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雇用保険の失業給付について

雇用保険について

雇用保険制度は、労働者の方が失業した際に、必要な給付や職業訓練、求職活動の促進、労働環境の改善に関わる事業など、生活及び雇用の安定化を図る為の労働者向けの公的保険制度です。保険者は政府(厚生労働省)で、主な窓口は住居地を管轄するハローワークになります。
当該保険は事業主が従業員を加入させる形で、保険料は事業主と従業員が折半して払います。従業員の方が負担する分の保険料は、給与から天引きされています。

雇用保険の加入条件としては、以下のようになっています。

・週の所定労働時間が20時間以上で、1ヶ月以上継続して固定の事業所に勤める従業員
※原則として、事業主は上の要件に当てはまる従業員を雇用保険への加入義務があります(従業員5人未満の農林水産事業所を除く)。
派遣・パート・アルバイトの方も、1週間の労働時間が20時間以上で、1ヶ月以上継続して勤める場合は雇用保険の対象となります。

雇用保険の原則としては、要件を満たす従業員は全員加入となりますが、稀に雇用保険の手続きを実施していない会社もあります。
そうした際は、雇用先の事業者に確認を取り、仮に会社が応じなかった場合は、ハローワークに直接ご相談して頂くと良いかと思います。
ただし、次に掲げるような従業員の方は雇用保険の対象にはなりません。

・1週間の勤務時間が20時間未満
・1ヶ月以下の短期アルバイト
・季節限定の勤務(4カ月以内の期間または1週間の勤務が20時間以上30時間未満)
・学生アルバイト
・政令で定める漁船の船員
・公務員

また、雇用保険には求職者給付、就職促進給付、教育訓練給付、雇用継続給付があります。
本記事では、主に求職者給付について解説していきます。

雇用保険の求職者給付とは

何らかの理由で仕事を離職した際に、次の仕事が決まるまでの間の求職活動中の生活の安定を支えてくれるのが雇用保険の求職者給付です。
雇用保険に加入していた人が離職してハローワークで求職活動をする際は、雇用保険の求職者給付と言われる給付の中の基本手当を受給することができます。この基本手当は、一般的には失業保険と呼ばれている制度となります。
基本手当は、自己都合・病気・勤務先の倒産・リストラ・育児・介護・家族事情の急変・通勤困難など、離職した理由によって受給額や給付日数が変わります。
また、障害者手帳を保有している方には優遇措置がされることもあります。
以下では、基本手当の受給について解説していきます。

求職者給付の基本手当とは

求職者給付の基本手当は、一般に失業保険と呼ばれているものです。
雇用保険に加入していた人が失業し、ハローワークに登録して求職活動を行う際、給与の日割りの50%~80%に相当する額が90日~360日の間支給されます。金額や給付日数は、勤続年数、退職理由、年齢などによって異なります。
この手当は「失業すれば必ずもらえる」という訳ではありません。
『求職者給付の基本手当』の名称の通り、求職活動を行う人に対する手当となります。
その為、失業後に再就職の意志の無い方、再就職先が決まっている方、アルバイトや内職も含め職を得ている方などは対象外です。
失業後に再就職の意志を持ち、ハローワークで積極的な求職活動を行う方が対象となります。
また、対象となる方も、自らハローワークに出向いて就職相談や申請をし、その後の説明会などに参加して受給資格の認定を受け、定期的な求職活動を続けることが受給の要件になります。

基本手当の受給要件

失業時、雇用保険の基本手当を受給する為には、以下の3つの要件を満たす必要があります。

・雇用保険に加入しており、被保険者期間の要件を満たしている
※特定受給資格者・特定理由離職者→離職前の1年間に通算6ヶ月以上の被保険者期間がある
※一般離職者→離職前の2年間に通算12ヶ月以上の被保険者期間がある
※雇用先が複数ある場合は合算した期間
・離職日以前の2年間に、賃金支払日数が11日以上ある月が12カ月以上あること
※日給制や時給制の場合は、実際に働いた日数。
・失業の状態で、ハローワークに求職登録をして求職活動をすること
※雇用保険の基本手当は、退職後、失業の状態でハローワークに求職登録をし、積極的な求職活動をする方が対象になります。ここでいう失業の状態とは、

