見出し画像

いつか真似してみたいけど、多分無理だろうな。だって、僕らは、、、

ジン・トニックという世界中で人気のカクテルを初めて飲んだのは、二十歳のときだった。

氷を入れた長手のグラスにジンを注ぎ、トニックウォーターで満たし、ライムを入れて出来上がり。
その独特の甘苦さと清涼感がとても美味しい。

それを飲んだのは、思い出深い店。
初めてそこに行ったのは今から40年程前になる。

その店の名は、「フラワーチャイルド」。

まだ二十歳の僕は、その頃はその店の名前の意味さえ知らなかった。

「フラワーチャイルド」とは、アメリカのヒッピーのことで、「フラワーチルドレン」ともいう。

フラワーチャイルドもしくはフラワーチルドレン(英: Flower child or Flower Children)は、1960-70年代のアメリカのヒッピーのことで、ベトナム戦争を背景に、平和と愛の象徴として花で身体を飾っていたためにこう呼ばれた。 『武器ではなく、花を』は、彼らの有名なスローガンである。(Wikipediaより)

40年前とはいっても、すでに反戦運動や学生運動などは過去のものになりつつあり、少し上の世代の人たちもので、多少は知っていたものの、僕らには無縁のものだった。

大学2年の頃だった。

同級生の井上に連れられて行ったその店が今でも忘れられない。
二十歳になったばかりの僕には、とても大人の店で、普段行く大学周辺の学生相手の店とは違っていて、少し背伸びして通っていた気がする。

白で統一された内装。
カウンターは7~8席。ボックス席ではない普通のテーブル席が3つ4つという小さな店。
バー&カフェのその店は、今思い出しても、とても粋な店だった。
というのはその店の独自のスタイルにある。

バーとは言っても、洋酒のボトルがずらっと並んでいるわけではなく、
カウンターのバックに並んでいたのは、ゴードン・ジンとズブロッカの2種類だけが30~40本。それはキープボトルだった。
その2種類からボトルキープを選ぶシステムなのだ。

ゴードン・ジンもズブロッカもこの店で初めて知った。

通い始めた当初は、ショットでジントニックを飲んでいたが、やはり、その特別なボトルキープをしてみたくて、通い始めて数回後に、井上とふたりでゴードン・ジンをキープした時はなんだかうれしかった。

ただ、なにしろジンなのだ。
ウィスキーと違って、水割りとかロックで飲むわけにはいかない。
その店のシステムは、そのボトルから、バーテンダーにジントニックを作ってもらうのだった。

だから、いつもジントニックを飲む。そして数杯お代わりをする。
なんだかそれがカッコよかった。

その頃、貧乏学生だった僕らは、普段はサントリーホワイトの水割りをポテトチップだの乾きものだのだけでひたすら飲むということしかしていなかったから、この店に来た時だけは特別だった。

しかも、周りのお客はみな大人だったから、このときばかりは、ちょっと大人のふりをしていた。


このときの経験は、いまバーをしている僕の大事な礎になっている。


フラワーチャイルドという店の名も含めて、コンセプト満載のそんな店を、いつか真似してみたいとずっと思い続けている。


でも多分無理だろうな。

だって、1979年ごろ高校生だった僕らが知ってるのは、ベトナム戦争じゃなくて宇宙世紀0079年(ダブルオー・セブンティナイン)の一年戦争。

そう僕らの世代は、フラワーチャイルドじゃなくて、

「坊やだからさ」


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?