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〈Chim↑Pom展〉の託児所「くらいんぐみゅーじあむ」を利用してみた

六本木の森美術館で〈Chim↑Pom展:ハッピースプリング〉が開催されている。そして、彼らの最新アート・プロジェクト「くらいんぐみゅーじあむ」は、展覧会場内に託児所を設けるというもので、その紹介記事を〈こここ〉で書いた。

我が家には、まもなく2歳を迎える娘がいる。そして、託児所プロジェクト「くらいんぐみゅーじあむ」には共感すること多々。せっかくならこのプロジェクトを利用して、ゆっくり展覧会を楽しみつつ、美術館の託児所とはどんなものなのか、果たして小さな子どもを持つ親が気軽に美術館を楽しめるものなのか、その他の来館者の反応はどうなのか、体験してみようと思った。

ということで、その一連のレポートです!

〈Chim↑Pom展〉の「くらいんぐみゅーじあむ」スペース


託児所「くらいんぐみゅーじあむ」の予約は、この流れで!

託児所の開所は、金・土・日曜の3日間のみ。日曜に訪問することにした。オープン同時なら密にはならないだろうと、10時の回を予約することにする。

まず託児所を予約するべく、専用ウェブサイト にアクセス。必要事項を記入していくと、ある項目でつまずいた。「チケットの半券」という入力必須枠がある。やや、まず展覧会のチケットを購入せねばならんのか。

託児所を運営している〈アルファコーポレーション〉に電話で確認したところ、〈Chim↑Pom展〉の観覧者に向けた託児サービスなので、託児所予約の前に展覧会のチケットを購入する必要があるとのこと。あと「チケットの半券」は、チケット購入した際に送られてくるメールの「チケット購入番号」を記入するとのこと。

ということで、森美術館のチケットオンラインサイト へ。〈Chim↑Pom展〉のチケットを購入し、再び託児所の専用ウェブサイトに戻る。「チケットの半券」の記入枠には「チケット購入番号」を入力。

さて、託児所の空き状況を見ると、予約希望日は10~11時の1時間しか空きがない。1時間で展示を網羅できる気がしないが、仕方ない。10~11時で予約する。

予約完了! と思ったら、送られてきた受付完了メールに「キャンセル待ち」と書かれてある。え、どういうこと? 寸でのところで、予約が被ったのかしら。

展覧会のチケットは、「キャンセル・変更不可」とサイトに書いてあるので、もし託児所の予約が取れなかったら、チケット捨てるしかないのだろうか? 森美に事情を説明したら、対応してくれるのだろうか?

それはそうと、まず託児所のキャンセル待ちは腑に落ちないので、再び電話で問い合わせたところ、「その時間の予約はお客様だけなので、今、保育士を確保できるか確認しているところです。確保できれば予約をお受けします」というような返答だった。

最終的には保育士さん確保に至り、託児所の予約がとれたのだった。ほっ。

■託児所予約の流れ&ポイント
・まず〈Chim↑Pom展〉の観覧チケットを購入した後、託児所の予約をする。
・託児所予約時の必須記入枠「チケットの半券」には、「チケット購入番号」を記入する。
・「キャンセル待ち」の通知が来て、万が一保育士さんが確保できない場合、託児所の予約が取れない可能性も。(託児所側の事情もよくわかるのだけれど、これ、ちょっと不安・・・)

もし託児所の予約が取れなかった場合、チケットをキャンセルさせてくれませんか、森美術館さん。それがOKというだけで、気持ちがめちゃ楽になります~。

補足:
私が予約した日は10~11時の時間しか「◎」が無かったので、1時間だけ予約したけれど、ダメもとで「×」を含めた10~12時で申し込んでもOKとのこと。もちろん「キャンセル待ち」扱いになるが、保育士が確保できれば、「×」の時間も子どもを預かることもできるらしい。

小さな子がいる場合は、オープンの入館を避けた方がいいかも?

