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鈴木大拙の思想 Keyword で見る

更新 2024年5月14日

 鈴木大拙だいせつの代表作で使用されている用語をKindleで検索し、カウントしてみました。下表が、用語のヒット数です。

 26歳の臘八接心で見性経験を得た大拙だいせつは、95才で亡くなるまで、さまざまな形で、大乗仏教に関するみずからの思想を説き続けました。大拙の思想というと「即非そくひの論理」「霊性」「超個」「無分別むふんべつ分別ふんべつ」などの言葉が思い当りますが、実際には、どれも思ったほど多くの著作にまたがる用語ではないようです。

 「即非そくひ」の文字は、本丸の【日本的霊性(金剛経の禅)】という著作中には以外に少なく、【浄土系思想論】に多いです。「霊性」も【浄土系思想論】【日本的霊性】【仏教の大意】と、1940年代、つまり大拙の年齢では 70代が中心で、80代以降の【東洋的な見方】【東洋の心】などには思ったほど出てきません。「無分別の分別」も「超個」も70代中心の文字ですね。正直、ちょっと衝撃でした。

 最近の一部の学者は、「大拙の体用論」を取り上げていますが、「体用」という言葉では殆どヒットしません。それから、「二分性」「二元性」は、【東洋的な見方】だけに目立っています。晩年は、「東洋」「自由」「組織」などが目立つようです。まあ、あくまで、ここに上げた著作の中だけの話ですけど。

 大拙は、自分の見性経験、禅意識の内容を、そのときどきの言葉で解説しようとします。70代を中心に生み出された特殊な用語は、禅経験の、批判的、文献学的、思想的な検証のために用いられました。これはすべて、西洋の人たちも含めて、未来を生きる私たちが、知性のもつ対立的性質に振り回されないようにと世話を焼いたものでしょう。その目的のためには、知性に縛られている現代人が、その知性によって、とらわれのない世界に気づけるように、思想的な説明を残しておく必要がありました。大拙の独特な用語は、この目的のために発明されたものだと思います。


 さて、検索上のテクニカルな問題を補足します。これは ただの keyword 検索なので、「即非」と「即非の論理」など、重なりのある用語はどちらにもカウントされてます。解説者や巻末注なども含みますが、統一性がなく、途中からは、解説者分を引いたものもあります。また、著作ごとに文章のボリューム差もあるので、総ヒット数も参考にしてください。また、【華厳の研究】と【禅と日本文化】は翻訳版なので、訳者の癖も出ていると思います。全体に、適当にざっくり、一発調査したものなので、不正確な集計であることを申し添えておきます。

Aki. Z


大拙の代表的著作の Keyword ヒット数  (ボーっとしてて、すみません)


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