飲みかけのハイボール

今日は金曜日。
私は例のごとく、いつもの居酒屋にいる。
私は、毎週のように来店しているから、
店主も私のことを覚えてくれている。
扉を開けて私の顔を見るとすぐにハイボールの準備をしてくれる。
私はここのなんとも言えない実家にいるかのような落ち着いた雰囲気が好きなのだ。
そして、店主も気さくでとても優しい人である。
私はいつもカウンターに座り、今日の出来事や日頃の鬱憤などを店主に聞かせている。
店主はいつも、迷惑そうな顔一つせず、優しく頷いて聞いてくれる。
私はその好意に甘えて、つい長々と話してしまう。
だが、今日は取引先で問題を起こしたり、
大雨なのに傘を持たずに出てきたりと決して穏やかとは言えない心持ちでいつもの店に向かった。
扉を開けると、そこはまるで違うお店に間違えて入ってしまったかと錯覚するほど、賑やかに感じた。店主の優しい笑顔もなぜか皮肉に感じた。
心に余裕がないのだろうと、いつもより強めのハイボールを頼んだ。
例のごとく、今日の愚痴を店主に長々と話しながら、半分くらい残っている飲みかけのハイボールを一気に喉へ流し込んだ。
そして満足げに、また来週と涼しい顔をしてお店を出た。

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