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飲食店大進化論Ⅱ投稿集202308

【2023年8月分X履歴】
 
飲食店サービスはモノによるプロダクト面とヒトによるコミュニケーション面で成り立っている。 日本の飲食業は業態開発によって発展してきたが商品力勝負ではこれからを乗り切れまい。コロナ禍で人的な接点が渇望されてからはコアな客層との関係性を築く共感開発が求められ始めている。
 
外食産業はチェーンストア理論の導入で経営の近代化が進み成長した。物欲に満たされた日本人がコト消費に目覚め外食ニーズが多様化すると個店コンセプトが重要になり脱チェーンストア理論が叫ばれた。コロナ禍を経た今は社会構造の根本が変わり真チェーンストア理論が模索されている。

外食産業を取り巻く時代変化

チェーンストア理論は集中化と標準化で本部主導の効率運営を目指す理論。規模の論理で低価格化を実現したが消費ニーズの多様化で衰退し脱・理論として本部権限を店舗に移譲するハイブリッドモデルが登場した。コロナ後はお客様との関係性を見直す必要が生じ、真・理論が求められている。
 
暑い!4日は全国的に気温が上昇し、気象庁によると午後4時現在で今年最多となる290地点で35度以上を記録する猛暑日だという。午後4時40分までに埼玉県鳩山町で39・6度、熊谷市と群馬県館林市で39・1度、桐生市で39・0度を観測。東京都心でも36・7度を記録している。
 
成長期の外食大手でチェーンストア理論を学びに米国へ店舗見学に行った経営者の多くが外観だけを見て標準化の意味を取り違えてしまった。顧客貢献を目的にした標準化が自社利益を向上させる魔法の杖に見えてしまったのだ。だから標準化が停滞して進歩しない。今が全面見直しの好機だ。
 
チェーンストア理論導入で飲食は「いかに効率よく価値ある食事を提供できるか」を競って発展した。しかしコロナ禍によって外食需要の極端な矮小化を経験し今も7割経済のままだから絶対的な客数減を前提にビジネスを組み立て直す必要がある。お客様の量的拡大より質的深化が求められる。
 
コロナ禍で飲食店は組人数の少数化や大宴会の減少が進んだ。物理的な客数減を前提にするのであれば外食の必要性を高めて取りこぼしなく集客する必要がある。これまでは店に来てもらうことに力を注いできたが今後はニッチ市場を狙ってターゲットを絞りこみメニューを最適化するべきだ。
 
飲食店が新規客を確保するためには既存客にかかる集客費用の5倍が必要になるという。万人ウケを狙っている場合ではない。リピーターの確保が死活問題になるから料理も何かのジャンルに専門特化する必要がある。メニューの集中化で店のオリジナリティを高め、調理の生産性も向上させる。
 
「お客様は生活課題を解決するために店を利用している。モノを買うのではなくライフスタイルの向上を買っている」というのがジョブ理論だ。 ロジカルに数値分析して店づくりしてもなかなか結果に結びつかないというのが今の現実だから、店に求められる本質的な役割を再考する必要がある。
 
これまでの需要予測は1944年に発表された指数平滑法をベースとした時系列モデルが主流だった。 時系列モデルは過去実績の推移を重視した調査手法なので直近の大きな環境変化には対応できない。コロナ前の予測データは使えないということであり世界的にも需要予測の見直しが進んでいる。

市場調査の数値分析を基にプロトタイプの店舗仕様をつくり儲かる仕組みを落とし込んで多店展開で利益を確保してきた旧来のチェーンストア理論はプロダクト重視の時代には有効だがコロナ後の生活変容や顧客ニーズには対応できない。飲食業もお客様のプログレスを考えなければならない。
 
再投稿したPRタイムズライフスタイル@PRTIMES_LIFE【20代から30代の働く女性の推し活に関する調査】今年の夏に「推し活」を予定する女性は約7割、約半数が「推し活」のために夏休みの予定を調整! https:// prtimes.jp/main/html/rd/p/000000398.000026860.html @PRTIMES_JPより

推し活調査

日本人は外食デフレに慣れてしまい、おおむねコスパが価値基準になっている。コロナ前は安くて便利を競っていたが、これからは食べる楽しさだけではない楽しさをいかに実現するかが重要だ。
飲食店は「やっぱり外食は楽しいよね」と響かせる新しい価値を生み出していかないと成立しなくなる。
 
不確実性の高いビジネス環境では数値に頼って店を動かしていく従来の方法ではどうしても限界がある。そこで重要になるのは経営環境がどのように変化するかを予想し環境変化が自店にどのような影響を与えるかを検討するシナリオ分析だ。複数のシナリオを想定し、需要要素をモデル化する。
 
Web3.0やAIを背景に消費行動は際限なく生活向上に役立つものを求めていくので如何にお客様の期待値に近づけるかが必然的な課題になっている。
コロナ禍を経て店舗ビジネスにヒトの温かみみたいなものが強く求められるようになっているから、これらの実現に向けて店の価値を再構築する。
 
飲食業は市場調査で得たデータに基いた店づくりをしてきたが、コロナ禍という想定外の需要変動を経験してからは常に市場環境の変化をモニタリングし需要予測をリバイスし続けることが重要になっている。日々のPOSデータやクチコミを人で対応するのは現実的ではなくIT活用が求められる。
 
