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飲食店大進化論Ⅱ投稿集202310

【2023年10月分X/Twitter履歴】

TVの番組でラーメン店にある千円の壁が話題になっていた。 千円を超えると売れないというのが一般的な認識だが、発想を変えて3千円越えで繁盛している店は以前からある。客単3千円の高級ラーメン店に共通するのは金銭感覚を忘れさせる凄みだ。当たり前を極めた衝撃的な旨さが味わえる。

出典:中華蕎麦とみ田公式サイト掲載画像

客席回転率の呪縛を脱却した3千円越えラーメン店に共通するのはラーメン通も唸るメチャクチャ旨い一杯であるのは当然として、なぜか①完全予約制だったり②一日限定数だったり③カウンター席のみだったりと似ているところが多い。磨かれた最高の一杯を届けるためのこだわりが半端ない。
 
フカヒレや伊勢海老などを使った数万円のラーメンはあるが高級食材で話題は取れても所詮食材の魅力だからどれだけの人が食べに来るのだろうと思ってしまう。ラーメンの魅力はスープと麺とトッピングのハーモニーにある。一杯一杯への店主のこだわりが生み出す確かな美味しさが欲しい。

コロナ以前の飲食店は、より多くのお客様を呼び込むために万人受けするメニューを作り宴会の獲得に力を入れて高収益を目指した。コロナ後は食の選択肢が増え「この店でなければダメだ」という特別感が求められている。記憶に残る食事には必ず料理に店の哲学がある。哲学が店のファンを生む。
 
来店客が不満なく帰るというのは興味も湧いていないという事だ。飲食店は売上を失いたくないからどこでもやっているに固執しがちだが、繁盛店には不思議と再び「食べに来てしまう」コースメニューがある。普通の何でもない料理に哲学が加わっているのだ。あれこれ選ぶ余地のあるアラカルトでなく。
 
宴会というとそば屋の先輩幹事がいた。「そば屋で酒を飲むって粋だろ」と言っていたけれど、どうも江戸時代に蕎麦が茹で上がるまで時間つぶしに酒を出したのが起源らしい。 蕎麦もラーメンも長居しないイメージだが、常備食材で宴会メニューをつくりゆっくり酒席を楽しんでいってもらう方法もありだと思う。
 
飲食業は新規参入しやすいビジネスでありオーバーストア状態だから値下げ競争に巻き込まれやすい。 安売りが人件費を圧迫するから悪循環から抜け出せない。円安の進行で調達コストがあがっても値上げがままならない。無理に価格維持しようとするから無茶なコスト削減へ走りがちになる。
 
外食には利用動機によって来店客が求める食事体験の価値が変わってしまう面がある。最寄利用のケ需要を吸収するなら客数で稼ぐために自動化を進め作業工数を減らしてお値打ち価格を維持する。買い回り利用のハレ需要を吸収するなら値上げを容認できる食事体験にサービス内容を刷新しプレミアム感で客単価を稼がなければならない。
 
日本の製造業はITによる業務内容の自動化で浮いた人員を別の事業に吸収し発展できたが、サービス業は自動化が失業につながるとしてIT導入に消極的だった。コロナ禍はオフラインとオンラインの融合を進展させている。コロナ禍で疲弊した飲食業だからこそITの有効活用を真剣に考えたい。

外食は無ければ淋しいが無くても腹を満たせる存在だ。コロナ禍で大打撃をうけた飲食業はまん防解除で春を迎えるはずだったが、輸入物価高や生活様式の変化が想像以上に響きゼロゼロ融資の呪縛もあり分水嶺に立ってる。ここからが腕の見せどころだ。ピンチはチャンスだと考えればおもしろい。
 
11日備忘記事:「値上げ=客離れ」はどうなった? ココイチの業績が好調なワケ
 
外食産業はチェーンストア理論を学びスケールメリットを追いかけた。全国チェーンは食材の大量購入と集中調理でコスパを高め大量出店でブランド力を向上させて発展したが、競争の臨界点に達した現在は客ニーズに対応できずスケールデメリットの方ばかりが目立っている。“個”化が時代の鍵だ。
 
コロナ前の飲食店はFLRのどこにメスを入れるかって話だったけど食材費しかり人件費しかり家賃しかりでどれも削れないという最悪な事態を迎えている。付加価値が高い提案で客単価を上げるしか道はないから来店で初めて得られるメリットやお客様を喜ばせるエモさの発明が不可欠になった。

出典:ボルケーノ鍋|ダルビッマル新大久保店公式画像

飲食業には時代の移り変わりに無頓着でずーっと同じことをやり続けている人が多い。プロ目線は一度捨てて客目線でまわりを見渡せば色々とできることが見つかるはずだ。コロナ禍以前とまん防解除後では外食に求めているものが根本的に違う。客数で稼ぐより客単価で稼ぐ方が楽なはずだ。
 
今のお客様はモノとしての価値だけではなくアイデンティティを購入している。機能性だけで考えれば何百万円もするバックや何千万円のクルマは必要ないだろう。それを買うことにより自分が何者なのかを意識でき他人にも認めてもらえることが重要なのだ。レストランの食事もそこが肝心。
 
最近は何かとオーセンティシティを気にする人が増え、「らしさ」すなわち本物/正統/正直なものに価値を見い出すようになっている。飲食店集客では料理ジャンルに対するらしさなのか、店の価値観に対するらしさなのかで称賛の対象が異なるような気がする。何を極めるかで店の将来が変わる。
 
コロナ禍によって仲間うちで飲むなら家飲みで十分だという事に気がついた人は多い。わざわざ来店するならそれ相応の理由が求められる。外食は空腹を満たすという目的からより高次元の満足感を高める手段にシフトしている。利用客の価値観を理解し最適サービスの構築で幸せを提供する。
 