・無職であること(アルバイトや内職も不可)
・再就職先が見つかればすぐ働ける体調と状態にあることの2つを満たしている状態です。

退職後にアルバイトや内職・手伝いも含め何らかの職を得ていると、基本手当の対象外になります。また、病気や出産・育児などの事情ですぐに再就職できないときも対象外になります。
退職後すぐに働けない場合と受給期間延長について退職後、病気や育児・介護などですぐに再就職ができない状態が30日以上続く場合は、働けない理由が解消し、求職活動を開始したときからが、給付日数分の基本手当の受給対象になります。
ただし、基本手当の受給可能期間は離職の翌日から1年と決まっています。受給可能期間が過ぎてしまうと、給付日数が残っていたとしても、そこで受給が打ち切られます。受給期間はハローワークに申請を出すことによって最大3年間分の延長が可能です。(つまり、受給可能期間は最大合計4年となります)
まずは、離職後すぐにハローワークへ出向き、再就職についての相談をした上で、受給期間延長の申請をする必要があるかを相談するのがお勧めです。

もし、退職後にすぐに働ける状態ではなく、受給期間延長の申請をする場合は、離職後30日経過した翌日に申請を行います。
以前は受給期間延長の申請は、離職後30日経過した翌日から1カ月間の間しか申請を受け付けていませんでしたが、平成29年4月1日より改正があり、延長後の受給期間の最後の日までの間であれば、申請の受付を行うようになりました。
しかし申請が遅い場合には、延長を行っても基本手当の給付日数の全てを受給できない可能性がありますので注意が必要です。いずれにしても早い段階での申請をお勧めいたします。
延長後は、「週20時間働ける状態」と医師が認めることで延長が解消され、雇用保険の基本手当の受給対象になります。延長解消の手続きの際は、『雇用保険受給資格に係る病状証明書』という書類を主治医に記載してもらい、ハローワークに提出します。(書類はハローワークでもらえます)
その中で、週20時間以上の労働が可能である旨が記載されていれば大丈夫です。診断書の料金は自費になるため、金額は医療機関によって様々です。通常の診断書と同額にしている医療機関が多いかと思います。
※受給延長の際の手続き、延長できる期間などは事情によって異なりますので、詳しくは住居地のハローワークへお問い合わせください。

受給期間と給付日数について
よく混同されてしまいますが、
・受給期間
→基本手当を受け取ることができる期間
・給付日数
→実際に基本手当がもらえる日数
という扱いになります。
つまり、
・受給期間内に、給付日数分だけ基本手当を受け取ることができる
ということになります。

受給期間と給付日数については、次項で詳細に説明します。

受給期間と給付日数について

基本手当が受給できる期間は、
・離職した日の翌日から1年
・給付日数が330日の方は1年と30日間
・給付日数が360日の方は1年と60日間です。

この期間に、自分が該当する給付日数分(90日~360日)の基本手当を受給することができます。
受給のペースは4週に1回で、1回に振り込まれる額は28日分です。基本手当の給付日数は、通常は被保険者期間によって決まります。
また、「特定受給資格者」、「特定理由離職者」、「就職困難者」条件に当てはまる場合は給付日数が長くなります。

就職困難者について

身体・知的・精神障害があり、求職活動が困難となることがと見込まれる方は就職困難者の要件に該当する可能性があります。
精神科や心療内科に通院中の方の場合は、精神障害者保健福祉手帳を所持しているか、主治医作成の意見書(フォーマットはハローワークの窓口で貰えます)をハローワークに提出し、その内容が認められれば該当となります。
※『特定受給資格者』、『特定理由離職者』、『就職困難者』の要件に該当するかどうかの判断は、個々のケースや管轄のハローワークによって異なります。詳しくは住居地のハローワークにご相談ください。
退職理由については、勤務先からもらう『雇用保険被保険者離職票-2』に書かれてありますが、その内容が事実と違っている場合にはハローワークで相談することも可能です。

雇用保険の基本手当の支給額

日額の算出方法=(離職日直前6ヶ月に支払われた賃金の合計)÷180×調整率

基本手当の日額は、退職直前の6ヶ月間の賃金(賞与は含まない)から平均日給を計算し、年齢や収入によって決められた調整率をかけて算出されます。
調整率は、
・60歳未満:5割~8割
・60歳以上65歳未満:4.5割~8割

となっており、賃金額が低いほど高い給付率となり、基本手当日額が調整されます。
また、基本手当に下限額と上限額も決められています。
(※下限額・上限額は毎年8月1日に調整されるため、年度によって変動する可能性があります)

基本手当の申請手順と必要書類

雇用保険の基本手当の申請手続きについて、具体的な流れと必要書類は以下の通りです。

①退職後に元の職場から『雇用保険被保険者離職票-1』と『雇用保険被保険者離職票-2』を受け取る。
離職票は、退職後に郵送で届く場合と自身で受け取る場合があります。
受け取り方法は職場の人事労務部門へ確認する必要があります。
離職票が貰えてない等の問題がある場合は、住居地のハローワークにご相談してください。
②ハローワークで、求職の申込みと手続きを行う。
住居地のハローワークで求職の申し込みを行い、『雇用保険被保険者離職票-1,2』を提出します。提出の際に併せて以下のものが必要になります。


