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無駄なことなんていっこもない

中学時代の自担で、同時に今のところ唯一の“殿堂入り自担”である、関ジャニ∞の安田章大さんの主演舞台を観てきた。

生身の姿を見るのは、4年前の札幌ドームぶり。あの時あまりにもかっこよくて、この姿を最後にしたいと思って、その後の東京ドームも行こうと思えば行けたけれど行かなくて、オーラスまで終わった後に錦戸が脱退して、それっきり。それ以来。

2023年8月5日14時開演、タイトルは『少女都市からの呼び声』。「紅(あか)テント」と呼ばれるテント芝居を主宰して1960年代後半からのアングラ演劇を牽引した、唐十郎が原作。


その2週間前、職場に1冊のカルチャー誌が届いた(いろんな本が届く仕事をしている)。

まずバーノンさんの前の自担・松村北斗が載っていて、そこをパラ〜ッと見た後に、後ろのほうに安田さんが載っているのに気づいた。

オレンジ色の照明の中、息が詰まるほど濃密な色気を湛えた目。直視するのも怖いくらい。

私はそのインタビューで初めて、安田さんが舞台をやることと、唐さんの息子さんと仲が良くて何度も紅テントに行くほどハマっていることを知った。

唐さんの作品を語る安田さんの言葉に、(私の言葉選びが軽くなってしまうけれど)脳汁がどばどば溢れて止まらなかった。「私はこんな文章が読みたかった」。普段CARATの友達をスペースに呼んで話を聞いて、ちょっとずつ摂取しているものを、1年分くらい一気飲みしてしまった。

その15分後にはチケットを取っていた。


私は今年の5月に初めて紅テントに行った。安田さんとは全然関係がない。たまたま最寄り駅までの道にポスターが出ていて、行こうと思ったのだ。

うちの父親が演劇関係の仕事をしていて、学生時代は唐さんがバリバリやっていた頃の紅テントに通っていた人で、私もいつか観てみたいなと思っていた。

3年半前、私は成人式に行かないで、大学の近くの映画館で寺山修司と松本俊夫の4本立てを観た。そのうちの1本、松本俊夫の『修羅』に若き日の唐十郎が出ていた。お世辞にもイケメンとは言い難いのに、恐ろしいほどの色気。「こんなにもかっこいい人がいるのか」。寺山作品が観たくて行ったのに、完全に唐十郎の虜になって帰ってきた。

正直私は安田さんほど唐作品にシンパシーを感じてはいない(すごく面白いけど)。それでも私の中で「唐十郎」が少し特別なのは、成人の日にうちのめされたあの感覚がずっと残っているからだ。


『少女都市からの呼び声』は、安田さんというより作品を観ていた。昔の作品だけど、この時代に必要な作品だと思った。このnoteの本筋からは外れるので詳しいことは割愛する。舞台の話をしているスペースの録音があるので興味があったら聴いてみてほしい。


安田さんは相変わらず、生で見ても存在しているのかどうかよくわからない。SEVENTEENは確かにそこにいる人間だと思えるのに。中学時代の私には、テレビの向こうの存在を自分と同じ一人の人間だと認識するほどの力がなかった。まだスマホも持っていない、有料ブログにも課金していない、なんなら大人がよくわからなかった。


今年の初めに思い立って聴いたすばるさんの曲「2021.01.23」で、初めて「関ジャニ∞の渋谷すばるは私と変わらない1人の人間だったんだ」と感じてうちのめされた。

2月にすばるさんの野音のライブに行った。すばるさんは相変わらず神様で、ソロアーティストになってもどうしようもなくアイドルだった。だけどMCでぜんっぜんしゃべれていなくて、うわあ、この人がよくアイドルなんてやれてたな、と思った。脱退した時は寂しかったけれど、その時、この人があんなに長い年月アイドルをやってくれていたことのほうが奇跡や、とわかった。アイドルは当たり前にアイドルなんだと思っていた。全然そうじゃなかった。


