で、飲食店は一軒もなかった。だから、宿の食事付プランを選ぶことになった。

「温泉ワーケーション」において、外食は有力な選択肢のひとつだが、周辺環境に左右されることは否めない。

③スーパーやコンビニで調達する

これは、「宿には素泊まりで投宿し、外のお店で食事を調達してくる」という戦法である。

基本的には「②外食する」と同じで、素泊まりにする分、宿泊費をリーズナブルに抑えられるのが大きなメリット。スーパーやコンビニ、個人商店、道の駅などで弁当や総菜を調達すれば、外食よりもさらに安く食費を抑えることも可能だ。

現地のスーパーや道の駅にはそれぞれ特色があるので、その土地ならではの食材を物色するのも楽しい。

一方、デメリットとしては、その土地のグルメを十分に堪能できないことが挙げられる。ワーケーションといえども、目的の半分は旅である。せっかく遠く離れた地にやってきたのだから、現地の名物に舌鼓を打ちたいところだ。

また、弁当や総菜ばかりだと、どうしても栄養が偏る。せっかく温泉で心身をケアしているのであるから、食事にもできるかぎりの注意を払いたい。そもそも、出来合いのものばかりだと味気ないし、飽きてもくるだろう。

だが、こうしたデメリットは、②外食と組み合わせれば、比較的簡単に解決できる。懐具合との相談になるだろうが、たとえば1日おきに外食するようにすれば、その土地のグルメも味わえるし、栄養面でもだいぶマシである。

ただし、スーパーやコンビニで調達するといっても、宿の近くにお店がなければ計画倒れになってしまう。そういう意味では、ある程度の規模をもつ温泉地か、近くに住宅街があるような温泉地にかぎられるだろう(車で買い出しに出かけるという手もある)。

④自炊する

最後に、④自炊するという選択肢はどうだろうか。

4つの選択肢のなかでは、最もハードルが高いかもしれない。自炊ができる宿は限られるからだ。

自炊ができる温泉宿の代表格は湯治宿である。昔ながらの湯治は長期間の滞在を前提としているため、宿には自炊設備が用意されていて、湯治客はおのおのが食材を持ち込んで調理する。湯治客同士で料理を融通し合うのもよく見られる光景である。

私が最初に温泉ワーケーションを行った川渡温泉の高東旅館も湯治宿である。私は炊飯器を持ち込み、簡単な料理をこしらえたほか、隣室の湯治客のおばあさんから料理をごちそうになったこともあった。

〈そのときの記事はこちらから〉

温泉ワーケーションでは湯治宿での滞在も推奨するが、Wi-Fi環境が整っていないケースがあるなど、初心者には少々ハードルが高いかもしれない。

また、毎回自分で食事をつくることに煩わしさを感じる人、もともと料理ができない人は最初から候補に入らないだろう。

だが、温泉ワーケーションに慣れてきた人には、ぜひ自炊にもチャレンジしてみてほしい。特に都市部で働くビジネスパーソンにとっては、現地で食材を調達して、宿で調理して食べるというプロセス自体がレジャーとなり、忘れられない思い出となるかもしれない。

民泊やゲストハウスという選択肢もある

湯治宿以外の選択肢もある。温泉地によっては長期滞在を前提としたキッチン付きの部屋を備えた宿泊施設も存在する。別府や草津といった大きな温泉地にはそのようなアパートメントタイプの長期滞在者向け宿泊施設があるし、先日、私が訪ねた卯の花温泉「The H」(山形県)には、マンションの一室のような部屋にキッチンやレンジがついていた。

〈卯の花温泉の記事はこちらから〉

最近では「Airbnb」のような民泊施設、定額住み放題サービス「ADDress」が提供する宿泊施設など、キッチン付きの自宅に泊まれる機会も増えている。また、近年急増しているゲストハウスにも共同キッチンを備えたところが多い。

あくまでも物件が温泉地の近くになければ「温泉ワーケーション」は成立しないが、選択肢のひとつとして検討してもいいだろう。

正解はひとつではない

以上、4つの選択肢について検討してきた。

①宿で提供される食事をいただく                   ②外食する                             ③スーパーやコンビニで調達する                   ④自炊する

もちろん、どれか1択が正解というわけではない。それぞれにメリット・デメリットがあるし、ワーケーションをする人の好みや予算、受け入れる温泉地の環境にもよるだろう。

ただ、私の個人的な意見を言えば、ワーケーションといえども、食事は旅を構成する重要な要素である。せっかくなら、できる範囲で食べることも楽しみたい。

そのためのコツは、臨機応変に先の4つを組み合わせることだろう。

できるだけ安価に抑えたいなら、現地調達や自炊を中心にしながら、時折外食でその土地の味を楽しむ。食事を提供している宿なら、1泊分は食事をつけてもらうことも可能だろう。

逆に、食事を調達する手間を省きたいなら、基本的に宿に任せてしまう。でも、滞在中の何泊かは素泊まりにして、外の飲食店で食べるというアレンジがあってもいい。

なお、外食や自炊を選択する場合でも、できれば朝食は宿が用意したものを食べたい。予算や宿にもよるだろうが、朝から食事を用意するのは大変だし、しっかりとした朝食を摂って、気持ちよく一日をスタートさせたい。その場合、宿の食事は量が多く、腹持ちがいいので、昼食を抜くという選択肢も浮上してくる。

何事も経験である。ぜひ「温泉ワーケーション」を体験し、自分に合った食事のパターンを見つけだしてほしい。

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