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#17 Green Book

あらすじ
1962年、アメリカ。ニューヨークの一流ナイトクラブで用心棒を務めていたイタリア系白人の男トニー・立派は、ひょんなことから天才黒人ピアニストのドクター・シャーリーが南部で行う演奏ツアーに運転手兼ボディーガードとして雇われる。2人は、黒人が利用できる施設を記した旅行ガイドブック、「グリーンブック」を片手に、差別が根強く残る南部に向かい、旅を通して深い友情で結ばれていく。

感想

グリーンブックの舞台は1960年代黒人差別が根強くのこる時代。その上彼らがツアー で回っているアメリカ南部は、より一層に黒人差別意識が強く、日常的に当たり前のよう に迫害されていました。映画のタイトルである「グリーンブック」は、黒人旅行者が安全 に旅行できるように、黒人を受け入れるホテルやレストラン等が掲載された本であり、こ れが必須だったようです。

当時のグリーンブック

この映画は天才と呼ばれた黒人ピアニストがイタリア系白人を彼の運転手として雇い一緒にアメリカ南部をツアーでまわり、その過程で友情をはぐくんでいくという物語でしたが、改めて「差別」という人間の厄介な感情について、深く考えさせられました。
映画 のはじめ、トニーは特に黒人への嫌悪や強い差別意識はないものの、自分が黒人に従事す ることに若干の抵抗があったのかなと思います。実際ドクの荷物を車に乗せるのを拒んだ り、横柄な態度で汚い言葉を使ったりしていました。しかし、トニーがドクの演奏にほれ 込み 2 人はツアーをまわるうちに友情を築いていきます。
しかし問題なのが、南部に根強 くのこる黒人差別。なんでわざわざドクはツアーの舞台にアメリカ南部を選んだのだろう と思いましたし、トニーが「一人で出歩くな」ときつく言った言葉もとても重く感じられ ました。実際、作中にドクが差別を受ける場面を見るたびに心が痛みました。ツアーの最 終日も、レストランで差別を受けたドクとトニーは黒人が入れるバーに行くのですが、そ こでドクは「木枯らしのエチュード」を弾きます。店の中の人々をまきこんで楽しくジャ ズを演奏する姿にとても感動しました。それを見て私は、ドクは自分の演奏で人々の心を 動かし、差別意識をなくしたいと思って南部を選んだのかなと思いました。

この映画のテーマであるか「差別」ですが、作中には白人のリアルな黒人差別が多く描かれています。例えば、黒人専用トイレだったり、黒人お断りのホテルやレストランだったり、洋服屋もしかりです。黒人を白人と別扱いすること。それが町の「しきたり」として 認識され、1960年、このような差別が当たり前だったことを示しています。後々知っ たのですが、この時代にはジム・クロウ法という、黒人と白人を差別化することを許す法 がありました。法によって差別が正当化されていたなんて、驚きでした。
また、作中私が気になった言葉があります。トニーが警察官に言われた「半分ニガー」と いう言葉です。調べてみると、イタリア系白人は19世紀末からアメリカに移民として渡 ったのですが、他の白人系移民に比べると貧困層が多かったため、「スラムに住む人々」 として他の白人たちから蔑視されるようになってしまったらしいです。まともに教育を受 けず、仕事に就くこともできない姿から、肌の色は白人だけれども、社会での扱いは黒人 と同じ、半分白人、半分黒人の意味である「半分ニガー」と言われたらしいです。

トニーが人一倍差別用語に対して敏感なのも、このような背景があるのからなのかもしれ ません。黒人のみならず、様々な移民に向けられた差別が濃かった時代でもあるのかなと 思います。
最後、トニーの奥さんが「手紙ありがとう」とドクに言ったのがとてもよかったです( ◠‿◠ )ほっこり

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