関ジャニ∞は中学の時に一番見ていて、高校はちょっとHey!Say!JUMPに浮気して、大学1年で出戻ったらすぐすばるの脱退が発表されて、1年間は忙しすぎてあんまりオタクらしいことはしてなかったけど大病を経た安田さんの言葉はたくさん摂取していて、年明けにSixTONESを好きになって、それから大学いっぱいSixTONESだった。SEVENTEENに出会ったのは大学4年生の夏。

そりゃ関ジャニ∞を基準に考えたら浮気もしないでずーっとエイトだけ追ってたほうがよかったかもと思うけど、今の自分が関ジャニ∞と元関ジャニ∞だった人たちを見ると、いろんなアイドルを見てきていろんなファンダムと関わってきてよかったなと思う。

じゃなかったら関ジャニ∞は永遠に平面のキャラクターだったかもしれない。

自分の中で封印していた2人の脱退も、残った5人のことも含めて、こうだったのかなとか、そりゃ居られんよなとか、そりゃ不安やったよなとか、それでもみんなに関ジャニ∞の血が流れてるよなとか、7人それぞれを1人の人間として考えられるようになった。

詳しくは書かないけど、Hey!Say!JUMPの山田涼介を通して自己と向き合うことを覚え、SixTONESの松村北斗を通して他者と向き合うことを覚え、SEVENTEENのバーノンさんと一緒に、他者とともに生きることを自分の中で育んでいる最中だ。

この過程がなければ薄っぺらな人間だったと思う。今の自分でもう一度関ジャニ∞を考える機会をもらえてよかった。


8月11日に安田さんのアナザースカイが放送された。部屋を真っ暗にして、中米のベリーズという海のきれいな国だったのだけれど、私もベリーズにいるような気持ちで見ていた。潮の匂いがしていた。だから番組が終わってきったない自分の部屋に連れ戻された時の落胆ったらなかった。(笑)


安田さんはちょうどすばるが脱退する直前の時期、脳の腫瘍を患って、生死にかかわる手術をした。後遺症で、気絶するかもしれないから大好きなダイビングができなくなった。

ヤスといえば海。ヤスといえばダイビングだった。しょっちゅう沖縄に行って潜っている人だった。病気と手術のことを知って、二度とダイビングができないと知った時、いや今でも、ファンごときが体を切り裂くような痛みを覚える。あんなに好きだったことが死ぬまでできないなんて。私だったら二度と本を読めないとか、二度と文章を書けないとかそういうことだ。アナザースカイで、安田さんもやっぱり「絶望」と言っていた。しかもその絶望は、なくなるものではない。絶望はどうしても絶望だ。

安田さんはこの番組で、若い頃に訪れて人生の転機になったベリーズで、ダイビングはできないけれども、浅い海でシュノーケリングをした。病気をして以来、海に触れたことがなかったという。私が大学に入って、卒業して、就職するまで、一度も、と思うと、途方もない。

それなのにあの人はどうしてずっとニコニコ笑っているんだろう。絶望の話をしながら、ずっと微笑んでいるのだ。声も優しい。いつもカメラの向こう側のこっちの顔が見えているみたいに笑いかけてくる。スタッフさんにも、現地の人にも物腰柔らかで積極的。安田さんみたいな人のことを、まさしく「オープンマインド」と言う。

私は社会人になってからというもの、人見知りが加速してしまった。人見知り、いや人嫌い? 人ビビリ? 人恋しいのに、世界全部に拒絶されているような気がして、こっちから拒絶したり。特にここ半年強ずっと不安定だった。不安だった。どこにも居場所がないような気がしていた。安田さんが眩しかった。あんなふうになれればと思った。


安田さんはずっときらきらしている。私は全く泳げなくて中学の頃は海になんて近づきたくなかったけれど、安田さんの肩越しに見る海はきらっきらしている。中学の頃はファッションにも興味がなかった。だけど安田さんの着ていたタイダイTやサルエルパンツやムートンブーツはきらっきらしていて、ヤスが着ている・ヤスの周りにある・ヤスが好いてる、それだけで何もかもがきらっっっきらして見えた。

