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飲食店大進化論Ⅱ投稿集202305

【2023年5月分Twitter履歴】
 
コロナ禍では一見客が頼りだったフロービジネスの飲食店ほど苦しかったが、街から人が消えても常連に愛されるストックビジネスの店は人の絆に救われていたように思う。 料理がうまいだけでは心許ないというのがコロナで得た教訓。「推しの店」と愛着を持ってくれるファンはありがたい。
 
巷にあふれる情報で店の魅力が伝わりにくくなっている。飲食店集客に必要なのはファンベースでの考え方だ。 外食市場は元に戻っていないから量的な客数拡大から質的深化に路線変更する必要がある。お客様の情緒面に寄り添いプレミアム感を高めてファン層を基盤にして店の付加価値を高める。

コロナ禍で生まれたコンタクトレスやニューノーマルは、おいしい食事を提供するキッチン主導の"ものづくりビジネス"から人的なつながりや触れ合いを競うサービス主導の"よりそいビジネス"へ飲食店のあり方に大変革を求めている。 これからの時代に求められるフードビジネスは何か考えたい。
 
料理人が何をつくりたいかではない。お客様が何を欲しているかだろう。 飲食業界はテーブルサービスを前提に発展してきたがコロナ禍でその前提が崩れかけている。食を提供するという目的性は変わらないが提供手段が様々になってきた。リアル店舗はコミュニケーションベースにすぎない。

過去の飲食業は不特定多数の外食需要を囲い込み刈り取り込んできたが、これからは少数でも店の価値観を共有している目の前のファンを大切にしたい。 コロナ禍によって以前の一等立地は昔ほど稼げなくなったが、悪立地でもファンに支持される店には推し活で類友を呼び込んでくれている。

外食が萎むと継続来店してくれるパーパスドリブンのストック客が大事だ。 過去の飲食業が相手にしてきたのは店の評判に惹かれてやって来るバリュードリブンのフロー客だったから好立地や新業態を競ってきたが、今後は客数より客質で飲食店支援では利便性よりも必然性を重視し始めている。

これからの飲食店に求められるのはライフスタイルに関する観察力や想像力だ。 今までは商圏市場を量でとらえてきたが今からは質でとらえるべき。フードビジネスは客の本音を肌で感じなければやるべきことが決まらないし、客と本気でつきあわないと悩んでいる食の課題に寄り添えない。
 
不便さを解決するサービスはノウハウが蓄積し巷にあふれているが寂しさを解決するサービスは感染不安によりコミュニケーション機会が失われてから特に需要が増している。 不便さは解決策を売れば解消されるが寂しさは継続利用しなければ解決できない。だからファン化が成功の鍵になる。
 
クラウドファウンディングはコロナ禍対策として飲食業界に拡がっていったが、最近では資金援助のお返しとして会員権を提供する取り組みが増えている。 会員レストランは安定収益がある程度見込めるから店舗存続の大きな切り札になるし、店としても思い切ったサービスを組み立てやすい。
 
会員制はコロナ禍で疲弊した飲食店にとって経営を安定させるために有効だ。 お客様との関係性が強化されて店としても寄り添いやすくなりファン化が進み無断キャンセルなどもなくなるだろう。会員の存在が収益を安定させるし少数のお客様で店がまわれば目が届いて結果的に客質も高まる。
 
クラウドファンディングは2011年ごろから知られ始めた。2020年の緊急事態宣言で一気に拡大、支援額は前年比4倍に急増したという。コロナ禍初期は苦境に陥った飲食店に資金提供する目的の寄付や支援が多かったが、今は将来性の先物買い目的でおもしろいアプローチへの関与が増えている。

「お金持ちはLCCに乗らない」「円安であればインバウンドは安泰」のような勘違いはインバウンドをはじめ、海外の消費者を対象としたビジネスにおいて多々ある 。ビジネスにおいて機会損失になりかねないから、もったいない話だと思う。 高付加価値観光客は「安売り」を求めていない。
中国のお金持ち旅行者が感じる「日本の残念な点」 富裕層はLCCを使わないという大いなる勘違い (msn.com)

クラウドファンディングにはお客様も最初から自分が店づくりに関わったという親近感があり、特に会員制では店と客の一体感からコミュニティが生まれやすい。 少数客で運営できるようにプログラムすれば大量集客の煩わしさから解放され、目が行き届くのでサービス向上に集中できるはず。
 
NFTもクラウドファンディング同様に飲食店が活用できる資金集めの手段になる。米国のフライフイッシュクラブはホワイトリストの会員対象で開業準備中にZOOMでのクッキングデモやワインテイスティングとパーティ形式のポップアップイベントを無料提供しNFTトークにてSNSを展開している。

クラウドファンディングで会員応募が殺到した飲食店に共通するのは"特別感"だ。知る人ぞ知るの隠れ家的特別感が王道だが、ホワイトテーブルクロス並みのサービスや高級料理のサブスクなども特別感があるし、特殊な調理法/新システムなど新奇性を軸にしたオンリーワンにも特別感がある。

chatGPTで注目されるAIが定型作業を自動化する。 飲食店もデジタル化が進む中でアナリティカルな論理力や分析力よりシンセティックな想像力や創造力が重視されるようになってきた。 カリスマシェフの芸術の域に達した技量には圧倒されるがメニュー開発の基本は変わらない。発想力で勝負したい。

飲食業は分子ガストロノミーで料理の科学的アプローチに目覚め、特に真空調理は投げ込みサーキュレーターの登場で一般に知られる料理法になった。エル-ブリ発の液体窒素やエスプーマを使った料理も斬新さが売りだったが既に定着している。新技術を活かした更なる展開が求められている。