飲食店は調理主導のものづくりビジネスだった。集客しやすい土地に客席を用意しコスパのよい料理を提供してきた。 売り切りモデルだからお客様との関係性が後手にまわったが、今は人的なふれあいへの飢餓感から何を提供できるかが重要になってきた。よりそいビジネスが模索されている。
 
食のよりそいビジネスは外食の動機づくりから出発する。お客様が不便に感じている事を理解して最適化した食事をレコメンドする。お客様の痛点からよりよい生活に寄与する課題を捉え来店しなければならない理由を描く。お客様の感性によりそう食事の価値を提供し継続的な関係性を築く。
 
消費者の購買行動を解明したのがAIDMAの法則である。注意→興味→欲求→記憶→購入の流れはものづくりに都合よく新業態の組み立てに使いやすかったが今の消費者心理や市場環境であればSIPSの法則がピッタリだ。共感→確認→参加→共有の流れで考えると今後のサービス内容が見えてくる。

AIDMAとSIPS

Webの進化に危機感を持った代理店が多かったからネット広告にうまくスイッチした。しかしSNSで簡単に広告できるようになると立ち位置が変化し認知度を上げるための企業広告はうざい対象になりつつある。
利害関係のないお客様によるウソのない本音の評判を高めることこそが販促の要だ。
 
グルメサイトがなく手に入る外食情報が少なかった時代はよい店との出会いが貴重な財産で常連と認めてもらうのがステータスでもあった。 しかし不特定多数に共有されるクチコミ評価の拡がりは店と客の関係性を希薄にしたから、改めてニッチな領域での濃厚な関係性が模索され始めている。
 
外食は同じ料理分野の店であっても価格帯やサービス内容を変えれば新業態が生まれ新しい顧客市場を開拓する余地が生まれる。
業態が違えばまるで別の産業だから、異なる業界をひとつに寄せ集めた多様性の極致のような産業と言えよう。個性化して目立たせないと振り向いてももらえない。
 
飲食店は小さな界隈市場でナンバーワンを目指すニッチャーを目指したい。市場の隙間を狙って他店にはまねできない独自のビジネスモデルを確立するのがニッチ戦略だ。 重要なのは価格競争に巻き込まれない事とお店に心酔するファンを持つ事だから、ニッチを研究して絶対市場を確保する。
 
日本が豊かだったインフレ期に飲食店経営の近代化が進み産業として成長した。生活にモノがあふれてからは外食ニーズが多様化し失われた30年のデフレ期には新奇性を求めて飲食店に様々な新業態が生まれた。
今は調達側がインフレで提供側がデフレのスタグフレーション状態に喘いでいる。
 
外食の成長期はPDCAのデミングサイクルが持て囃された時期に重なる。
外食の発展期はトレンドへの素早い対応を目指してOODAループで新業態開発する店が時流に乗った。
コロナ禍を経て経営環境の不確実性が高まると店舗運営に柔軟思考が求められるからセンスメイキングが成功の鍵だろう。
 
飲食店のクチコミは知り合い同士の信頼関係で気に入った店情報を交換するものだった。 しかし今のクチコミはグルメサイトの登場以来不特定多数に共有されるお得情報になっている。
一回だけ来店のザッピング情報を競うレビュアーの記事や点数はお店探しを便利にしたが歪も出始めている。
 
昔の食通は店との関係性が重要だったが今の食通は数を競うようになっている。それゆえに一般のお客様も「美味しかったね、また来よう」ではなく「美味しかったね、次はどこへ行こう」になってしまった。
しかしコロナ禍を経て飲食店との関わり方が見直されているから集客を根本的に改革したい。
 
コロナ前はグルメサイト一辺倒だった飲食店探しだが、時代の気分はどこの誰かも分からないレビュアーの評価だけでは自分が求めている店を見つけられないになっている気がする。
顔の見えるヒューマンな信頼関係をベースに無難な店から自分好みの特別な店へと店の選び方が変わってきた。
 
これまでの飲食店は客数×客単価の客数で稼いできた。
飲食店集客では売上を上げるには新規集客だという認識が一般的だったから、業界全体が焼畑農業とも言われかねない刹那的思考に捉われていた。だから価格競争に巻き込まれやすく人手不足やコロナ禍の影響で苦戦した。これから先は客単価で稼ぎたい。
 
もはや店数で外食の成功を語る時代ではない。
飲食チェーンは長いこと店の標準化を競いスケールメリットを追うことが定石だった。ところがコロナ禍以降は特にこの戦略が通用しなくなっている。外食の流れが個店毎の個性重視に変化しているから量より質を重視する発想転換が求められる。
 
飲食店は価値を創ることより価格を安くする方が楽だ。
低価格を実現するための仕組みを開発しクローン店の量産で市場拡大を目指した。 低価格に慣れたお客様に響く新しい価値を生み出さないとこれからが厳しくなる。コスパ勝負の便利な店を卒業してタイパ勝負の推しの店に変身させたい。
 
かつては料理や接客に自信のある店主ばかりだったが、最近はシステム構築力に自信があって店を始めた経営者が増えてきた。
料理も接客もできないが異次元の発想力とコーディネート力を武器にマネジメントに特化しているケースが多い。 プロダクトアウトの時代は終わったと言う事だろう。
 
飲食業の消耗戦は経営から余裕を奪う深刻な問題だ。
長いことFLコストの管理が第一優先で、食材費と人件費を抑制し如何に競争力のある価格を提示できるかが経営努力だった。 ところが行き過ぎた外食デフレでコスト削減が努力の範囲を超えてきている。今は収益構造を抜本から見直すチャンスだ。


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