さて、当日。日曜に7時起きする。9時40分には森タワー53階に到着。すでに15名ほどの入場待ちの列ができている。そこに並ぶが、娘がじっとしていない。私が列に並び、駆け回る娘を夫が対応してくれた。

9時50分頃、ミュージアムの受付カウンターがあるエントランスに通されたが、そこでもそのまま暫く並ぶ。事前にオンラインでチケット購入しているので、この列に並ぶ必要はないはずだが、スタッフに確認したら「チケット購入されている方も並んでいただきます」とのこと。

暫くしてカウンターに通され、スマホのチケット購入画面を提示し、QRコードのついた紙チケットを渡される。紙!?

別日に〈Chim↑Pom展〉を堪能していた夫は、その際カウンターには並ばなかったという。予約メールからマイページにアクセスするとQRコードが表示され、スマホだけで入場できたと。
オープン時だけ対応が変わるのかもしれないけれど、あの並ぶ時間は、子連れにはハラハラしっぱなしというか、正直無理である。

この日、夫はエントランスでバイバイする予定で、〈Chim↑Pom展〉への入館は私と娘だけ。でも、イヤイヤ真っ盛りの娘の行動が不安だったため、夫にエントランスまでついてきてもらった。それがよかった。もし私と娘だけだったら、駆け回る彼女を追うのに必死で、とてもじゃないけど列に並んでいられなかった・・・。

願わくば、子連れ専用の待機列や優先カウンターみたいなのがあると、小さな子がいる来館者は助かるなあと思った。「そんなの、子連れを口実にしたアンフェアだ!」という方がいるかもしれないけれど、とくに2歳前後のイヤイヤ全開、野性まるだしの子どもは大人のいう事など聞くはずもなく、子の制御は無理。本当に無理なのだ(2回いう)。

もし専用待機列などがあれば、子連れの親がどれだけ救われ、助かることか! そして、少なからず「子ども苦手」という方は一定数おられると思うので、そういう方の気分を害することも減ると思う。森美術館さん、ぜひご検討ください~。

■入館時のポイント
・もし大人が2人以上いるなら、オープン時に訪れても問題なさそうだけれど、大人1人の場合&子どもが大騒ぎする年頃の場合は、オープン同時ではなく、10時半くらいから入館するのがいいかも。

あと、美術館とは「静謐であるべき場所」というのが、今の日本では暗黙のルールというか、子連れに美術鑑賞はなかなかハードル高い、と思わせたのが、この列に並んでいた時だった。

というのも、同じ列に並ぶ来館者の誰ひとりとして「あらー元気ね!」とあたたかな視線を向ける人は居らず、どちらかというと冷ややかな視線があちらこちらから向けられ、正直なところ肩身の狭い思いだった。大抵なにかしらの列に並ぶ際、娘の動向に目頭をほころばせる人が必ずいて、ありがたや~と救われる思いなのだが、今回はまじで皆無だった。

いや、私もこれまでそんな冷たい目線を同様に向けていたのかもしれない。現代の「静謐であるべき場所」という美術館への固定観念や常識が、人のふるまいをそうさせるのであって、彼らはその常識に従っているだけなのだ。逆に、私と娘は今の時代には非常識の部類に入るわけで。もうこれは仕方ないのだと思う。

美術館が「静謐であるべき場所」となってしまっているのは、美術館側の問題というよりも、来館者の意識の問題なのかもしれない。今後、その常識が、非常識に変わっていくといいな。

託児所「くらいんぐみゅーじあむ」のこと

入館し、さっそく託児所に向かうと、「●ちゃんのお母さんですか?」と、二人の保育士さんが笑顔で出迎えてくれた。

検温とプリント1枚に保護者と子どもの名前を記入し、名刺サイズの紙にも名前を書いた。「●ちゃんを迎えに来た際に、この紙を渡してください」とのこと。引換チケットみたいなものらしい。

オムツ、おしりふき、子どもの飲み物を保育士さんに託す。娘は靴を脱いで託児所スペースに入って早々、たくさん並べられているオモチャに飛びつく。彼女が夢中になっている間に「じゃあ、お願いします」といって、展覧会場に向かう。

当日は我が家が一番目の利用者。ほかに子どもは居なかったので、写真を撮らせてもらった

託児所をこれまで利用したことがなかったのと、親不在かつ知らない大人と暫く一緒にいるなんて状況は保育園以外にはないので、子どもを預けるのはちょっと不安だった。どんな保育士さんだろう、泣きわめいたら怒鳴ったりするような怖い人だったらやだな、とか勝手に妄想が膨らんだりして。