今ではわりあい慎重に人を好きになるけれど(バーノン単推しになるまで半年近くかかった)、小学6年生の頃、嵐にしやがれにゲストで来ていた関ジャニ∞のあの子が心をくすぐって忘れられなくて、こっそりデフォルメの似顔絵を描いて切り取って、名札の裏に入れたこと、忘れないでいたい。あんなに直感的に人を好きになることは、きっともう二度とないから。


安田さんは絶望すらもきらきらに変えてしまう。それは決して絶望でなくなったんじゃなく、絶望のままひかっているのだ。割り切れないものを割り切らないまま、絶望のある世界を愛して抱きしめて生きていく人。清濁混ざり合った世界を、肌いっぱいに感じて泳いでいく人。

安田さんを見ていたら、なんだかだんだん大丈夫になってしまった。


私は私1人では、自分の好きなものに自信がなくなることが多い。人が求めることをしなくてはいけないんじゃないかとか、効率が悪いとか、生産性ないとか、芸術なんて必要ないとか。感情なんて必要ないとか。感情がないほうが何かとうまくいくじゃん、とか。

だけど安田さんの背中を見ていたら、この人にときめくくらい、この人が海や演劇にときめかすような心を私の中でときめかせたいと思う。いや思ってない、体がそう叫んでる。

SEVENTEENはめちゃくちゃ希望のグループだけど、私が今希望を信じられるのは、もう100パー、安田さんのおかげだ。人生に安田さんがいなかったら、今頃私はどうなってたんだと想像すると、肝が冷える。

小6の私、本当にグッジョブで天才と思う。


安田さんのインタビューを読んだ時、直感で「私の親や」「私、この人に生んでもらったんや」と思った。本当のお父さん・お母さんにはちっとも似ていない。父でも母でもない、3人目の親だ。

そしてアナザースカイを見ながら、「おかあさん」と「おとうさん」の間にある呼び名で呼びたいと何度も思った。そんな日本語は存在しない。でも呼びたいのだ。親なんていう客観的な言葉じゃなくて。お………… 残るのは情動だけ。

もし本当のお父さんとお母さんだけから生まれていたら、今と全然違う人生になっていただろう。たかがアイドル、だけど私の人生は安田章大から始まったのだ。まちがいなく。


安田さんを好きだからこそ、バーノンさんを好きになった。安田さんと同じように、芸術の力を信じている人。ロックが好きな人。エレキギターの音が好きな人。誰にでもオープンに、フラットに接する人。人が好きな人。だけど、安田さんよりは私に似ていて、人に対して臆病な面も持っている人。安田さんの希望を信じながら、私はバーノンさんと一緒に、ままならない私自身とどうにかやっていけると思う。

バーノンさんがソロ曲の「Black Eye」を出した時、どうしようもなく「自担だ」と思った。

この2週間で関ジャニ∞の楽曲をたくさん聴き返したのだけれど、やっぱり関ジャニ∞はロックバンド。特に渋谷すばると安田章大は、ごりっごりのロックの人。私もなんでかわからないけど、何がロックかもよくわかってない小6中1やそこらの頃から、関ジャニ∞のロックナンバーが好きだった。「強情にGo!」「ゴリゴリ」「情熱Party」「BOY」「『って!!!!!!!』」。