厚生労働省 ハローワーク「離職されたみなさまへ」より引用

必要書類を提出後、受給資格の決定や離職理由についての判定が行われ、受給者説明会の日時のお知らせ、雇用保険受給資格者のしおりの配布があります。
手続き後は失業期間中であることを確定する為、7日間の待機期間に入ります。待機期間に日雇いでもアルバイトをすると待機期間が満了せず、受給資格を得ることができません。
また、完全な自己都合による退職の場合は、待機期間満了後も3ヶ月の給付制限がかかり、3ヶ月間は基本手当を受給できないようになっています。

③雇用保険受給者初回説明会に参加する。
待機期間の指定日にハローワークで行われます。受給の為には参加が必須となります。
・雇用保険受給資格者のしおり
・印鑑
・筆記用具
が必要です。
この際に、雇用保険受給資格者証や失業認定申告書の配布と、第1回目の失業認定日のお知らせがあります。

④失業認定日・基本手当の振り込み
3ヶ月の給付制限となっていない場合は、失業認定日から5営業日程度で指定した金融機関の口座に基本手当が振り込まれます。1回に振り込まれるのは28日分です。
初回の失業認定日以降、28日(4週)ごとに失業認定を行います。指定日にハローワークへ行き、『失業認定申告書』に求職活動の状況(※)等を記入して、『雇用保険受給資格者証』と共に提出します。その内容が認定されれば、再度28日分の基本手当が振り込まれます。この流れを給付日数が満了するまで行っていく形となります。
求職活動として認定される頻度としては、失業認定日から次の失業認定日の間で、原則として2回以上の求職活動の実績が必要となります。
実績に認められるのは、以下のような範囲に定められています。

・求人への応募
・ハローワークが行う職業相談や職業紹介、各種講習やセミナーを受ける
・許可・届出のある民間機関が行う職業相談や職業紹介、求職活動法指導のセミナー等を受ける
・公的機関等が実施する職業相談等を受けたこと、各種講習、セミナー個別相談ができる企業説明会等の受講、参加等
・再就職に関する各種国家試験、検定等の資格試験の受験

上記の範囲はあくまで原則なので、公共職業訓練等の受講中や、採用通知を待っている間など、求職活動実績を必要としない場合もあります。
所轄地のハローワークの方針や、個々の事情によっても変わってくる可能性もある為、ハローワークの担当者に相談してみるのも良いかもしれません。

基本手当を受給しない方が良い場合

雇用保険の基本手当は、経済援助になる制度ではありますが、場合によっては受給しないほうが良いこともあります。
それは、手当の受給期間中でも家族の健康保険の扶養に自身が入りたい場合です。
基本手当の日額が3,612円以上になる場合、その年の収入の見込みが130万円以上あるとみなされてしまい、保険の扶養に入ることができなくなります。扶養から外れると、自分自身で国民健康保険や国民年金の保険料を支払わなければいけなくなってしまいます。
そのような場合は、雇用保険の基本手当の受給をしても手元に残るお金は減額されてしまいます。総合的に見て、基本手当を受給しないほうが良い場合もあります。

雇用保険の傷病手当とは

雇用保険の基本手当をもらっていた人が、途中で急に病気や怪我で仕事が出来ない状態になった場合、基本手当の代わりに支給されるのが雇用保険の傷病手当です。健康保険の傷病手当金とは異なります。
基本手当の受給資格者は、離職をするとハローワークに求職申込みを実施します。その後に病気や怪我で働けない状態(いわゆる「失業の状態」を満たさなくなった状態)が15日以上続いた場合、雇用保険から傷病手当が支給されます。
雇用保険の傷病手当は、基本手当日額と同じ額が受給期間内で所定給付日数分が支給されます。
傷病手当が支給された日数分は基本手当給付日数から差し引かれる為、プラスアルファでもらえる手当という訳ではありません。
働けない期間が14日目になるまでは基本手当の支給となり、15日以上30日未満の場合は傷病手当の支給になります。30日経過以降は基本手当の受給期間延長ができるようになるので、傷病手当をもらうか基本手当の延長を行うかを選ぶことが出来ます。
長期化することが見込まれる場合は、健康保険の傷病手当金を受給してから雇用保険の傷病手当を受給すると良いと思われます。

参考:

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