預ける覚悟はできているものの、やっぱり多少の心配はぬぐえず。だけれど、もういかにもベテランであたたかい雰囲気を醸す保育士さんの顔を見た瞬間、あ、大丈夫かも! と思った。おもちゃもたくさん。清潔感あり。保育士さんの表情もいい。不安はあっという間に消えた。

今回の託児所を請け負っている〈アルファコーポレーション〉さん、信頼の塊だった。電話の対応も、めちゃくちゃ丁寧で、印象よかったものな。同社が託児所を請け負うなら、また機会があれば預けたい。

■託児所のポイント
・オムツ、おしりふき、子どもの飲みものは持参すること。
・あらゆるジャンルのオモチャがたくさん用意されているので、子どもが飽きる心配はなさそう。

展覧会場にも子連れがチラホラ

1時間しか猶予がなかったため、展覧会はざーーーーっと駆け足で回ったけれど、とっても面白かった。あらゆることの不確実さ、常識や非常識とはなんなのか? などなど、いろいろ考えさせられた。

今回は「くらいんぐみゅーじあむ」を利用する気満々で、展覧会場内に娘を連れていくことはまったく考えていなかったけれど、会場内にはベビーカーを押して鑑賞する親子や、抱っこ紐で赤ちゃんと鑑賞する女性、小学生くらいの子どもと一緒に訪れている大人など、子連れの観覧者が比較的多く、Chim↑Pomがプロジェクトに投じた思いは、少しずつ伝わっているようだった。

そうそう、列に並んでいる時、チケットの料金表を見て思ったのだけれど、観覧料は4歳から発生するとだけ書いてあって、それ以下の子どもが来館してはいけないなんて、どこにも書いていない。そうか、別に小さな子どもを連れてきても問題ない場所なのだ、とハッとした。

心身は確実にすり減るけれど、今度は娘と一緒に展覧会を楽しんでみようかな、という気になった。

預けてよかった「くらいんぐみゅーじあむ」

娘を迎えに行くと、機嫌よく駆け寄ってきた。保育士さんからは、こんなオモチャを気に入ってよく遊び、オムツを一回替え、飲み物も飲ませています、というフィードバックがあった。

「全然泣きませんでしたよ。おままごとセットの野菜を切って、私にご馳走してくれました。ちょうど●ちゃんと打ち解けてきた頃だったので、もうサヨナラするのが残念です」

最後まで丁寧に説明してくださり、保育士さんの対応は安心感しかなかった。保育園の先生にもいつも思うのだけれど、保育士さんって、まじで「神」。すごい専門職だと思う。最近の保育士の手取りを増やすというニュースが流れるたび、ぜひそうしてください! と思う。


さて、ゆっくり展覧会を楽しめたかというと、そもそも1時間じゃ足りなかったという点で×。でも託児所に信頼を寄せて、2時間子どもを預けられれば、心ゆくまで展覧会を楽しめた気がする。

小さな子どもを持つ親が気軽に美術館を楽しめるか、という点は、託児所次第。託児所があれば、美術館を訪れる子連れ利用者は増えると思う。できればもっといろんな美術館を気軽に楽しみたい。

その他の来館者の反応は、決してよかったとは言えないけれど、前述の通り、今の日本の常識のなかでは仕方ない。でも、変わっていくと思う。

というか、諸外国の美術館は、子連れの来館者にむけてどんなサービスを行っているんだろう。なんだか興味が湧いてきた。

当たり前、常識、意識外にあること、それらを敏感に感じとり、疑問を呈し、一石を投じるChim↑Pom、やっぱりおもしろいし、すごいな。今回の「くらいんぐみゅーじあむ」も、美術館の在り方、考え方を変える大きな転機となるのかも。

森美術館も、託児所開設は今回が初めてとのこと。いろいろ使い勝手の悪さはあったものの、初の試みにはつきもの。それよりChim↑Pomのプロジェクトを誠意をもって受け入れた感じはしっかり伝わってきた。ぜひ利用者の声も参考にしながら、もろもろのUX面をアップデートして、今後も託児所サービスを展開してほしいと思った。

「くらいんぐみゅーじあむ」、とてもよかったな。子育て中の方はぜひ利用してみては?


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