人は14歳の頃に聴いていた音楽に生涯影響を受けるという。私にとってのそれは、まちがいなく関ジャニ∞だ。

関ジャニ∞を聴いていたおかげで、私はバーノンのロックに「自担だ」と思える。


中学の頃、音楽なんてまったく詳しくなくて、関ジャニ∞しか聴いていなかった。

でも関ジャニ∞のメンバーはみんな音楽好きで、ブルーハーツやら、ミスチルやら、ゆずやら、斉藤和義やら、RIZEやら、いろいろルーツがある。楽曲提供もだんだんめちゃくちゃ豪華になっていってる(7人体制最後のアルバム『ジャム』なんかエグいよ、星野源(ニセ明名義)蔦谷好位置いしわたり淳治BEGIN岡崎体育ユニコーン水野良樹おまけに渋谷錦戸作曲が1曲ずつに安田作曲が2曲入ってますからね、もう何?)。関ジャニ∞を聴くだけでそこに膨大な邦楽が詰まってる。なんて素晴らしい音楽体験。


最新シングル『オオカミと彗星』のカップリング曲で、アジカンの後藤正文さんが楽曲提供した「生きてる僕ら」の1コーラスの動画が公式Twitter(Xか……)に上がっていた。

もともとアジカンはけっこう聴くほうなので、もうそこからヤッター! になった。聴いてみた。

夢のなかで 僕らは生きて
いつか夜に 魔法が溶けて
思い出したように大人になってさ
多くのことを忘れてしまう
それでも確かに 僕らは生きて
こんな夜に 魔法をかけた
綺麗さっぱり忘れてしまっても
僕らは君の何処かで光るから

生きてる僕ら - 関ジャニ∞

私のための歌だと思った。安田さん、私の中でむちゃくちゃひかってるよ。

安田さんをどう好きだったのかずっと忘れてた。時間が経ちすぎて。ただ「可愛い」とだけ思ってたような気がしてた。でも全然違った。安田さんに触れて、一瞬で蘇った。全部全部。体全部で安田さんが好きだったこと。今だって安田さんが大好きなこと。

生きてる生身の人間が魔法をかけてくれるんだ。それがアイドルってものなんだ。「アイドル」をこんなに美しい言葉で、容赦なく、苛烈なほどまっすぐに書いた歌詞を、私は他に知らない。

4年ぶりに関ジャニ∞のCDを買った。

同じくカップリングに入ってるキャンジャニちゃんの「∞月のメモリー」が良すぎて、そればっか聴いてる。キャンジャニちゃん8周年ってマ!? 私がeighterになった時まだ関ジャニ∞が8周年だったのに……??


安田さんは、「ボクの体験を伝えることで、それが誰かのきっかけになれば」と、病気のことをいろいろな形で積極的に発信している。自分の絶望までカメラの前に晒している。

今はメディア関連で起こる問題とか、芸能人、特にアイドルの人権問題とか、いろんな問題があって、発信することや受け取ることに慎重にならざるを得ない時代だ。

だけど安田さんがこうしてメディアの希望を口に出して、体を張って、人生賭けてそこにいてくれることで、私みたいに救われる人間がいる。

安田さん、きっかけどころか、あなたは私の人生を根幹からつくった人です。

何も知らない12歳そこらの私に、最初にひかりと希望をくれたひと。

あなたがいてくれてよかった。あなたがアイドルをしてくれていて、あなたが死なないで今この瞬間まで生きつないでいてくれて、ほんとうによかった。

生きていてくれてよかった。


安田さんエゴサしなさそ〜だから(知らんけど)この文章が届くことはないと思うけど、でも、この文章もきっと読んでくれた誰かのきっかけになるよね。なるかな。私は世界を信じるよ。


SEVENTEENは年が近いから、世界の見え方や価値観が近いのはすごくいいけど、抱えてる問題も近くてしんどくなることもある。そんな時、こうしてうんと年上の人にたまーに頼ってみるのもありかもしれないね。ラクになりました。


アナザースカイはまだまだTVerで見られるっぽいです。4週間分配信してんのかな? これは。ほんとうに美しい番組、安田さんしかつくれなかった奇跡の番組なんで、あの、ぜひ、見てください。


追記! 書くの忘れてた!
安田さんがダイビング始めたの25歳の時なんやって。私まだ25歳になってない!! 今からでも何でも始められるやん!! と思いました!

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