入店客数が9割減というコロナ禍の異常事態にあって店主がいる店と人まかせの店は入りが違った。店主が仕切る店には常連客が来店し回復が早いばかりか先々まで予約が埋まったりしたが、店主の主宰するコミュニティスペースみたいなものだからだろう。人の輪がセーフティーネットになった。
 
どんなに深刻な災難に見舞われようともファンとのつながりが強固な"推し"の店は強い。コロナ前にはグルメサイトで3.5点をめぐる攻防がエキサイトしていたが、結局は一度きりのザッピングユーザーを増やしただけだった。つながりやふれあいが渇望される時代にはファンダム形成が重要だ。
 
19日備忘記事:なんだかんだでWeb3.0の技術革新が急ピッチに実現化している
 ステマ規制が始動 飲食店もPR記載を理解しておく必要がある へたを打つと社会的制裁を受ける可能性がある
 
これまでのサービス業は、どちらかと言えばモノへの執着が強いベビーブーム世代とブランド好きな傾向が強いX世代がリードしてきた消費意識を前提にしているので利用客にとって便利な店になろうとがんばってきたが、時代の切り換わりで価値観を共有できることの方が重要になっている。

今の消費トレンドをリードしているのはY世代とZ世代で前世代に見られた物欲よりもコミュ欲の強い世代である点を押さえておく必要がある。 いずれもスマホを巧みに操るがFOMOのY世代とJOMOのZ世代では同じくネットを使いこなすと言っても世代間ギャップがあり、意識の違いに注意する。
 
20日備忘記事:「客単価4356円」女店主が営むラーメン店
 
ネットニュースで値段4356円のコース1品のみ提供というラーメン店が紹介されていた。西大井の閑静な住宅地でひっそり営業するラーメン店で住所非公開/完全予約制だと言う。製麺も含め女将ひとりでの営業だから1時間ゆったりと食事と会話を楽しむ店にしたという。こういうやり方は素敵だ。

住所非公開・完全予約制のラーメン店「純麦」の蕎麦御膳で提供されている前菜|
出典: 東洋経済オンライン昨日掲載の井手隊長撮影写真を内容紹介のために転載

22日備忘記事:外食チェーンの値上げ
 
地ビール解禁当時は手探りだった日本のクラフトビールも今では高品質が世界から評価されている。 料理だってイタ飯ブームの時代は質的に問題な創作料理はあったが現在どこに行ってもうまくなっておりレベル的に揃った様に思う。質での競争がつかないからエモさとコミュ力の勝負になっている。
 
23日備忘記事:ラーメン店に立ちはだかる1000円の壁
 
時代の移り変わりで経営トップにはビジネスを元に戻しながら新しい世界に適応できるようビジネスモデルを変えていく事が求められている。優先順位は元に戻すよりも変えていくものの方が高い。コロナ前の事業計画は持続的で安定的な売上成長を前提にしたが過去の延長線上に勝機はない。
 
飲食は売上の減少を前提とした運営にする時代へ突入している。売上減少はリスクではなく常態として受け入れるマインドチェンジが必要だ。売上が伸びなくても確実に利益が出せるコスト構造に変えていかなければ業績は回復しない。コスト構造は会計からではなく本質的に捉えるのが肝心。
 
企業は常にビジネスモデルを変化させて新しい収益を生み出していく必要がある。コロナ禍で売り切りのフロービジネスではジリ貧が目に見えていたので定額課金のストックビジネスに取り組んだ飲食店は多かったが、うまく進まないところは本気でビジネスモデルを変革しようとしなかったからだと思う。

26日備忘記事:日本は労働生産性が低い
 
サブスクでやればやるほど赤字になった飲食店に共通するのは表層的に課金方法をまねただけで裏側にあるべきお客様との関係性を見落としていたから。売り切りビジネスで成果をあげてきた飲食には魅力的だが劇薬だった。丼ぶり勘定的な業界体質でデータ蓄積を軽視してきたのも痛かった。
 
企業が時代の流れに適合していくには自社のリソースを組みあわせて最大活用していくケイパビリティが必要だ。ケイパビリティは店舗力を高度化するために必要な組織能力であり関係者全員のパフォーマンスを合計したもの。スタッフのスキルを合計したものではないから勘違いしないで欲しい。
 
新しい事をやろうにもスタッフの能力不足がボトルネックになっていると嘆く経営者に言いたい。人材のスキル掘り下げが不十分なのではないか、何より人材をスキル面からしか見ていないのではないか。人材のパフォーマンスを最大化して組織力で変革の生み出す価値を大きくする事が肝要だろう。
 
事業環境が安定している時代は決められたことやるべきことを、時間をかけながらできるようにしていく従業員教育が求められた。しかしコロナ以降はやるべきことが定まらないから柔軟に対応できる人材が求められる。スタッフの今できることを理解し、それをどう活かしていけるかを考えるべき。
 
これまではオペレーションが先にあり、それを実行するために店舗人材を採用するというのが飲食業の常識だった。これからはスタッフ個人にフォーカスしパフォーマンスを組み合わせて最大化できる店舗オペレーションを組み立てる必要がある。店舗収益の拡大と働く人々の心の豊かさを両立させる。
 
スタッフ個人のパフォーマンスを高めるために最も着手しやすくかつ効果があるのはモチベーションを高める支援だ。よくコミュニケーションをとり、その人が仕事において大切にしていること/自分のありたい姿/将来の夢を理解して、その価値観が満たされる働き方を実現するための方法を考える。


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