じゃが芋をエスプーマした白いカレーうどん 酒彩蕎麦 初代 恵比寿店 https://turhythm.com/gourmet-ebisu-shodai/

液体窒素は-79℃で昇華する個体のドライアイスと違い窒素を冷却して液状にしているから直接食べ物や容器に注いで冷やすことができる。熱を加えて発展した調理技術とは真逆の熱を奪う料理法の新しさがあり、液体窒素自体はすぐに気化して留まらないし無色透明無味無臭なので邪魔しない。

-196℃のグラニテで仕上げる!大人のフローズンフルーツパフェ
出典:キハチ青山本店ニュースリリース提供画像 https://www.kihachi.jp/

外食トレンドで注目される水素調理は究極のクリーンエネルギーだし燃焼温度が高く食材を蒸し焼きにするから外はカリカリで中はふんわりジューシーに焼き上がり新しい風味を打ち出せる。 食の個別最適化を実現したAI食技術と飲食店メニューを組み合わせれば究極の料飲提案が実現できるはず。

出典:アベマTVニュースのサムネイル画像より
https://abematv.co.jp/

同じメニューが沢山売れてアイテム数を絞れれば飲食店の在庫リスクは劇的に減る。スケールメリットが効いて価格も下げられる。 しかしお客様は店のスケールさせたい思いなど知ったことではなく自分の好みや懐事情だけを見て欲しいと思っている。両者の溝はモノとコトの最適化で埋める。

店の売上が上がらない理由はふたつしかない。そもそも店の存在が知られていないかと次の来店につながらないかだ。 今のように客数が激減している時に集客をかけるのは危険だ。焦る気持ちは分かるがこんな時は自店の魅力は何かを煮詰め、一度食べたら忘れられない食事体験を実現させる。

外食需要が縮小すると"売上を失いたくない"から、飲食店は他店の繁盛要因を取り入れようとする。 これさえやっておけば万人ウケするだろう経験則のみが拡がり、どこで食べても同じつまらないメニューになりがちになる。重要なのは一度食べたら忘れられない食事を提供する差異化だろう。

グルメサイトのおかげでクチコミ全盛になってからは情報が氾濫してしまい、外食は店の選択肢が無限にあるように感じさせ再来店を難しくしている。 飲食店はネットでの評判管理に一所懸命だが高評価店ハンターは一度行けばそれで満足という人が多い。大事にすべきは何かを問い直したい。
 
フレンチにムニュ・デギュスタシオン(Menu Dégustation)という味見コースがある。店の良さを知ってもらう目的で得意料理やおすすめ/スペシャリテなどを少量多皿のコースに仕立てたウチの全てが一度で味わえるメニューだ。再来店の読めないフリー客やインバウンド客に好印象を植えつける。

一度味わってしまえば熱が冷めるのは避けられない。 出会って感動したメニューも長期に渡って興奮を維持させておくには限界があるから、冷めないうちに食物の魅力に頼らない関係性をお客様との間に築いておく必要がある。継続したコミュニケーションの仕掛けづくりが重要になってきた。
 
コロナ禍で消費性向が変化している。店の評判に惹かれて衝動来店するバリュードリブンのフロー客よりも店のあり方に共感して継続来店するパーパスドリブンのストック客にトレンドが移行し始めた。 客数で稼ぐより客質を高める時代にはお客様との関係性が強固な会員制も考慮してみたい。

会員制のフレンチレストランでサブスクを導入した例として六本木のプロヴィジョンを取り上げたい。組人数は4名までで1か月に何度でも食事が可能。一部のワインを除き高級食材料理を含む全てが含まれるサブスクで飲食できコースは2種類ある。月額会費税込55千円と88千円で運営している。

コロナ禍で閉店を余儀なくされた有名店も多いが中にはオーナーシェフのやりたかったことをこじんまりとカタチにしようとシェフズテーブルスタイルで本当に美味しいでき立てを提供しようと再出発したところも複数ある。 フルオープンキッチンとアリーナ席のみでおまかせ料理のみを提供。

アリーナ席しかない飲食店はこれからのトレンドになるかもしれない
出典:わさ公式画像 https://www.instagram.com/ebisu_wasa/

隠れ家レストランの魅力は一切が謎に包まれ中身が分からないこと。看板がなく飲食店に思えなかったりマンションの一室の場合すらある。 ラウンジにしろルーフトップにしろ知る人ぞ知るシークレットのワクワク感もたまらない。その秘密を知りたければホームページへと誘導するのである。

シークレットといえば禁酒法時代の隠れ家だったスピークイージーの仕組みも注目したい。一般客席を表とすれば裏に特別な場を用意して楽しませる。 店奥に固定で個室を用意するのではなく知っている人しか利用できない隠された謎の空間を確保し、おまかせでスペシャルコースを提供する。

東京ディズニーランドのクラブ33は公式サイトにもマップにも載っていない秘密の高級フレンチレストラン。 ワールドバザールのマジックショップと三井住友銀行の隣に入口はあるが、知らない人には存在が分からないだろう。 装飾を装ったインターフォンから連絡をすると重厚な扉が開く。

ちょっと腕のいい料理人が普通に飲食店をやってもほとんどの場合上手く行かない。 コロナ禍で外食行動が変化してからは特にお客様のライフスタイルに役立つ価値が求められている。その上で惹きつけるユニークなアイデアが必要だ。他店のやっていない何かを見つけ出さなければならない。

 "井の中の蛙"で中から外を見ている店は繁盛しない。コロナ禍を経て、飲食店は改めて客目線でサービスできているかを考えるべきだ。 外部の目で客観的に自店を眺めてみれば何に向かって走るべきかが見え、どのように見えているかを理解すれば取り組むべきビジネスモデルが分かってくる。



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