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ワーケーションの温泉地は「泉質」で選ぶ

温泉地に連泊する「温泉ワーケーション」では一日に複数回、温泉に浸かることになる。

だからこそ、温泉との相性が重要である。宿や浴室の雰囲気、設備も判断材料となるが、温泉の「泉質」で宿を決めるという選択肢もある。

「湯あたり」に要注意

ひと口に「温泉」といっても、自然由来である温泉には個性があり、ひとつとして同じ温泉は存在しない。自分の心や体にマッチする温泉に出会えれば、温泉ワーケーションの滞在がより充実したものになるだろう。

では、温泉ワーケーションに適した泉質は存在するのだろうか。

簡単にいうと、「やさしい湯」である。

温泉ワーケーションが、連泊して一日に何度も温泉に入るスタイルであることを考えれば、注意すべきは「湯あたり」である。

温泉に入りすぎると、頭痛や吐き気、倦怠感などを覚えることがある。私は今ではすっかり体が慣れてしまったが、最初のうちは湯あたりの症状に苦しんだものだ。せっかく温泉でリラックスするために来たのに体調が悪くなって仕事に支障が出てしまったら残念である。そういう意味では、初心者には湯あたりのしにくい「やさしい湯」が向いている。

やさしい湯の代表格は「単純温泉」

やさしい湯の代表格が、初心者にもおすすめできる「単純温泉」という泉質だ。源泉は温泉法によって、「塩化物泉」「硫黄泉」「酸性泉」など10の泉質に分けられているが、そのひとつである。

単純温泉は、日本ではいちばん多い泉質で、全体の約3割を占める。歴史ある名湯にも単純温泉は多い。たとえば、全国的に名の知れた箱根湯本温泉や道後温泉、修善寺温泉、鬼怒川温泉、飯坂温泉なども単純温泉である。

「単純温泉」という言葉から、シンプルで特徴のない湯をイメージする人は多いだろう。単純温泉の定義を簡単にいえば、「泉温が25℃以上ありながら、溶存物質(温泉に溶け込んでいる成分量)が1000mg/kgに達していない源泉」である。

溶存物質(ガス性のものを除く)とは、温泉の「濃さ」「強さ」を示すバロメーターである。1000mg/kgを超えると、塩化物泉や炭酸水素塩泉、硫酸塩泉などに分類されるが、これらのポピュラーな泉質と比較すれば、温泉に含まれる成分が少ないのは事実だ。

だからといって、単純温泉の価値が低いというわけではない。市販されている入浴剤に含まれる成分は150~250mg/㎏に相当するものが多いとされているので、単純温泉であっても、入浴剤よりも薬理効果が期待できる湯がほとんどである。また、単純温泉であっても濁っていたり、強烈な香りを放っていたりと、個性が強烈であるケースも多い。

単純温泉といっても、決して「単純」ではないのだ。

温泉分析書の「溶存物質」に注目

泉質については、温泉地や旅館のウェブサイトなどを見れば、おおかたの湯の特徴をつかむことができるが、もう少し温泉の個性をくわしく知りたければ、温泉分析書を確認する必要がある。温泉分析書は脱衣所になどに掲示してある、いわば源泉の自己プロフィールのようなものだ。

そこにはさまざまな情報が記載されていて、素人目には意味不明に思えるかもしれないが、そこには泉質名が記されていて、どんな成分が含まれているかも一目瞭然である。

温泉マニアであれば、その成分構成を読み解くのも楽しみであるが、温泉初心者であれば、「溶存物質」の欄に注目してほしい。これが1000mg/kg未満であれば、「単純温泉」に分類される。

ただ、「単純温泉でなければやさしい湯ではない」と言い切ることはできない。溶存物質が1000mg/kgを超えると「塩化物泉」「炭酸水素塩泉」「硫酸塩泉」といった塩類系の泉質に区分されるが、それらの湯でも「やさしい湯」はたくさんある。

極端な話、999mg/kgの湯と1001mg/kgの湯では、泉質名は明確に区分されるが、成分的にはほぼ同じである。泉質名に振り回されてはいけない。

「単純温泉が絶対」ではない

私の肌感覚では1000~3000mg/kgの湯でも、やさしい入浴感の湯はたくさんある。「単純温泉が絶対」というわけではない。

また、選んだ源泉が、仮に3000mg/kgを超える「濃い湯」であっても、温泉ワーケーションに向いていないわけではない。「入浴の時間を短めにする」「初日は入浴の回数を少なめにして徐々に体を慣らす」といった調整をすれば問題ない。溶存物質が多いということは、温泉成分が濃厚で、それにふさわしい効能を得られるというメリットもある。

温泉ワーケーションの湯を選ぶときは、温泉の濃さや強さに注目するといいだろう。

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