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絶景温泉200#4【白鳥温泉・上湯】

新しくスタートした連載「絶景温泉200」。著書『絶景温泉100』(幻冬舎)で取り上げた温泉に加えて、さらに100の絶景温泉を順次紹介していこうという企画である。

第4回は、白鳥温泉の上湯(宮崎県)

宮崎県と鹿児島県の県境にまたがる霧島連山。20を超える火山群の中でも最高峰の高さを誇る韓国岳のすそ野、標高1200mに位置するえびの高原は、トレッキング愛好家に人気の景勝地だ。

3つの火口湖をめぐる探勝路は赤松林が美しく、目の前をニホンジカが走り抜けるほど自然豊かである。二湖パノラマ展望台に立てば、標高1700mの韓国岳、円錐形がユニークな甑岳のほか、白い水蒸気が激しく噴き出している硫黄山も見える。まるで大地が呼吸しているかのようだ。

トレッキングのあとに入る温泉は最高である。宮崎県側へと道を下っていくと白鳥温泉が湯煙をあげている。上湯と下湯の2つの入浴施設があるが、絶景が自慢なのは標高830mに位置する上湯のほうだ。

征韓論に敗れた「西郷(せご)どん」こと西郷隆盛が、心身を癒やすために1874(明治7)年7月から3カ月間逗留した湯としても知られる。

あつあつの湯がかけ流しにされる内湯もよいが、露天風呂は源泉かけ流しであるうえに、開放感が抜群である。

白鳥温泉③

岩づくりの湯船には目隠しとなる柵がないため、眼下には加久藤盆地に広がるえびの市街を一望できる。その奥にそびえるのは九州山地である。これほど視界が抜ける露天風呂は、そうないだろう。新緑の季節も好きだが、紅葉の時期がベストシーズンかもしれない。

ちなみに、加久藤盆地は、えびの市と小林市にかけて広がる東西約15km、南北5kmのカルデラ盆地。阿蘇のカルデラもそうだが、長い歴史を経て火山でできたカルデラの中で人が生活を営んでいることに不思議な感覚になる。

泉質は「単純温泉」だが、弱酸性で黄褐色の濁り湯は、酸味と金気が感じられ、湯船や床は赤銅色に染まっている。むしろ「複雑」系といえる。

源泉の湧出形態も個性的だ。施設のスタッフいわく、「裏山の地獄地帯に人為的に山水を加え、地下でブレンドされたものが湧き出している」とのこと。そのため、雨が降ると地獄で熱せられる水の量が増え、泉温が高くなるそうだ。

入浴後に徒歩数分の距離にある地獄地帯を訪れてみると、もくもくと水蒸気が上がる荒涼とした光景が広がっていた。温泉が火山エネルギーの賜物であることをあらためて実感できる。

白鳥温泉④A

別棟には「天然蒸し風呂」もある。蒸し小屋の直下にある地獄の蒸気がそのまま充満していうというからワイルドである。サウナの類は苦手だが、天然の温泉蒸気を利用しているからか、息苦しさがなく、体の芯まで温まる。たっぷり汗をかいたら、もう一度温泉へ。あまりの気持ちよさに、このルーティンがくせになりそうだ。

ちなみに、さらに山を下ったところにある「下湯」は広めの内湯や森林浴を楽しめる露天風呂のほかに、スポーツを楽しめる広場やアスレチックもあり、ファミリー向けの施設といえる。

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